現場での学びを伝えていけるのは、私たち。おてつたびという”きっかけ”の旅で見たもの 【おてつびとインタビュー vol.17】
長引くコロナ禍。
以前は人と交流することやゲストハウスが好きで、休みのたびに全国を旅していたという方も、なかなか行きづらい状況になっています。
今回のおてつびとは、岡山県・瀬戸内市の牛窓地区でゲストハウスオーナーをしている山口優理さん。
長引くコロナ禍のなか「今できること」を考え続けた山口さんは、少しの間の休業を決断。大好きなゲストハウスや地域に還元できるものを求めて、パートナーのニックさんとともに、感染症対策を徹底した上で学びと発信の旅へと出発。(山口さんのブログはこちら!)
旅のスタートとして、山口さんとパートナーのニックさんは、二人一緒に三重県・熊野市(くまのし)にある入鹿温泉ホテル|瀞流荘《せいりゅうそう》でのおてつたびに参加。
おてつたび先としての登録もされている山口さんの視点からの、初めてのおてつたびについてお話を伺いました!
(記事は2021年1月27日時点での情報です)
●基本情報●
おてつたび先:入鹿温泉ホテル瀞流荘
行き先:三重県・熊野市
期間:2020/12/28(月)~2021/1/4(月)
お手伝い内容:食器洗い、レストランでの配膳・片付け、部屋掃除、SNSでの発信
詳細:https://otetsutabi.com/plans/169
◆ゲストハウスオーナー、自分の宿へ活かすためのヒントを求めて旅に出る!
ー普段のお仕事についておしえてください!
岡山県瀬戸内市の、牛窓という地域でUni.House(ユニハウス)というゲストハウスのオーナーをしています。
ゲストハウスは2019年9月にオープンして、いよいよこれからだ!というところだったのですが、少し経って、コロナウィルスの流行が始まってしまいました。
その間も、今できることはないかなと考えて、ゲストハウスのDIYをするなど、より良いものになるようにスタッフの子たちと力を尽くしてきたのですが、1年経って第三波が来て……。
さすがに、お客さんに来て欲しくてもなかなか「来て!」とは言えない状況になってしまいました。
牛窓は、若い子が少ない超過疎化地域と言われます。そんな牛窓でゲストハウスをしている私が今できることってなんだろう、私とパートナーのニックの二人だからこそできることはなんだろう、とたくさん考えてきました。
何度も何度も考え、ニックと話し合った結果選んだのが、外に出て発信すること、私たちが外に出て色々学んで持って帰ること。
私たちが外に出て色々挑戦している姿を若者に見てもらおうと、ゲストハウスを少しの間休業して旅に出ることに決めました。もちろん、コロナの感染対策を考えたうえでの、挑戦の旅です。
ーおてつたびを利用した経緯をきかせてください!
「おてつたび」というサービスは、インターネットで調べていて知り、Uni.Houseはおてつたび先として登録もしています。
今回の休業中の旅では、発信とともに、Uni.Houseの課題へのヒントを見つけることが目的としてあります。そのために最適なサービスかなと思ったので、旅のなかでおてつたびを使うことはスケジュールを考える前から決めていました。
Uni.Houseでは、外からの働き手の受け入れもしています。しかし、そのなかで、一緒に働く上でのコミュニケーションや環境づくりについて、トラブルとまではいかないけれど、悩むことも多くありました。
そんなUni.Houseの今の課題に対するヒントを旅の中で見つけて、実際に活かしていきたいという想いがあったんです。
もし自分が旅人になったとき、どんなことを感じるだろう?受け入れる側と旅人、お互いがハッピーなかたちをつくるためにはどうしたらいいんだろう?……って。
ーおてつたび先を選ぶときの基準はありましたか?
接客はもちろんゲストハウスの仕事に活かせますし、Uni.Houseにも小さいガーデンがあるから農業系のおてつたびも学べるものがある。
だから、農業や宿泊など、おてつたび先のジャンルへのこだわらず、日程が合うところを探しました。
そうして12月くらいに色々見ていた募集で、日程が当てはまるのが瀞流荘さんでのおてつたびでした。
HP掲載の募集日どおりの参加が難しかったのですが、申し込み時に相談してみたらありがたいことに融通を利かせてくださいました。
当日は、朝の8時にUni.Houseを出てから全然知らない道を車でずっと走って、「山奥に行くね、大丈夫かなあ」ってニックとふたりで話しながら、16時くらいに熊野に着きました。
参加前におてつたびのサイト内で地域の方とチャットができるのですが、行く前のメッセージのやりとりで、「ここのバイパスを通るといいですよ」といった細かいところも親切に教えていただけたので行きやすかったです。
◆現地で感じた、現場で体感することの貴重さ
ーお仕事内容はいかがでしたか?
