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“推し”野菜、センクワン

マレーシアで「センクワン Sengkuang」や「バンクワン Bengkuang」とよばれるポピュラーな野菜がある。

コマみたいな形で中は真っ白。

日本語名はクズイモ(地下茎を食べるため)だが、芋とは関係のないマメ科の野菜。日本での栽培はめったになく、原産国はメキシコ。英語名のYam Beanヤムビーンよりメキシコ名のJicamaヒカマの呼び名のほうが国際的にポピュラーだそう
マラッカのニョニャ料理店「ナンシーキッチン」の料理教室にて。中華包丁でセンクワンをスライス

なぜ、センクワン推しかいうと、知っているとこれこれ!となるマレーシア料理での登場頻度の高さ。生のまま食べたり、炒めて具にしたり、スープのだしにしたり。センクワンはマレーシア料理界で大活躍なのだ。

白い見ためは大根似。かむと、ほのかに甘くて、フルーツっぽさもある。シャキシャキでみずみずしい食感のなかに、なんとなく粉っぽい密さがあり、タレをあえても水っぽくならない唯一無二感。

ということで今回は、センクワンがなくちゃ成り立たないのよ、のマレーシア料理を紹介します。

1 パッセンブー Passembur

ペナン名物、揚げものサラダ。インド系「ロジャ」とも呼ばれる

野菜天、厚揚げ、揚げパンなど、さまざまな揚げものの上に、細切りにした生のセンクワン(写真で白く見えるもの)をたっぷりのせ、濃厚な甘辛ソースであえたもの。センクワンの清涼感と揚げものやソースの重厚感のコントラストが口のなかで盛り上がったカーニバル状態。

2 ロジャ Rojak

マレーシア人が愛してやまないロジャ

ロジャとは、数種の具をソースであえたおやつ。人気なのはフルーツのロジャで、青マンゴー、ジャンブー、グアバなどのさっぱり味のフルーツで構成するのがメジャー。そのチームにセンクワンも入っていて、ここではフルーツ寄りの立ち位置。

3 ジュフチャー Jiu Hu Char

ペナン・ニョニャ料理の代表格。中国正月の祝い料理のひとつでもある

細切りにしたセンクワンをジュフとよぶ干しイカ、人参、椎茸と一緒に炒めたヘルシーな野菜料理。見た目も味も、和食の切り干し大根に似ている。刺激的な辛さのサンバル・ブラチャン(写真左上の小皿)をちょっとつけて、レタスに巻いて食べるのが最高。センクワンをすべて同じ大きさで細切りにすることが求められる、技ありの料理。

4 トップハット Top Hut

形がシルクハットのようなので、この名前に。パイティ Pie Tee ともよぶ

オランダにルーツがあるといわれるハイカラなニョニャ料理。小麦粉を溶いた液を帽子型に揚げた食べられるカップに、炒めたセンクワンや卵焼き、海老などを詰めたもの。ひと口サイズの前菜で、チリソースをすこし垂らして食べる。かわいくておいしい料理。

5 ポピア Popiah

クレープのようなやわらかい皮で包んだ具だくさんニョニャ・ポピア

具を皮で包んだ、いわゆる春巻き。サクッと揚げたタイプとクレープのような皮で包んだタイプの2種あり、どちらもセンクワンが入っている。トップハットやジュフチャーの味つけである切り干し大根似で、わたしたち日本人にとっては食べやすさ満点。



さらに先日。ペナンのタリナさん宅でいただいた「ベジスープ」にもセンクワンが大事な隠し味として登場した。スープの中身ではなく、スープのだしとしてセンクワンを使う。タリナさんいわく「センクワンを入れてスープを煮込むと、甘みがでて、おいしくなるのよ」と。いわゆるだしの効果があり、ベジタリアン料理に大事な食材なのだそう。

スープの中身はうずらの卵、ジャガイモ、葱やセロリ。そこにセンクワンでだしを取ったスープをそそぐタリナさん。
美味! センクワンの甘みが滋味深い。食べる直前に柑橘のカラマンシーをキュッと絞る。すると、さわやかな酸味と香りが広がり、スープの味に奥ゆきがでる


まとめて、あらためて思った。センクワン、いいね! 七変化感に縁の下の力持ち感にインパクト感にまとめ感。それらが全部ある。日本では大根で代用しているが、やっぱり違うので、現地でセンクワン料理、ぜひ試してね。

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