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岩手県の民俗学(胆沢の民話)

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岩手県の胆沢という地域に伝わる民話や伝説を紹介しています。 民俗学的に価値のあるものだと思うので、目にとまった人の記憶に、少しでも残って伝わっていけばいいなと思います。
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#訛り

片葉の清水と愛馬香月【岩手の伝説⑤】

片葉の清水と愛馬香月【岩手の伝説⑤】

参考文献「いさわの民話と伝説」 編:胆沢町公民館

人皇第七十代、後冷泉天皇の、康平三年、即ち前九年の役に、

衣川の舘で敗れ、厨川柵を最後の地として拠守した安倍貞任を、

遂に火攻めの奇計を以て破り、貞任を誅し、弟宗任等を捕らえて、

陸奥(むつ)の乱を平定した源義家は、都に帰るべく、

名馬香月に打跨り、意気揚々として、今の小山字柴山にさしかかりました。

※人皇・・・じんこう、にんのう、じん

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ツブ沼の怪【岩手の伝説④】

ツブ沼の怪【岩手の伝説④】

参考文献「いさわの民話と伝説」 編:胆沢町公民館

昔々、市野々※の近くに、八郎という若者がありました。

※いちのの・・・奥州市胆沢の若柳地域にある地名。

その若者がようやく十五になった春、父と母は悪い病気にかかり、相次いで世を去りました。

兄弟のない八郎は、ポツンとただ一人この世に残されました。

十五になったばかりの八郎はあまり働きもできないので、雇ってくれる人もありませんでした。

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鶴供養の話【岩手の伝説③】

鶴供養の話【岩手の伝説③】

参考文献「いさわの民話と伝説」 編:胆沢町公民館

昔、二ノ台に一人の猟人(かりうど)がいました。

その猟人は、鉄砲を射てば百発百中という名人でありました。

昨日は鳥、今日は獣と、猟に出た日は、一日として肩に獲物のない日はありませんでした。

毎日のようによく獲れるので、猟人の生活は次第に豊かになり、その心は高慢になってきました。

そこで近所の人には、誰一人として、彼と喜んで交際する者がない

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アオバト【衣川の民話/おまけ】岩手/民俗

アオバト【衣川の民話/おまけ】岩手/民俗

昔、山の奥さ男が住んでた。男はマオどいう馬を飼っていだ。

男はマオのこどをうんと大切にしていだ。

ある日、マオがいねぐなってしまった。

森の中さ入り込んでしまったど思って、マオを探しに行ぐごどにした。

「マーオーマーオー」

ど呼びながら探したども、マオは見つからない。

山の森の中を歩ぎ回っていぐら探しても、マオは見つからない。

それでもマオが大切なので諦められず、

「マーオーマーオ

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