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医学部を休学して来島。常にチャレンジした先で、自分のやるべきことが見えてくる。

東京で育ち、大学は医学部に進学。
このまま医者になることに違和感を感じて休学し、来島を決めた。
そんな彼女は、この3か月をどのように自分の糧にしていったのでしょか?

島根県の離島、隠岐島前地域で大人の島留学・島体験に参画した皆さんの来島前・来島後、そしてこれからについてお届けする「私、島で働く。」

来島のきっかけから島での仕事・暮らし、自分自身の変化など
1人1人のストーリーをお届けしています


印南麻央さん
取材当時24歳 東京都出身


R6年度大人の島体験4₋6月生として海士町に来島。
海士町社会福祉協議会のデイサービス福祉施設「ひまわり」と、「福祉×まちづくりプロジェクト」(以下、福祉プロジェクト)の2軸で働いていた印南麻央さんにお話しを伺いました。



自分はこのまま医者になっていいのだろうか。休学、そして島へ行くことを決意した。

これまで大学の医学部に通っていて、ずっと休学をしたいと思っていました。と言うのも、大学では自分は医療の専門的な勉強しかしてこなかったことにだんだん違和感を感じるようになって。

医療の現場では、病院で実習をしていても目の前の患者さんがどんな人で、普段どんな暮らしをしているのかが見えづらかった。
そういった一人ひとりのことをイメージできずに、自分は病院内だけで患者さんと向き合っていきたいのだろうか?と思ったんです。

何より医学部での忙しい日々をこなすことに精一杯で、自分のやりたいことをしたり、学びたいことを学んだりする時間がなかなか取れないことにもどかしさがあって。
何年か悩んだ末に、休学を決めました。

大学の医学部のメンバーと

治療が中心なのが「医療」で、そのあとの生活を支えるのが「福祉」だと考えたとき、自分は大学で学べる医療だけでなく、その後の生活に関わる福祉についても学んでみたいと思うようになりました。
患者さんが退院後、地域の中で持病を持ちながらどう暮らしていくか、どのような地域の福祉サービスを受けながら生活していくのかを深く知りたくて。
島を選んだ理由も、自分が生まれ育った環境とは全然違うところに行ってみたかったから。

地元の東京に住んでいたころは、地元愛や地域の一員という意識が持ちづらかったなと感じています。
一方で規模のちいさな島の方が個々の暮らしが見えやすいのではないか? そう思い、実際に島に行ってみることに決めました。

これから乗船!海士町へ向かう直前に撮った一枚


ここで自分ができることって?もがきながらも、答えを見つけた。

来島当初は、コンパクトな街の全体像が見えたらいいなと思っていて、島の役場の健康福祉課で働いてみたいと思っていました。
しかし、自分が島に滞在できるのはたった3か月のみ。
周囲の方からは福祉の現場で働くことを勧められたり、個人情報を扱う仕事上、役場で携われる範囲の限界を伝えられました。
はじめは、自分が福祉施設で働くイメージが持てなくて、

「自分がやりたいことって、できそうかな?」
と思ってしまい、葛藤がありました。
それでも、いろんな人に相談するうちに、健康福祉課の課長さんから
「いろんな人の背景を知りたいなら人の流れが多いところに行った方がいい」
という言葉を受け、海士町で一番規模の大きな「ひまわり」というデイサービス施設で働くことに決めました。

「ひまわり」では主にデイサービスの補助として、利用者さんと会話をしたりレクリエーションのお手伝いをしたり。
これまでお年寄りの方や認知症の方と関わる機会があまりなくて、はじめはどう関わっていけばいいのか戸惑いがありました。
自己紹介が何度も続いたり、話を広げられなかったりして、
「自分はここで何をしたらいいんだろう?」
と悩み続ける日々。

そんなとき、
「自分の置かれた環境で何を受け取るかじゃなくて、自分から何を与えられるか。それを考えてごらん。」
大人の島留学の事務局の方が投げかけてくださった、自分にはなかった視点に、はっとさせられました。

受け身の姿勢でいるのはやめよう。
今の自分にできることとは――

デイサービス施設で働くうちに、次第に、自分の中でこんな問いが生まれました。

人をケアするってどういうことだろう?

気になった本はすぐに読んでいました

いろんな本を読むうちに辿り着いた答えは、
ケアの本質は「一人ひとりが日常生活をその人らしく送れるようにする」ということ。

利用者の方がそれまでやってきたことや大事にしていきたいことを尊重しつつ、できないことは手伝う。
重い買い物かごを持ったり、お風呂上りにドライヤーをしたり、ちいさなことでも自分が関わる一つひとつの行為がケアにつながるのだとわかりました。
そのことに気付けてからは、施設での関わりを楽しめるようになって。
会話だけでなく利用者の方と一緒に何か作業するだけでも連帯感が生まれるし、時間を重ねることで少しずつ、おじいちゃんやおばあちゃんたちが自分に昔の話をしてくださるようになったことが、純粋にとてもうれしかったです。


介護だけが福祉ではない。あたらしい福祉のカタチを伝えたかった。

施設とは別で、平日の残りの週2日で活動していたのが福祉プロジェクト
大人の島留学生が地域の方のちょっとしたお困りごとを解決する「出張お手伝いサービス」と「地域の方と大人の島留学生の交流会」を最初の1か月で実施することを目標に、プロジェクトがスタートしていきました。

