女という人#6「誰かのコーラとネイビーブルー」
彼女の雰囲気は強くない。
だからといって、優しい、穏やか、ふんわりしてる。そうゆう感じとも違う。
そして、彼女は印象が薄いわけでもない。
なんていうか"強さの無い"雰囲気なのだ。
それは彼女が精神的に強いとか弱いとか、そんな意味では全くなくて。
私はいつも個展会場に来てくれる彼女に展示とは関係ないことまでアレコレお喋りしてしまう。居心地の良い人だなあと毎回思いながら不思議な感覚になっていた。他人を傷つけないように話すことに彼女は慣れているように感じる。なんてゆうか、心にある地雷達をうまく避けてくれているというか。
ふと、彼女は女性も好き?かな?なんて思った。なんでだろ、私は彼女のどこからそう感じたんだろ。
撮影されるのは初めてという彼女に、その疑問を早速投げた。
彼女はポリアモリーなんだそうだ。ポリアモリーってのは、あれよね?複数人と仲良くカップル関係を持つみたいな。自分の彼氏の彼女は私も知ってて仲良しで仲間で‥みたいな?
彼女の彼氏も知ってたりして、互いに認識し合い認め合い、全員仲間みたいな?
説明がかなり難しい。いろんな例があるだろうし、一概に言えない感じがする。
たどたどしく説明をする私に「そうそう、色んな人達がいて、それぞれルールがあったりするんです」と彼女。
なるほどと納得した。
レズだとも感じないし、性の隔たりがないような、するんと他人に溶け込んでて決まりを持たないような。そういう印象が彼女にはある。ポリアモリーであり、好きになった人の性別は気にしないというようなスタイルなんだろう。色んなことがあって流れ流れてそんな着地になってるラフな感覚に感じた。
このお部屋に住んでまだ少しらしい。それまでは彼と別の場所で同棲していたという彼女の部屋の寝具やソファーはネイビーで統一されていた。
それもなんか性別の関係の無い感じだなあと、彼女が選んだのだろう家具や寝具のデザインを見て思った。
結婚したら専業主婦になって欲しいなんて言う古風な感覚の男性が周囲に多いと彼女は話す。
タトゥー入れたら結婚は無理とか、結局は女性に従ってて欲しいような性質があったり‥とか。
不思議だ。そんな男に私は出会わない。
生息区域が違うとこんなにも人間の性質は違うのだろうかとびっくりした。
彼女はちゃんと意見を持ち、伝える人だ。行動力もあるし、一見大人しく見えて違うタイプだと思うんだけど?
あぁ、なるほど、大人しく見えてしまうから大人しいのが好きな男ばかりが寄ってくる結果か。私はなんだか腹が立ってきた。
最近髪をオレンジ色に染めた彼女は「髪が派手になったから、大人しいって思われないようになったかも」と笑った。
大人しいのが好きな男なんて、自分の都合にはめ込みたいだけだったりする。
そんな男跳ね除けてしまえばいいよ!
話を聞きながらイライラしてくる私。いや、私達。しかし、私に比べあまり彼女からは感情が見えない。感情が外に発せられていない。
主導権を彼女は他人に渡してしまうのかもしれない。自己決定をしないで委ねるというか、そういう状態に慣れている感じ。それが雰囲気として感じとれるから、強くない大人しい印象を生むのかも。
珍しく私は、本人を目の前にその人物像について悩みはじめてしまった。
冷蔵庫に2リットルのコーラが入っていて「そんなデカイコーラ飲むの?なかなかコーラ2リットルは女性の部屋の冷蔵庫に無いよ〜」と私は笑った。あ!同棲していた彼の習慣がうつったかも!と彼女。
あと少しで無くなるコーラは彼女が1人で飲んだらしい。ちゃんともう一本ストックがあるんです〜と笑いながら話す彼女は、雰囲気は強くないんだけど個性は強いと私は思う。
女という人:餅巾着
写真&文章:SAKI OTSUKA
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