古川音

ライター。「マレーシアごはんの会」代表・編集人。著書に『マレーシア 地元で愛される名物…

古川音

ライター。「マレーシアごはんの会」代表・編集人。著書に『マレーシア 地元で愛される名物食堂』(ダイヤモンド社)。わたしが惹かれるマレーシアのエピソードを今のわたしと共鳴させて綴ります。ときどき日常のつぶやきも。https://malaysianfood.org/

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最近の記事

基準はいつも、わたしの内側に。

パプアニューギニアの高地に住む人は、サツマイモしか食べていないのに筋骨隆々の人が多い。 えっ、そうなん?! と二度聞きしたくなる驚きの事実を先日オンラインで参加した「みんぱく」の公開講演会で聞いた。 彼らの主食はサツマイモ。主食に加えて、おかずであり、おやつでもあるのが、サツマイモ。成人なら1日に約2キロの量を食べるという。 大量のサツマイモでお腹は満たされる。しかし、あきらかに栄養に偏りのある食生活で、なかでもヒトの細胞や抗体の生成に必要なタンパク質の不足が深刻。彼ら

    • 目指したいすし店。

      最近、2週間に1度の頻度で近所のすし店に出く。 もともとすしは好きだけど、いわゆるザ・すしな店にこんなにしょっちゅう行くのは人生初。これには2つの理由があって、1つは近所にあるという気軽さ。そして2つめは、この店がかもし出している絶妙なほどほど感。 絶妙なほどほど感、これがいいのだ。といっても、マグロの赤身はねっとりした食感で味が濃く、アジは注文後にさばく新鮮さで、人肌のシャリはネタをちゃんと引き立ている。つまり店主の腕は抜群で、どれもおいしい。 すしに加えて、おつまみ

      • 明日のわたしのために。

        いいね!の数が気にならない。 比ゆ的な表現ではなく、そのまんまSNSの話しである。もちろん確認はする。いいね!の数が多いとうれしい。でも少なくても、あっそ、で流せる。 だって、そんなこと気にしてもしょうがない。そもそも有名人じゃないし。情報過多の世のなかで、SNSの投稿が読まれていいね!が推されるなんて、内容うんぬんより運だよね、とずっと思っていた。 でも。ふと思った。 だったら、わたしはなんのためにSNSで発信してるんだろう。 記録なら日記でいいし、友人とのやりとり

        • 断食明けの水、という配慮。

          マレーシア人のジャンナさんとpodcast番組「オトとジャンナのMトーク」をやっている。 先週からラマダン(断食月)がスタートしたので、今回は、断食中のジャンナさんに「周りの人にやって欲しいこと、やらないで欲しいこと」を聞いてみた。 今まで気になっていたことや体験から思ったこと。そんなあれこれを共有しながら話してみて、なるほどねぇと合点ポイントがいくつもあった。 なかでも印象に残ったのが、断食明けの水という配慮(ジャンナさんはrespectと表現)。これについて、ちょっ

        基準はいつも、わたしの内側に。

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        • わかりみ
          古川音

        記事

          映画『エブエブ』で思い出したこと。

          社会人になりたての20代前半。仲のよかった先輩とのおしゃべりでよく話題にしていたのが「菩薩になりたいか、なりたくないか」だった。 なんのこっちゃ、な会話だが、あのころのわたしは頭のなかにある雑念がとても苦しくて、ぜんぶ無にできたらいいのに、と妄想していた。だから、この世のあらゆることからの解脱を目指す菩薩になりたかった。 4つ年上の先輩は、最初は「何言ってんの?」だったが、「まだ菩薩になりたいの?」と慣れてきて、だんだん「私も菩薩になりたい」と菩薩派になっていた。 先週

          映画『エブエブ』で思い出したこと。

          考えることは、忘れること。

          文化人類学者、奥野克己さんの著書『人間を越えた人類学・絡まり合う生命』(亜紀書房)を読んだ。 正直、勉強不足のわたしには難解な本だったが、第4章の「ライフ」に書かれていたエピソードが妙に心に残った。 事故で意識を失ったフネスさん。回復したフネスさんは、あらゆる森の、あらゆる木の、あらゆる葉を記憶しているばかりか、それを知覚したか想像した場合のひとつひとつを記憶していた。そして、英語、フランス語、ポルトガル語など多数の言語を苦なくマスターすることもできた。つまり、フネスさん

          考えることは、忘れること。

          経済飯の達人になろう。

          マレーシアの「経済飯」の代表料理をカラーチャートで表現してみました。 なぜカラーチャートにしたかというと、おかずを選ぶとき、色がバラけるようにすると、味つけや食材にバリエーションができておいしいから。 たとえば茶色っぽい料理は、揚げものや煮もの。黄色っぽい料理は香辛料の効いたカレーや卵料理。緑色っぽいのは野菜たち。上の表にはあまりないけど、赤っぽい料理は唐辛子味で辛い。白っぽい料理は、ガーリック炒めであっさり味か、豆腐料理。 なので、赤+茶+白の組み合わせにすれば、辛い

          経済飯の達人になろう。

          青唐辛子と黒胡椒のドリンク。

          字面だけみると罰ゲームだが、衝撃的においしかったので紹介したい。マレーシアのインド料理店「Gajaa at 8」で飲んだモクテルだ。 おいしさの鍵となっている材料はこれ。 この2杯、どちらもおいしかったが、衝撃的だったのは右の方。最初、ぷかぷか浮いている黒胡椒(粗びき)と青唐辛子(輪切り)を見たときはビビったが、飲んでみたら、ビビビ!ときた。めちゃくちゃうまいではないか! 味というより、香りだ。胡椒の爽やかさに、青唐辛子のフレッシュな香りが鼻に抜ける。カランマンシーと酸

