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音楽教育の在り方を再検討する①〜海外の音楽教育との比較編〜

こんにちは!

今週もオトノアジト音楽教育研究記を進めてまいります👏

コロナウイルスの影響で、オンライン会議や飲み会が当たり前となりつつある今日この頃。オトノアジトもオンラインレッスンを行っています(宣伝・・・笑)。

PCやスマホさえあれば、国内ではなく世界とも繋がれてしまう時代なんだなと実感する日々です。だからこそ、オトノアジトも国境関係なく、いろいろな国の子どもたちにレッスンを展開できるようになればな〜などと、最近は考えています。そこで思ったのが↓

海外の音楽教育っていったいどんな感じなんだろう?

これです。

彼らはどんな教育理念の下で音楽を学んでいるのだろう?ふだんはどのような授業を受けているのだろう?

世界中の子どもたちにレッスンを展開したいのであれば、これを知っておきたいなと思ったのです。

というわけで、今回は海外の音楽教育を調査しながら、良い音楽教育ってなんだろう?と検討していこうと思います。

1回では終わらない気がするので、暫定で①とつけておくことにいたしましょう。それではスタート!

日本の音楽教育の目的は?

前回の記事でもお伝えしましたが、日本の音楽教育が学校に取り入れられたのは明治5年と、100年以上前

「学制」の公布に伴い、小学校と中学校でそれぞれ「唱歌」「奏楽」という授業がスタートしたことに端を発しています。

今では義務教育に当たり前のように音楽の授業が取り入れられていますよね。リコーダー、鍵盤ハーモニカ、合唱…みなさんも経験されたことなのではいでしょうか。

その目的って何なのでしょう?

他国の音楽の授業を調べてみると、器楽の演奏や歌唱、音楽鑑賞が概ね取り入れられているようです。もちろん具体的なカリキュラムやレベルの差こそあれ、日本と比べて極端に内容が変わり映えするという印象は受けませんでした。

だからこそ、それぞれの国の音楽教育の根底にあるビジョンや目的を知りたい!というわけで調べてみました。

文部科学省が平成29年に出した「小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説〜音楽編〜」によると、

表現及び鑑賞の活動を通して,音楽的な見方・考え方を働かせ,生活や社
会の中の音や音楽と豊かに関わる資質・能力を次のとおり育成することを目
指す。
(1) 曲想と音楽の構造などとの関わりについて理解するとともに,表したい
音楽表現をするために必要な技能を身に付けるようにする。
(2) 音楽表現を工夫することや,音楽を味わって聴くことができるようにす
る。
(3) 音楽活動の楽しさを体験することを通して,音楽を愛好する心情と音楽
に対する感性を育むとともに,音楽に親しむ態度を養い,豊かな情操を培
う。

これらが、「小学校教育における音楽科が担うべき役割とその目指すところ」なのだと言います。

・・・「これって、要は音楽を好きになりなさいってこと?」これが最初の感想でした。

私のような音楽好き人間からしたら、「うんうん。音楽好きになって楽しむの大事だよね」ってなります。でも、批判を恐れずに書いてしまうと、音楽に初めて触れる子どもたちを想定してのビジョンだったら、少し狭いな?と思ってしまうのです。

他の国の音楽教育を見てみよう〜目的はさまざま〜

国立教育政策研究所の「音楽のカリキュラムの改善に関する研究-諸外国の動向-」を参照してみると…日本が音楽愛好の精神を重要視しているのに対し、他国はそうでもない、言うなれば国それぞれでした。

たとえばフランスでは

フランス語と自国文化の習得を特に重要視しているため、音楽における歌詞の学習は国語、歴史、地理、文化に、歌唱は正しい発音の習得に、と関連づける扱いをしている。

とのこと。ふむふむ、どちらかと言えば自国文化愛好精神に紐づけた音楽教育なのだな・・・と。面白い。

中国であれば「美育」という独自の情操教育の一環として音楽が取り入れられている。美こそ国を強くするという思想の下で、美を愛する感性を育むための音楽、といった位置付けでしょうか。

台湾の教育理念が気になるぞ

そこで私が気になったのは、台湾のビジョンでした。

「芸術は人類文化の結晶であり、生活の重心であり、教育の根本を整え、全うするものである」という理念に基づいて教育課程に取り入れられている。

あ、これだ。この要素が日本のビジョンには欠けているのかもしれない。

そして、オトノアジトが考える音楽教育にも、この要素があってほしい

「芸術は人類文化の結晶であり〜」は言い過ぎだろうとの声も聞こえてきそうなので、今日はまず、1歩引いたところから検討してみましょう。

音楽をやろうよ

「STEAM教育」という言葉をご存知でしょうか。STEAM JAPANさんのサイトから定義を拝借します。

科学・技術・工学・芸術・数学の5つの英単語の頭文字を組み合わせた造語。
科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)。アート(Art)、数学(Mathematics)の5つの領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念。 知る(探究)とつくる(創造)のサイクルを生み出す、分野横断的な学びです。体験の中でさまざまな課題を見つけ、クリエイティブな発想で問題解決を創造、実現していくための手段を身につけます。
社会とテクノロジーの関係がますます密接になっていくこれからのAI時代、この5つの領域の理解と学びを具体化する能力がますます必要となってきます。

これからの時代に向けた新しい教育方針です。

小学校にあてはめれば、算数や理科と音楽の授業にはあまり結びつきを感じないと思っている大人も多いはずです。

いわゆる社会で生きていくための「頭の良さ」に音楽などの芸術はあまり関係ないだろう…そんな考えが敷衍されてきた印象があります(イメージ論ですが)。

次の時代を切り開いていく「知」を生み出すには、芸術を通して得る創造性や探究心が不可欠という事実が、この「STEAM教育」という言葉の広まりに表れているのではないかと思うのです。

そう考えると、台湾の芸術は人類文化の結晶であり、生活の重心であり、教育の根本を整え、全うするものであるという言葉も、そこまで行き過ぎたものには思えないのではないでしょうか?

台湾、行ってみたいなあ。

おわりに

音楽教育の在り方検討、本日はここまでです。第1弾、今日は海外の音楽教育を参考に進めてみました。回数を重ねて、どんどん深掘りしていきます🌵

時節柄、アートやエンターテイメント業界が肩身の狭い思いをしてしまうような空気が漂うことも多い日々。

成果物ばかりが見られがちな芸術ですが、その裏にはたくさんの人の考えが詰まっていて、血が通っている。そしてそれは、これからの社会をより良くしていく技術や知識とも、切っては切り離せない存在なんだ・・と、音楽好きの1人として、コメントしておきます。

参考文献

STEAM JAPAN WEBサイト

小川 昌文, 尾見 敦子, 阿波 祐子, 井下 べに, 永岡 都, Alison M. Reynolds, 世界の音楽科学習指導要領を比較するーアメリカ・ハンガリー・フィンランド・ドイツでは音楽教育をどう考えているのかー, (共同企画Ⅱ)ラウンドテーブル 45 巻 2 号 p. 54-58, 2015

文部科学省,「【音楽編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説」, 2017

楊 奕, 中国近代における美育運動の展開に関する実証的研究──1910 年代から 1920 年代までの蔡元培の教育実践を中心に──, 日本教育学会大會研究発表要項 74 巻 p. 330-331, 2015

国立教育政策研究所, 諸外国の音楽の学習に関する研究動向, 「教科等の構成と開発に関する調査研究」研究成果報告書(15), 2003

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