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【離島×地域複業】働き方を自分で選択し、デザインする地域複業とは?#イベントレポート

2022年12月11日(日)に地方・離島での新しい働き方をテーマにした、複業(マルチワーク)・多拠点生活・まちづくりについてのトークイベント『離島の地域複業・就職フェア』が東京の離島百貨店オフィスで開かれました。

講師には株式会社パソナJOBHUBの加藤遼さんを、ゲストスピーカーには海士町複業協同組合の雪野瞭治さん、空閑みなみさんをお迎えしました。

当日は、10代から70代の16名(学生3名)のみなさんにお越しいただきました。来年度に大人の島留学・島体験に参加予定の方や、離島暮らしを考えられている方、複業に興味を持たれている方など、幅広い理由からご参加いただきました。

それでは、多拠点生活や新しい働き方を探る『離島の地域複業・就職フェア』の様子をお伝えします。

地域複業:時期に応じてはたらく場所を変えていくという組織横断的なスタイルの働き方のこと。2020年に海士町において「特定地域づくり事業協同組合」が全国第1号組織として「海士町複業協同組合」設立されました。

▼前日の10日には「若者からひろがる、地域で築くキャリアについて」のトークイベントを開催しました。


開会のことば

まずはじめに、島前ふるさと魅力化財団の理事である水谷さんより開会の言葉をいただきました。

水谷 「世の中の雇用とは、1人の人が一つの仕事を毎日して、家族が養えるほどの賃金を稼ぐことです。しかし江戸時代には、武士も農家と武士の仕事を兼業していたり、その時に必要な仕事をみんなで分け合う半農半漁という働き方をしていました。それが本来の働き方だったんじゃないでしょうか。

それを1つの雇用という単位にしてみると地域には少ないけれど、細かく割ってみると地域にもたくさん仕事がある。こういう風に単位を細かくさえできれば、実は働き方は都会ではできないくらい、自分たちで選んだり、デザインできるんではないかと思います。

海士町から地域複業がはじまりましたが、海士町だけの単位では働き方をデザインすること、選ぶことが難しい。だからこそ自治体が自治体の枠を越えて、デザインできる枠・選択肢を広げていきたいと思っています。

不安も興味もあると思いますが、なんでもお話ししますので、今日はよろしくお願いします。」との水谷さんの言葉から、今回のイベントがスタートしました。


地域複業推進による地域経営とは?

第一部の最初は、株式会社パソナJOBHUBの加藤遼さんよる講演。「地域複業推進による地域経営とは?」をテーマに行われました。

なぜ複業という地域を越えた働き方が広がっているのか、受け入れる地域側がどんなチャレンジをしているのか、そして今後の方向性についてお話しいただきました。

加藤遼さん:株式会社パソナJOBHUB ソーシャルイノベーション部 部長 
社内外の複数の事業やプロジェクトを通じて、個人が主役の生き方やはたらき方を応援する仕組みの構築や、人や自然に想いを馳せる旅の創造に注力しながら、多拠点生活や新しい働き方による地域活性に取り組んでいる。

『地域複業という働き方が広がると、選択肢が広がる。そうすれば豊かな人生をおくれる人が増えるんじゃないかと思っています。

結論、新しい働き方を応援してくれる地域にたくさんの人たちが集まって、生き生きと働くと、色んなことが生まれて魅力的な地域になる。それにより人がまた集まってくる。その循環が生まれることを私は期待しています。』

との言葉より、加藤さんの講演が始まりました。

これまでの一般の出勤といえば、会社に通ってフルタイムで働くということ。しかし最近は時間や場所、所属の自由が高まり、フリーランスや業務委託契約、会社を設立するなど、雇用によらない働き方が広がってきています。

ある人は山口県で暮らしながら東京の仕事をしていたり、福岡で会社を経営しながら、東京の仕事をしていたり。多様な働き方ができる環境が整ってきています。

そこで加藤さんは、兼業、複業の働き方が認められてきていて、組織を越えて、地域を越えて、働く人が増えてきていると言います。

これまでは通勤できる範囲から会社を選ぶことが多く、会社に通勤できる家を選んだり、地域から離れたくなければ地域にある会社に就職しなければならなかったり。

しかしこれからはそれを取っ払うことができ、愛着のある地域に住みながら、テレワークで就職、転職、複業ができるようになってきました。こうして、住む場所を拘束される必要はなくなり、都会でも地域でも自由に選択できる環境になりました。

しかし、地域で働くとはどういうことなのか。加藤さんは次のように話します。

『地域で様々な仕事をするとはどういうことか。それは普段出会わないような方々と話し、人と人とのつながりがたくさんできていくことだと思います。いろんな価値観を持つ人と深い対話をすると、意外と自分の内なる多様性が見えてくる

自分ってこんな側面があったんだ。これが好きで、これが苦手だったんだ、と自分の発見につながっていく。こうして、いろんな多様な人に出会いながら自分の多様性にも気づいていくのではないかと思います。』(加藤さん)