チームのメンバーに自分の意見を伝えるまおさん

交流会に関しては、そもそも大人の島留学生の存在をよく知らない地域の方もいて、イベントのチラシを回覧板に挟んで回しても申し込みがない状況が続くばかり。
そのため、開催地区を自分たちの足で歩いて回ることにし、通りすがりの方に声をかけたり、おうちを訪問させていただいたりしながら、当日までになんとか参加者を集めました。

実際に交流会を開いてみると、大人の島留学生や地域の方から
「お互いのいろんな話が聞けてよかった」
「またやってほしい」
という声をいただけて。
開催までの道のりは大変でしたが、やってよかった!と心から感じました。

交流会のようす

私は、介護だけに限らず道で人に挨拶をすることも含め、地域に関わること全てが「福祉」だと思っていて。
福祉はもっと身近なものだということを知ってもらいたくて、交流会を通じてあたらしい福祉のあり方を伝えることができたのもよかったです。


なんでも自由にやらせてもらえた環境。これまでとは違う自分に変われた。

立ち上がってまだ間もないこのプロジェクト。
最初のころは、何を、どうやって進めたらいいかわからず、かなり手探りの状態でした。
それでも一つイベントが無事に終わってみると、企画のノウハウが蓄積し、次に取り掛かるべきこともクリアに見えてきたんです。

これなら自分のやりたいこともできそうだな、と気持ちに余裕が生まれていき、チーム内で何度もすり合わせを重ねた末、他のプロジェクトメンバーの大人の島留生同士でつながり合えるようなオンラインコミュニティチャンネルをゼロから立ち上げる経験もできました。

目の前のことに丁寧に向き合い、何か一つでもカタチにしてみることによって、次の道筋が見えてくる。

自由にやりたいことをさせてもらえるプロジェクトだったからこそ、ここでの経験からしか得られない大切なことを学べた気がします。
それから、自分のありのままを出すことが以前より怖くなくなりました。
これまでは、「これを言ったら相手はどう思うんだろう?」って気にしてばかりで、自分の弱みを出すのを恐れていたんです。
でも、島でプロジェクト活動をする中で自分のやりたいことをしっかり伝えたら、応援や共感をしてくださる人がたくさんいて。
自分の考えや想いをまっすぐに伝えることは大事だなと感じると同時に、
少しずつ、伝えることへの恐怖心がなくなっていきましたね。

インタビューを通してこれまでの3か月を振り返る


ワクワクのアンテナを張り続けた。この3か月はやりたいこと全部、やり切れた!

島では、仕事以外にもいろんなバイトに挑戦したり、ずっと興味があった油絵教室に通ってみたり。他にも島内で人気マルシェ「まるどマーケット」で一人でお店を出すこともできました。

次に行く場所がすでに決まっていた自分は、たった3か月しか島に滞在できなかったからこそ、常に終わりを意識していて。
3か月後には離島してしまう前に、やりたいことは後回しにせず今やろう!というマインドを持ち続けていました。
あとは常にアンテナを張り続けていましたね。
自分が「これ楽しそう!」とワクワクするものを見つけたら、見逃さない。
これまでずっと、大学生になるまでも、なってからも、勉強中心の生活で
やりたいことがありませんでした。
だけど、休学して自由になんでもできるようになったことで、どんどん興味のあるやりたいことが出てきたんです。

島の油絵教室に参加したときの作品

いろんな挑戦を重ねるうちに挑戦することへのハードルが下がってきた実感があったし、今しかできないことはやらないと後悔するなと思って。
だから、この3か月は

やりたいこと全部、やり切れた!

3か月の大人の島体験を終えて、次の行き先はデンマーク。
島ではミクロな視点で福祉を学べたからこそ、今度は福祉大国と言われているデンマークで、マクロな視点から福祉の全体像を見てみたい。背景にある政策が日本とは大きく異なる地で、人々の暮らしを支える福祉がどんなものなのかを勉強していきます。


一つの役割に囚われなくてもいい。将来医者としてありたい姿が、見えてきた気がする。

あるときは福祉施設ではたらき、またあるときはプロジェクトにかかわり、またあるときはバイト先の島の飲食店ではたらく。
日々いくつもの役割を使い分けるような柔軟な働き方が自分にあっているなと島での生活を通して気づいて。
将来医師という専門性の高い職業につくからには、複数の役割を組み合わせるような働き方は難しいのではないかという葛藤もありましたが、思いもよらないような職業・役割を横断して働いている人たちとの出会いもあり、こうした働き方も自分の努力次第で出来るのではないかと今は考えています。

最近は、医者になったとしても、医者という役割に囚われすぎずに地域との関わりを大切にしていきたいと思うようになりました。
例えば平日は医者、週末は畑をやる、などいろんな役割を使い分けながら、地域の中で患者さんが生きがいを持って暮らせるような支援をしていくことが、今の私の将来像です。

「自分にはできなさそうだな…」
というマイナスの感情を一旦抜きにして、
この休学の1年間、
これからもワクワクのアンテナを張り続けながら、なんでも行動に移していきたいです。


(R6年度大人の島留学生:髙橋)

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