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海洋プラスチックはゴミではない。海ゴミをアートにするお手伝いで知った”新しい価値”の作り方【おてつびとインタビュー vol.20】

おてつびと_vol.20_野島奈古

深刻化している”海洋プラスチックゴミ問題”について、聞いたことはありますか?
世界の海に存在していると言われる海洋プラスチックは合計1億5,000万トン以上(※1)、毎年約800万トン(ジャンボジェット機にして5万機相当)(※2)に及ぶ量が新たに流れ出ていると推定されており、このままでは2050年の海は、魚よりもごみの量が多くなると言います。

そんな、海洋プラスチック問題に対して、こう言い切る方がいます。
「海洋プラスチックはゴミではない。可能性を秘めた素材だ」と。
三重県・鳥羽市(とばし)のおてつたび先「REMARE」の間瀬さんは、海洋プラスチックアーティストとして活動しています。

おてつたびでは、農業や宿泊業をはじめ、様々な地域の困りごとのお手伝いがありますが、地域のお祭りや、古民家改修、アイデア出しなど珍しい内容のお手伝いも多数あります。
今回は、三重県鳥羽市とばしの海岸で海洋ゴミを回収し、アート制作をしているおてつたび先「REMARE」のおてつたびに参加した、野島奈古のじま なこさんにお話を伺いました。

※1)WWFジャパンWEBサイト「海洋プラスチック問題について」、McKinsey & Company and Ocean Conservancy(2015)
※2)WWFジャパンWEBサイト「海洋プラスチック問題について」、Neufeld,L.,et al.(2016)
●基本情報●
おてつたび先:REMARE
行き先:三重県・鳥羽市とばし
期間:2021/3/20(土)-2021/3/22(月)
お手伝い内容:海洋プラスチックゴミの回収・分別
詳細:https://otetsutabi.com/plans/169

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◆地方のくらしを知らずに「地方に興味がある」とは言えないと気づいて

私は兵庫県神戸市こうべしの出身で、大学ではジャーナリズムを学ぶゼミに所属しています。

今回は海洋プラスチックをアートに変えるお手伝い、という内容に惹かれて鳥羽市に行くことを決めたのですが、おてつたびの利用自体はこの時が二度目です。
3月上旬に宮城県栗原市くりはらしに行ったのが初めてで、7月には再び栗原市に行きました。栗原は、おてつたびを通して第二の地元になったので、二度目は”行く”というよりは”帰省”でしたね。

私はもともと朝日新聞の記事で「おてつたび」を知りました。
”アルバイトでもなくボランティアでもない”とは一体どんなものなんだろう?と興味を持ち、就活が終わったタイミングで申し込みました。

私は以前から旅行が好きだったので、観光旅行にはよく行っていました。島も好きで、何か所か巡っています。小豆島も素敵な場所でした。あとは神奈川県の鎌倉とか江の島とか、北海道、岐阜、長野など、「観光地」と言われる旅行先は結構行っているかと思います。
友達や、大学で所属しているトイカメラサークルの旅行で行く場合がほとんどでした。

そうやって大好きな旅行を楽しむ一方で、「地方のくらし、一次産業に興味がある」とも言ってきたんですけど、よく考えてみたら語れるほどには地方と言われるような地域にはあまり行ったことがありませんでした。それこそ、旅行や観光で訪れることがあるくらいで、地方の人のくらしを感じたことがない。そのことに気付いたこともおてつたびを使おうと思ったきっかけでした。

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◆環境問題への意識に刺さったおてつたびの募集

「おてつたび」は農業や漁業のお手伝いをするイメージだったので、今回の鳥羽市での募集を知った時にはこんなお手伝いもあるんだ、おもしろそうだなと思いました。朝に届いたメルマガで知って、そのまますぐに申し込みました。
場所も行きやすいなと思いましたが、自分の関心とマッチしていた募集内容にピンときたのが決め手です。ずっと、海洋プラスチックをはじめ、環境問題に興味があったんです。

私が環境問題に関心を持ったきっかけは、大学一年生の春、入学してすぐの頃に受けた大学の講義でした。 
日本から中国へのプラスチック輸出を中国が規制したことでプラスチックの行き場がなくなって、プラスチックが山のように溢れている映像を見たのがすごい衝撃的で……。それをきっかけに関心を持つようになりました。

私自身は環境問題や脱プラに関する活動団体に所属しているわけではないけれど、個人的にステンレスストローを持ち歩いてカフェで使ったり、エコバッグを持ち歩いてレジ袋を使わないようにするなど、個人的な行動を継続しています。そうは言っても海洋プラスチックというと、なかなか実感がなかったので、おてつたびのような機会がプラゴミについて考えるキッカケになったらいいなとも思っていました。

