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視覚に囁く『小ご絵』

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いつも大きくて立派な扉ばかり見せられてきたように思う。 深く考えることなく、大きくて立派な扉ばかり追いかけてきたように思う。 だけどいつもうまく開けられるわけじゃない。 ある… もっと読む
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2023年7月の記事一覧

ワインとオートバイ。

「明日の通夜は黒いので行くか」  とっくに決めているはずなのに、審美眼で骨董の価値を見定…

見上げる先の幸福。

「あなたに言葉が喋れたら、きっと『貴女も見上げてごらん』と言っている」  ンニャ。 「私は…

欲張り夏休み。

 盆を避けて夏休みを取れるなら、早めに取る派? それとも遅取り派?  そんな質問をされち…

鍵がない。

 鍵がない。傘がないのじゃない。でもいずれもないと出かけられないもの同士、不便の類という…

プレゼントの。

「誕生日プレゼントだ!」と君は破顔する。喜びの種が顔からいっせいに花を咲かせたみたいに、…

有閑マダムの日課。

 公園で経済誌を読んでいる。私の日課。  え、なにか御用ですか? 昼間から時間をかけて新…

歩み、牛歩でも。

 スケッチブックを撮ったなら、用紙を束ねるスプリングがくるくる回っておりました。デジタルになる前の映画のフィルムみたいに、回っていっては日めくりめくり、物語のコマを進めます。  一生という大きな起承転結のカゴに収められた、日々の小さな起承転結の物語が連綿と積み上げられていくのでありました。  あれ? 描かれた絵はなんだか透けているものが混じっているよ。それもそのはず、半透明なのはこれから大人に育っていく半人前の起承転結予備軍でありまして。  その中でその日限りの今日の起承転結

ある黒猫の深層心理。

 他人の心の闇なんて、外見からでは判断できないものさと貴方は言う。  そうかしら、と私は…

あるエアプラントの詩。

 夜の冷気が、人格を持ち始めた夏の火照りを冷ます朝は、少しだけ長く生きていられる。午後に…

ある作家の苦悩と願い。

 食えぬ作家を続けていくか、Youtuberに鞍替えするかで貴方は悩んでいる。短編の依頼はくる。…

思い出の五右衛門風呂。

 あの頃はまだ小さかったからなあ。ついてるかつかついていないかくらいしか違わなかったけど…

猫の自覚。

 不埒になるのは、女も男も。  ちょっとした「いいな」が火をつけて、燃えて上がりたる情念…

旅の途中。道後温泉

道後温泉  初めての場所なのに、そこには懐かしい誰かに出会ったような安堵があった。大人に…

しまなみ街道の風。

 プロント52丁、リア11丁。フレンチバルブの高圧タイヤは空気圧をめいっぱいまで高めてある。  気持ち、最高潮。都心に比べれば3°Cほど低く過ごしいいにしても、梅雨明け瀬戸内の夏は鋭利な紫外線に容赦はなく、ピークに達した日差しが肌を焦がす。  誰だ? ここが聖地なんて言いだしたのは。おかげで走らざるを得なくなっちゃったじゃないか。  途中、水分補給できる休息地はある。だが橋の途中でへばるわけにもいかない。ダホンのミニベロ、折り畳みで重量は軽いとはいえないけれども、電チャリと違