私はゲストハウスをオープンさせようと決めてから、勉強のためにゲストハウス、カフェ、居酒屋、などの接客業を経験してきました。
そのこともあって、瀞流荘ではレストランでの一般的なオーダー受けや、お料理を持っていくなどの接客をメインにお手伝いしました。
夕食は地元の食材を使った懐石料理でした。地元の食についての知識など、細かいことを知らないと迷惑がかかってしまうし、普段Uni.Houseでおこなっているフランクでカジュアルな接客とは少し違うので、ちょっと緊張する場面もありました。
そんな中で、何十年も接客のお仕事をされている60代、70代の大先輩の姿を見せてもらって。自分の接客レベルがまだまだだなって……悔しいというより、見ていて届かないなあ、まだまだだなあと感じました。
Uni.Houseと清流荘はコンセプトも、目指すものも、お客様の層もまた違うので、すべてが当てはまるわけではないですけど、本当に、凄く学びがありました。
ーホテル瀞流荘で働いてみて感じたことをきかせてください!
瀞流荘さんは30年続いているお宿なので、もう20年も働いている方や年齢が高い方も多くいらっしゃいました。
私がゲストハウスをやっている牛窓も超過疎化地域なので、年齢が高い方が多いというところから、おてつたび中に牛窓のことを考えるときもありました。
若者が頑張らないと、これまでの世代の方々が培ってきた地域の魅力やスキルなどを、今、私たちが見て学んで受け継いでいかないと、次の世代は誰がやるんだろう?と、目の前で、現場で見て感じるものがありましたね。
これって、色々な地域や場面につながるなと思います。
牛窓も歴史があって、いくつもの素敵なお祭りや伝統はあるものの、それを受け継ぐ次世代の若者も少ないのが現状ですし、学べる場所もあまりなく、関わるきっかけも少ないです。
だから、地域に「本当に良いもの」があるのに、そこに若者が行かないと、本当にそのままで終わっちゃうな、って……。
今現在、現役でやっている方々だって、ずっと今のようにプレイヤーでいられるわけではないですよね。レベルの高いスキルや、たくさんの知見を持っておられる先輩方がいなくなる時がいつかは来ます。そんな先輩方が時間をかけて積み重ねてきた、生きた知識や経験、スキルを現場で直接学べるのは、本当に貴重だなと思います。
そして、それを伝えていけるのも、それを見た私自身であるし、発信できるのも私たちです。だから、今回見つけて学んだこともUni.Houseに帰って、牛窓に帰って発信していけたらなと思いました。
ただ受け継ぐだけではいけないのが難しいところで、時代の流れや世の中の変化に対応して、新しいものとりいれて、残さないといけないものバランスがむずかしいなとも思いました。現場に行ける機会はそんなに多くはないので、とても考えさせられる機会でした。
◆一度来るとまた来やすくなる、フレンドリーな方々が待つ”熊野”
ー初めての熊野、楽しめましたか?
はい。一度訪れると行き方もわかるし、来やすくなりますね。
来る前は、田舎で旅館、しかも歴史があるとなると、気難しい方たちだとか、お堅い感じかな?と思っていたんですけど、行ってみると皆さんが本当にフレンドリーで驚きました。
ニックは外国人だし、全身にタトゥーが入っていて、日本語もまだ完璧ではないし……。
心配な部分もあったのですが、そんなことは一切関係なく本当に優しくしていただいて、その点は二人とも衝撃でした!
こうやって良くしてもらうと、「熊野」という土地柄的にも良いイメージになりますよね!
今回は行けませんでしたが、おすすめのスポットもいくつか教えていただいたので次に帰ってきたときは行きたいです。
また熊野に帰ってこようね、特別な日に帰ってこようねという話はずっと二人でしています。
また、おてつたびとの連携もそうですし、インスタグラムを使った企画を実施するなど、熊野市は市としての取り組みが凄く面白いです。瀬戸内でもこういうのやったらいいんじゃないかな、県とか市との連携もしてみたいなあと思いました。
こういった事例を見て学ぶことができるのも良いなあって。行って良かったと思うことばかりでしたね、本当に。
ーおてつたび先での印象に残っていることはありますか?