◆「ゴミ」から”新しい価値”を作るということ

結局、お手伝いの当日は大雨になってしまったので、予定していたビーチクリーンの代わりに室内でプラスチックを色ごとに分別していく作業をしました。
そこにあったのは、ペットボトルキャップがパンパンに入ったすごく大きい45リットルくらいのゴミ袋が10袋くらい。量は多くてもペットボトルキャップなので、色も明るく軽そうな見た目です。
ところが、実際に持ってみたら意外とずっしりしていて驚きました。ああ、これがプラスチックの重さなんだ、って。

その大量のペットボトルキャップを、白、薄い水色、濃い青、緑、薄めの緑、ピンク……と、色別に仕分けていくんですが、普段は気付かない視点で作業ができた気がします。
白やお茶の緑、アクエリアスの青が多いなかに、たまにピンクだったり、珍しい色も出てくるとちょっと嬉しくなったりしました。今まではペットボトルのキャップなんて意識したこともなかったですけど、いろんな色があるし、かわいいイラストがあったり、と小さな発見があって面白かったです。

ボールペンや時計、サイドテーブルなど、砕いたプラスチックが固められた完成作のアートも見せていただきました。
普通だったらあまり使われない「ゴミ」と言われる価値のないものが、色も鮮やかで新しい価値のあるアートに変わるということが新鮮でした。

最初は完成作を見てもピンと来ませんでした。
というのも、私ははじめ、廃棄されるだけのペットボトルが”価値のあるものに変わる”という発想ができなかったんです。
でも、自分の手を使ってペットボトルキャップを仕分けてから、なんだか自然に共感できるようになっていました。

今後は、クラウドファンディングで資金を集めて、アートをつくるためのアトリエの機械整備などもするそうです。間瀬さんは、現地の子たちの信頼もある方でした。現地の子が、『間瀬さんはいつも、「こうしなさい」と行動の指示を与えるんじゃなくて、その人自身に考えさせるんだ』と言っていたことも印象に残っています。

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◆REMAREでのおてつたびで出会った新しい価値観、新しい選択肢

小学校の頃の家族旅行で三重県を訪れたことはあったのですが、山が近い印象でした。一方、同じ三重県内でも今回訪れた鳥羽市は鳥羽は海が近いから海風も感じられる町ですし、魚料理のお店も多い。同じひとつの都道府県でもいろんな表情があるんだなと実感しました。

それから普段、自分が付き合う人たちは大学生ばかりですが、REMAREのおてつたびで出会ったシェアハウスの人は専門学校に通っていて進路に迷っているだとか、自分とはまた違ったルート、違う選択肢を選んでいて、刺激をもらいました。
環境問題に興味がある子とは、環境問題のどこに興味があるの、なんて話をしたかな。大学を休学して各地を旅しながら写真家をしているという子に関してはなんと、私の住む神戸での個展が決まっていたという偶然もあり、おてつたびの後、神戸で再会することができました。

いろんな背景や価値観を持った人がいたので、本当に面白かったです。
私は高校、大学、就職と進んでいくことが当たり前という雰囲気のなかで過ごしてきたので、新しい価値観を知ることができたと思います。

私は今まで、大学を休学すること、仕事を辞めることにネガティブな印象を持っていました。でも、休学や退職、転職はそんな単純な選択じゃない。休学や、仕事をやめて自分がやりたいことをするのは、人生を充実させるための選択肢のひとつなんだと思うようになりました。

間瀬さんがお話しされていたことで特に印象的だったのが、「海のゴミを陸で循環させる」という考え方でした。
それを聞いてから、「今まではゴミとして捨てていたものも何か生まれ変わるんじゃないかな?」「価値がつくれるんじゃないかな?」と日常でも意識するようになりました。

価値のないものから価値を生み出す。新しい価値観を知ったことは今後の自分にとっても強みになっていくと思います。
REMAREでのおてつたびは、短いけど、とても充実した時間でした。

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海洋プラスチックでアートを作るという、ちょっと珍しいおてつたび。
自分の手でペットボトルキャップを分別したことで、海ゴミの”新しい価値”作りについて実感が沸くようになったと語る野島さんの言葉を聞いて、自分の手を動かすことや自分の目で見ることの大切さをあらためて感じました。

ー野島さん、ありがとうございました!!

【取材:田中沙季・渡邊真由 執筆:田中沙季】

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⭐おてつたび先情報

三重県鳥羽市

◆鳥羽市オフィシャルサイト
https://www.city.toba.mie.jp/

◆鳥羽市観光協会公式サイト
http://www.toba.gr.jp/

⭐今回のおてつたび先

◆REMARE

住所:〒517-0011
三重県鳥羽市鳥羽5-2-14
HP:https://www.kasabuta.org/

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