          青唐辛子と黒胡椒のドリンク。

          “推し”野菜、センクワン

          マレーシアで「センクワン Sengkuang」や「バンクワン Bengkuang」とよばれるポピュラーな野菜がある。 コマみたいな形で中は真っ白。 なぜ、センクワン推しかいうと、知っているとこれこれ!となるマレーシア料理での登場頻度の高さ。生のまま食べたり、炒めて具にしたり、スープのだしにしたり。センクワンはマレーシア料理界で大活躍なのだ。 白い見ためは大根似。かむと、ほのかに甘くて、フルーツっぽさもある。シャキシャキでみずみずしい食感のなかに、なんとなく粉っぽい密さが

          “推し”野菜、センクワン

          最初が、ではなく、最初だけ、肝心。

          皆さま、Gong Xi Fa Cai。毎年この時期になると、わたしのSNSをにぎやかににしてくれるのが「イーサン」だ。 『ミッション・インポッシブル』のトム・クルーズではなく、タイの東北地方でもなく(これはイサーン)、マレーシアやシンガポールの中国正月で食べられている祝い料理、それがイーサン。 漢字で書くと「魚生」で、発音表記はYee Sang、Lou Sang、Yushengなど。多種の野菜に刺身(=生の魚とはつまりは刺身)を混ぜて食べるサラダのようなもので、さまざま味

          最初が、ではなく、最初だけ、肝心。

          なぜマレーシアなのか。

          わたしが伝えたいマレーシアには、多数の“扉”があると考えている。   ・大航海時代という歴史の扉 ・アラブ商人やインド商人の影響というヒトの動きの扉 ・多民族共生、多様性尊重の社会の扉 ・インドをルーツとするカレーの扉 ・中国ルーツの華人料理の扉 ・スパイスやハーブを活用した香りの扉 ・外食と家庭料理の共存の扉 ・東南アジアという共同体の扉 ・イスラムの扉 ・英語が共通言語という世界の扉 マレーシアを追いかけているのは、これらの扉を開けて、向こう側の景色を見て、ときに、向こ

          なぜマレーシアなのか。

          伝えるのは、知りたいから。

          みんなにもあると思う。 じぶんの気持ちを誰かに伝えたい、という思い。 でも、なぜ伝えたいか、というその先の部分。これは人によっていろいろで、この部分がじつは肝なのでは、と最近思うようになった。 わたしの場合、伝えたいのは、知りたいからだ。ん? 伝えるって相手に知ってもらうための行為よね? と、じぶんでもツッコミたくなるが、心をじっくり見つめてみると、伝わる喜びよりも、伝わったあとの反応が楽しいことに気づく。その反応は発見につながり、伝えたいことについての新しい視点がうまれ

          伝えるのは、知りたいから。

          抱負らしきもの。

          2023年は、もっと自由に、もっと自分基準でいこう。 自由に、という抽象的な言葉にこめた意味は、たとえば、そのことについての正解や不正解を求めないこと。正しさよりも、じぶんの心が動いたことを重視すること。伝統と流行、本流と創作のような相対する価値感を分けて考えないこと。伝統だから大事にしたほうがいいとか、流行りものだから一時的かもしれないとか、そういう情報よりも、そのものの美しさや輝き、おいしさに目を向けること。 そしてもうひとつ。一般的に求められているか否か、といった外

          抱負らしきもの。

          ペナンの食堂テクセンにて。甘いローストポークと激辛唐辛子の奇跡コラボ

          マレーシア旅での食事選びは、そこそこの真剣勝負である。 いつものあれを食べたいし、話題の料理を試してみたいし、新しい味にも出会いたいし、ふらっと立ち寄った屋台でのひとめぼれだってある。でも胃袋にはどうしても限界がある。 なので、食後にやっぱりあっちのほうがよかったかなと検証・反省・妄想がたびたびなのだけど、今回の旅で、その想いが0.1ミリも湧かず、これは選んで大正解、とじぶんに拍手をおくった料理がこちら。 ペナンの行列ができる食堂「テクセン」の「ダブルローストポークwi

          ペナンの食堂テクセンにて。甘いローストポークと激辛唐辛子の奇跡コラボ

          念願のペナンのハミディヤ。踊りだしたくなるカレー

          マレーシアのペナン島。ここにはナシカンダーの人気店が多くある。 ディーンDeen、ラインクリアLine Clear、カユKayu、プリタPelita……ほかにもたくさん。2時間待ちの行列店、路地裏の隠れ家、深夜でも人が集まるコミュニティーセンター的存在など、おいしさに加えて、それぞれに個性があり、今回訪れたハミディヤHameediyahの押しポイントはずばり、その歴史だ。 入り口に堂々と表示されているように、創業は1907年。つまりナシカンダーというスタイルが確立した20

          念願のペナンのハミディヤ。踊りだしたくなるカレー

          8月、10月と約3年ぶりにマレーシアを旅した。ラジオ番組がガンガン流れるGRABタクシー。えせミッキーのモデル活動。日本にはない光景に、そうコレよー懐かしさが湧きまくり。そして、おいしいものも満喫。ペナンで念願のナシカンダー・ハミディアに行けた。よし、おいしいものまとめます!

          8月、10月と約3年ぶりにマレーシアを旅した。ラジオ番組がガンガン流れるGRABタクシー。えせミッキーのモデル活動。日本にはない光景に、そうコレよー懐かしさが湧きまくり。そして、おいしいものも満喫。ペナンで念願のナシカンダー・ハミディアに行けた。よし、おいしいものまとめます!