皆さん、本当に人が良かったです。
お話好きな方が多くて、お客さんへの料理提供の間や、昼の余裕ある時などにたくさんお話しました。
私たちは一週間しかいないのに、こんなに親切にしてくれるんだ!こんなに丁寧に優しく教えて下さるんだ!とこちらが驚くくらいでした。
逆に申し訳なくて、いっぱい吸収していこう、応えていこうというモチベーションにもなったかな。ただただ、感謝しかないです。
旅館というと、イメージ的にかしこまってしまいます。
旅館なので、しっかりしないといけないんじゃないかというイメージもあって身構えていたところもありました。
でも皆さんが私たちの滞在を一緒に楽しんで下さって、とても良かったです。
ご飯も豪華すぎてびっくりでしたし、毎日お菓子や、みかんといったおやつが充実していました。
熊野はみかんが有名だそうで……あんな美味しいみかんはなかなか食べられないですよね。
あと、「熊野」っていうと結構広いんですね。食べ物も豊かで、地鶏、牛、お酒、梅酒、焼酎など、地物がたくさんあって素敵だなあと思いました。
◆”きっかけ”に出会う旅のスタイル「おてつたび」
ー熊野への「おてつたび」、いかがでしたか?
私は普段、拠点を持っている身なので、ちょっとだけ外で働いたり色々な経験ができる機会はなかなかありません。
そんな中、今回はいい経験ができて、とても有難かったです!
私はもともと「宿がやりたい」というよりも、どちらかというと、多様な人・価値観と出会う場所やきっかけがつくりたくてゲストハウス「Uni.House」をオープンさせました。
自分の人生の幅が広がるような体験ができたり、自分とは異なる多様な価値観をもつ人と出会えたりする場があること、そういう場に行ってみるという選択肢を知らないままに生きている人っていると思うんです。
でも、ちょっとしたきっかけに出会えたら、一人で考えていた以上に幅の広い選択肢や仕事や、これまで知らなかった自分を知って、もっともっと人生が楽しくなる可能性があると私は思っています。
だから、人とのつながり、出会い、交流を大切にしている私たちのUni.Houseでは、そのきっかけをゲストハウスを通じて提供したい。
世の中には、やってみないとわからないことがたくさんあると思います。おてつたびは、そのちょっとしたきっかけとして良いんじゃないかなあ。
例えば、おてつたびで初めて接客や農業に触れてみて、もしかしたら「接客って楽しいな」とか、「農業ってこんなに奥が深いんだ」とかいろんなことを知っていくことになるかもしれない。
大学生や若者にもっと知ってもらいたい。
こういう旅のスタイルもあっていいなと思います。おてつたびは、旅人として自分がもっていた期待値を超えていましたね。
ー働き手を受け入れる視点から気付いたことはありましたか?
知らないところに一人で行くというのは、緊張すると思います。
その時に受け入れ側が気さくに、あったかく受け入れてくれるって大事なことだなと感じました。
今回、実際に使ったからこそ感じたこともふまえて、今後Uni.Houseでおてつたびの募集をして皆さんを受け入れるときも、丁寧に対応したいなと思っています。
Uni.Houseのフォローボタンを押してくれている子がいるみたいで、時々連絡が来ると嬉しいですね。
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皆さんがフォローボタンを押す「行きたい!」の気持ちは地域の皆さんにとどいています!山口さんのUni.House、いちユーザーとしても、募集がはじまったらぜひおてつたびしに行きたいなと思いました。
気になるおてつたび先をフォローしておくと、募集開始時に通知が届くようにもなりますので、活用してみてくださいね!
ー山口さん、ありがとうございました!!
【取材:田中沙季/西村咲笑 執筆:田中沙季】
⭐おてつたび先情報
◆熊野市オフィシャルサイト
https://www.city.kumano.lg.jp
◆熊野市観光協会HP
https://www.kumano-kankou.info
⭐今回のおてつたび先
◆入鹿温泉ホテル瀞流荘
住所:〒519-5417
三重県熊野市紀和町小川口158
電話:0597-97-1180
HP:http://seiryusou.com
Facebook:https://www.facebook.com/seiryuusou
(お話しいただいた、山口さんのゲストハウスはこちら↓)
◆Uni.House
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