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視覚に囁く『小ご絵』

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いつも大きくて立派な扉ばかり見せられてきたように思う。 深く考えることなく、大きくて立派な扉ばかり追いかけてきたように思う。 だけどいつもうまく開けられるわけじゃない。 ある… もっと読む
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記事一覧

ゆるいにぎり。

 お米は炊き上がると美味しくするためにシャモジを入れる。「おいしくなあれ」とわっしょいわ…

まさか、ね。

 楽しさに浮かれスキップを踏むように進んだ円安に、突如激震が走った。1日に3円値を下げた…

汗を流して働け、詐欺師諸君。

 やれカード決済の不具合だ、未払いあるぞ、還付金ほしかないか? 果てはメールを乗っ取った…

にゃおん日記ーーおいらのGW。

 ハワイが人気。  円が弱くても、殺到しているね。  今年のGWは抑圧が長期だったから、ハジ…

納得への航路。

 ジェンダー平等は、女性らしさを不定する。慣用的な男尊女卑を糾弾する。  それって、女が…

潮流は作られている。

ーーカヌレが来ますね。ーー ーートゥンカロンが人気です。ーー    テレビやネットで、灯さ…

幻のピアニスト。

 椎名林檎の曲目を華麗な指さばきで演奏しきるガタイのいい男がいる。パッペルベルのカノンを1音ずつ愛おしむように追う老婆がいる。ストリートピアノは、人生を聴き入る、生きる道行きの休息地。生き急ぐ人は足を止め、立ち席は見る間に埋まっていく。聴衆の顔は演奏が始まると不意に現れいでた夢心地の繭に包まれ、コンサートホールの客席についたように穏やかになる。  ひとつの人生のかけらが奏で終わると、次の人生のかけらが音で語られていく。  華奢で背の高い女が額に落ちた黒髪をかきあげ、椅子に座

にゃおん日記ーーお願い。

「少し甘やかしすぎたようだ。  今ではわがままし放題、好き勝手いい放題。  昨今は人間さま…

私はここにはおらんのです。

 墓参りで足を運んだのに、あなたは「私はここにはいません」と言う。死人のくせにどの口をも…

越えられない壁と、この不確かな街。

 進撃する巨人の侵入を防ぐための壁じゃない。脱走兵が見上げる未踏のハードルでもない。社会…

猫の足。

「猫の手も借りたい猫の手は、痒いところに届かない手だけど、それでもかまいませんか?  痒…

清い探偵。

「倍だそう。いや3倍の300万円だ。これならいいだろう」  俺は探偵をしている。世の中は広…

月が食う。

「ついこの間、北米でお日様がまた食われただろ。新しく赴任してきたお日様、今度はだいじょう…

流星360。

 高度成長期の騒音と空気汚染が日本の元気の源に思えることがある。出過ぎた音も行き過ぎた空気も規制され、たしかにきれいになったし静かにもなった。だけれども、すべての臭いものに蓋をされた感のある現代は、元気までにも蓋をされ、まるで閉じ込められた檻の中でくすぶっているようだ。  昭和には、耐え難い苦痛がいくつも存在した。終わってしまったものへの美化を差し引いても許せない汚点が。  大量消費の経済循環に、企業はメチル水銀化合物を河川・海域に垂れ流し、巡り巡って消費者たる人類を貶めたこ