講演の最後には、離島地域複業の魅力についてお話しいただきました。

『離島は、企業と行政の距離が近いこと、環境と社会と経済が繋がっていることを実感できる場所です。人との距離が近い分、組織を越境して、複業することができる。島だからこそ、これらを考えなくとも自然にできる環境があるということです。

地域複業は、自分らしく五感で感じて、色々な視点で物事を考えて、自然豊かな環境の中で自分の感情に素直になること、そういった働き方を体現しています。これから地域複業に挑戦される方がいらっしゃれば、五感で、直感を信じてチャレンジしていただけることを楽しみにしています。』(加藤さん)

地域複業への挑戦がもたらす自身の価値観の変化とは?

続いて、海士町複業協同組合の雪野さん、空閑さんより、複業協同組合について、入社した理由や仕事内容、自身の考え方の変化についてお話していただきました。

雪野 瞭治:
兵庫県出身。海士町複業協同組合のAMU WORKER第1号。技術と科学の視点から、興味の赴くままに挑戦してます。

雪野さんは、もともと半導体の研究をされていました。その後戦略コンサルティングの会社に入社。働いているうちに「自分の言葉が薄い」のではないかと感じ、まずは手や身体を動かして初めて学べるような知識が必要だと考えはじめたそうです。

そこで1次産業にこだわって転職先を探していたところ、海士町複業協同組合を知り入社。複業組合では、漁師から岩ガキの加工まで、海を起点にした仕事をされています。

空閑 みなみ:
1道5県出身。大学で映画学を専攻した後、新卒で複業へ。移住早々に「ガイアの夜明け」の取材を受けました。

空閑さんは、今年海士町複業協同組合に新卒で入社されました。林業、パン屋さんを経験し、多様な分野の仕事をしています。就活で一般的にイメージする働き方が合わないと感じた空閑さん。周りと違う「離島で働くこと」にワクワクしたため、複業協同組合を選ばれました。

このトークセッションでは、お2人にたくさんの質問に答えていただきましたが、ここでは3つの質問についてとりあげていきます。

左:加藤さん 中央:雪野さん 右:空閑さん


Q1.実際に複業という働き方を経験した感想や学んだことを教えてください。

空閑さん:林業やパン屋で学んだことが実生活にも活かされて純粋にスキルが上がったなと感じています。島のみなさんから「島に移住してくれてありがとう」と、声をかけていただくことがあり、うれしい環境です。

仕事をしていると、目に見えることが多いです。ある一つの仕事だけでなく、1から10まで人がつないでいく商品の流れを全部を見ることができる。そこにやりがいを感じ、達成感があります。

雪野さん:働いていると、人が生きることをダイレクトに感じます。どの仕事をしても、みなさんが必死で。漁師といった命をかけた職場を経験したときに、漁師の背中と朝日を見て働くって美しいと思いました。生きるってこういうことかなと。

また、この仕事をした先に何があるのか、自分の仕事の先に良いことがあるのか、地域のためになっているのか、を感じることができる。「移住してくれてありがとう」と言ってくれる島の人の力に少しでもなれたら、という気持ちで仕事をさらに頑張れているなと思います。

Q2.一緒に働いてる島の人たちの背中を見てどう感じていますか。

空閑さん:私も必死ですが、島のみなさんはいつも必死に働いているなと感じています。もちろん生きていくためにお金は大切だけど、その中でもやりがいを求めて働いているんだろうなと感じました。

私自身も働くことをとして、人とのつながり、関係性を繋いで行ってるような気がします。

雪野さん:本当にそうですよね、みんな本気だなと僕も感じます。怖いくらい一生懸命で。一次産業に多く接していて、よく聞いていたキーワードは、「真剣勝負」でした。東京ではあまり聞いていない言葉だったなぁと。

一次産業は医療に近いような、命に関わる仕事のような気がします。魚が取れなくなったら、本当に収入がなくなる。

自然を相手にしてるからこそ、「真剣勝負」という言葉に繋がっているような気がして、その真っ直ぐさに痺れています。

Q3.複業に挑戦される方へメッセージをお願いします。

空閑さん:私は何もわからないまま新卒でこの島に飛び込みました。ですが、入ってみると自分にできること・できないことが見えてきたました。とりあえずやってみることが大事だと今は思っています。興味がある方ぜひ挑戦してみてください!

