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あるエアプラントの詩。

 夜の冷気が、人格を持ち始めた夏の火照りを冷ます朝は、少しだけ長く生きていられる。午後になってぬるめられた蛇口の水では、焼石に注ぐ水と同じだ。
 頭上高くから注がれる業火にやられてこれから私は死んでいく。死は、雛を護る親鳥の翼。影を拵え、その庇護で生まれくる命に意志をつなぐ。

 長逗留で家を空けていた。最大限の対策を施したがその甲斐虚しく、一株のエアプラントが死にかけている。大事に大切に手のひらで受け止めるように育ててきた二株のエアプラント、一つは大量の汗を流しながらも日々の成長を刻んでいるのに、もう一つの株ときたら。
 これは寿命の洗礼なのか?
 まるで日光で干された榎茸のようにしなしなになった体から、一縷の望みを見つけた。株の奥の一角から緑が顔を出している。
 これを風前の灯にしてはいけない。親鳥が翼で影を作るみたいにして守ろうとした雛の命。夏は二日に一度の浄水のシャワー(他の季節は4、5日に一度)、それを様子を見ながら日々必要に応じて水にくぐらせる。

 絶やしたくはない。しばらくは、気が気ではない毎日を送ることになる。
 気は抜けない。逝くには早すぎる。

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