雪野さん:直感に従って決めることは素敵だなと感じています。選んだ道を正解にする。そういった考え方がに向いてるかたにはすごくチャンスのある取り組みだと思います。

もし仕事が合わないと感じでも、複業協同組合の構造上、時期に合わせて仕事を変えていかなければならないので、色々な仕事に出会うことができます。安心してください!ぜひご応募お待ちしております。

ワークショップ「島 × 私のこれから挑戦したいコト」

最後に、グループに分かれて隠岐4島のそれぞれの島の紹介を行いました。島の魅力をお伝えすること、質疑応答に応えるワークショップを行いました。

ここでは簡単に隠岐4島について紹介したいと思います。

■ 隠岐の島町

隠岐4島で最も面積・人口規模が多い隠岐の島町。人口は13,000人と離島の中では全国8位となっています。

隠岐の島町への移住者の約6割がUターンで地元に帰ってくる人たちで、残りの4割がIターンとなっています。地元愛が強く、Uターン者が多い島です。また、Uターン・Iターン全体の約3割が20代であることも特徴です。

町営のお試し滞在施設のほか、島暮らしを体験できるゲストハウスもあり、島で「暮らす」ように滞在していただくことが可能な施設があります。

・ゲストハウス「KUSUBURU HOUSE]
・ゲストハウス「佃屋」




■西ノ島町

隠岐4島で2番目に大きい西ノ島町。人口は約2600人で、そのうち15歳以下の人口は258人、高齢化率は48.2%にものぼります。(令和4年2月末時点)

一番の産業は漁業。まき網漁や一本釣り、カナギ漁、岩牡蠣の養殖などが盛んで、Iターンの方も多く従事しています。西ノ島は公共施設、医療・福祉機関、商店など、生活を支える基盤は整っており、小さな町なので、暮らしに必要なものがコンパクトにまとまっています。


■海士町

人口約2,250人の海士町。海・山・田畑のそろった自給自足のできる半農半漁の島です。2011年にないものはない宣言。教育の魅力化をはじめ、様々な取り組みを推し進める挑戦の島です。

海士町では、地域資源を有効活用した「島をまるごとブランド化」を推進しており、 地産地商(地元産を商いに)の特産品を全国展開(外貨獲得)するべく、付加価値のある商品づくりを行っています。


■知夫里島

隠岐4島の内の一番小さな島で、島民約600人、たぬき約2000匹、牛約500頭という構成です。島での職業割合が、公務(役場警察消防)が20%、教育学習支援事業が14%を占めています。

観光地「赤壁」、「赤ハゲ山」、島全体の景観もとても素敵ですが、何よりもなにもないところで何かを始めよう、島の問題を解決しようと日々挑戦している島民のみなさんが魅力的な島です。

▼知夫里島で暮らす方がYouTubeをされています。知夫里島の様子がわかる動画が公開されています。


隠岐4島にはそれぞれ違った魅力があり、住んでいる人も島ごとに雰囲気が違うような気がしています。みなさんがこの4島の中で惹かれる島に訪れてみてくださると嬉しいです。

最後のあいさつ・感想

講演、トークセッション、ワークショップを終え、第一部最後には参加者のみなさんから感想をいただきました。

~感想~
◎学生のときに島前地域に行ったことがありましたが、社会人になって改めて島の見え方が変わるんじゃないかと思い、今回参加させていただきました。お話を伺って、ますます島に帰りたくなりました!(女性参加者より)

◎ワークショップでそれぞれの島についてお聞きし、それぞれの島に事情があって、やっていることも別々だけれど、自立した事業に惹かれました。もっと詳しくみていきたいと思ったので、実際に隠岐に行ってみたいです。(男性参加者より)

◎僕は当初、西ノ島町に3年ほどの滞在を予定していましたが、気づいたら7年が経ちました。ある程度住んでみないとわからない、体験しないとわからないと思うので、まずは移住してみて考えてくださると嬉しいです。(西ノ島町スタッフより)


第二部 懇親会

第二部では懇親会を行いました。電車で移動し、離島キッチン日本橋店へ。島の食材を使用したご飯を食べながら、移住、複業についての情報交換の場になりました。

様々な年代の方とお話できる機会もあまりない中、こうして気軽に相談ができる環境は改めて貴重だと感じました。

色々な生き方をしてきた方々が、島根県の離島に集まっていたり、または訪れようとしている。その事実にわくわくとトキメキを感じます。

それでは以上、12月11日に行われた『離島の地域複業・就職フェア』の様子でした。ご参加くださったみなさん、ありがとうございました!


最後に

初めて隠岐4島合同で、地域複業のイベントが行われました。実際にお会いし、目の前で複業について説明できること、熱を持って実体験を語れる機会があることを嬉しく思っています。

このイベントを通して、複業に興味を持っていただき、離島に暮らすということが人生の選択肢の1つになると嬉しいです。

これからも、どんどんイベントを開催していきますので、ご参加いただけると幸いです。

✨イベントあります!✨

・海士町移住検討ツアーー島と自分。リアルにふれる3日間ー

これからの暮らしを考え探しているみなさんへ、海士町へ来島することができます。自分の希望する日程を選んでいただけます。2023年3月まで随時開催していますので、ぜひお申し込みください。


▼島の人事部というInstagramでは、島のシゴトを掲載しています。多様な仕事に出会ってみてください!


▼海士町複業協同組合のみなさんへインタビュー


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