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新作映画評

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私の本業は音楽関係の文筆業ですが、以前某誌で映画評の連載をやっていた関係もあり、時たま映画の試写状をいただきます。以前は多忙、というか生来の出不精もあって、なかなかうかがえなかっ… もっと読む
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記事一覧

[映画評] vol.22 ルカ・グァダニーノ監督『サスペリア』2019年1月公開

 ルカ・グァダニーノ監督『サスペリア』の試写を見ました。もちろんダリオ・アルジェンド監督の『サスペリア』(1977)のリメイク版です。音楽はレディオヘッドのトム・ヨーク。

 2時間半もあるので、寝不足の身で行ったら居眠りしそう……とか案じていたら、最後まで全然退屈しませんでした。といって波瀾万丈のスペクタクルなストーリーや派手な視覚効果があるわけではなく、どちらかといえばあえて抑揚を抑えたような

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[映画評] vol.21 梅田航監督『SOUNDS LIKE SHIT  the story of HI-STANDARD』2018年11/10公開

 ハイスタのヒストリー・ドキュメンタリー映画『SOUNDS LIKE SHIT』。めちゃくちゃ面白い作品でした。11/10公開。

 バンド結成から、メンバーそれぞれが問題を抱えながらもそれを乗り越え現在に至った経緯を、よく知られていることも、知られざる事情もまじえ過不足なく描かれる。メンバー3人以外の発言は一切出てこない作りは、横山健のドキュメンタリー『疾風勁草編』と同じだけど、3人の微妙に異

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[映画評] vol.20 ブライアン・シンガー監督「ボヘミアン・ラプソディ」2018年11/9公開

 クイーン、というかフレディ・マーキュリーの半生を描いた話題作『ボヘミアン・ラプソディ』。既に公開された海外でも大ヒットしている模様です。以下は一度だけ見た六本木TOHO CINEMASでの試写の直後に記した感想(Facebookに書いたものの転載)です。非常に面白い映画で、長尺だけど、最後まで飽きずに楽しめました。評としては全然まとまってませんが、覚え書きとして。ネタバレ気味なので、知りたくない

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リメイク版『サスペリア』サントラ盤(担当・トム・ヨーク)の試聴会に行ってきた。

 ホラー映画の古典的名作『サスペリア』のリメイク版のサントラの試聴会に行ってきました。音楽担当はトム・ヨークです。

 場所は初台にある廃屋みたいな病院跡のビル。映画やドラマの撮影にも使われているらしいですが、照明を落とした暗い階段を降りて、ロウソクの灯りだけが灯る、ゾンビが出てきそうな不気味な地下部屋で聴きました。ホラー映画のサントラの試聴会ですからね。この演出は楽しい。

 約90分にわたって

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[映画評] vol.19 ルーシー・ウォーカー監督 『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』7/20公開

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』試写。
http://gaga.ne.jp/buenavista-adios/

 説明するまでもないヴィム・ヴェンダーズ監督の音楽ドキュメンタリーの傑作『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(1999年公開)の続編。主要メンバーの逝去や高齢化などで解散したキューバの楽団ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ(BVSC)の最後の世界ツアー(2015~2016

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[映画評]vol.18 ブノワ・ジャコー監督『EVA エヴァ』7/7公開

 フランス映画『EVA エヴァ』試写。
http://www.finefilms.co.jp/eva/

 フランスのベテラン、ブノワ・ジャコーが監督、『ピアニスト』や『エル』のイザベル・ユペールが主演した、いわゆるファム・ファタールもの。エヴァと名乗る謎めいた女娼婦に耽溺し翻弄され破滅していく若き劇作家ベルトランを描く。試写が始まる直前にプレスリリースを読んで初めて気づいたんですが、ジョセフ・ロ

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[映画評] vol.17 スティーヴン・スピールバーグ監督『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』公開中

『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』劇場にて鑑賞。
http://pentagonpapers-movie.jp/

 誰もが思うことだろうが、今の日本の状況と重なるものが多すぎて、ちょっと背筋が寒くなる。メリル・ストリープやトム・ハンクスの人物・心理描写や背景の説明をもう少し丁寧にやったら、お話の流れや登場人物の葛藤や決断はもっと自然になったろうけど、2時間以内に収めるために、そうした描写を

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[映画評] vol.16  スティーヴン・S・デナイト監督『パシフィック・リム : アップライジング』公開中

『パシフィック・リム : アップライジング』IMAX3Dにて劇場鑑賞。ただ単に「あー面白かった」で終わらせてしまうような映画なので、批評というよりただの感想文になってしまいますが・・・
http://pacificrim.jp/

 前作はかなり面白かった記憶がありますが、前作の監督だったギレルモ・デル・トロは製作に回っています。『シェイプ・オブ・ウォーター』の製作を優先させた結果監督を降りること

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[映画評] vol.15 『ランペイジ 巨獣大乱闘』5月18日公開

 アメリカ映画『ランペイジ 巨獣大乱闘』試写。
http://wwws.warnerbros.co.jp/rampagemovie/

 一言で言ってしまうと「不正な遺伝子操作によって巨大化・凶暴化したゴリラやオオカミやワニがシカゴの街で大暴れするお話」。80年代のアーケード・ゲームを実写映画化したものだそうで(そのゲームについてはよく知りません)、それ以上の込み入ったストーリーもなく、善玉悪玉も

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[映画評] vol.14 キーレン・パン監督『29歳問題』5/19公開

 香港映画『29歳問題』試写。

 これは面白かった。仕事も恋もプライベートも順調(に見える)29歳女性を巡るコメディ仕立てのドラマ。30歳を目前にした女性の、おそらくは万国共通の悩みを描く。香港が舞台の話だが、そのまま日本語のセリフに置き換えても全然違和感なさそうなほど、日本人にとっても身近なリアリティを感じさせる。同世代の女性が見れば「あるある感覚」満載じゃないだろうか。設定はありきたりだがス

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[映画評] vol.13 ウギス・オルテ/モルテン・トローヴィク監督『北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ』6月下旬公開

『北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ』試写

 スロヴェニア(旧ユーゴスラヴィア)のインダストリアル・バンド、ライバッハ(劇中ではライバックと発音してますね)が、2015年に欧米のロック・バンドとしては初めて北朝鮮でライヴしたというドキュメンタリー。ライバッハの所属レーベル、ミュートの総帥ダニエル・ミラー翁もコメントで登場する。

 当時のNMEの記事
https://nme-jp.com/n

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[映画評] vol.12 ロブ・ライナー監督『スパイナル・タップ』6/16公開

『スパイナル・タップ』試写
http://spinaltap.jp/

 1984年制作、ロック・ファンの間では有名なカルト・ムーヴィーで、なぜか今頃日本初公開。とはいえ既にDVDにもレンタルビデオにもなってるので、見たことのある人は多かろう。時は1982年、60年代から活動する英国バンド<スパイナル・タップ>が新作を引っさげ全米ツアーする様子を追ったドキュメンタリー……という設定のコメディ映画で

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[映画評] vol.11 ショーン・ベイカー監督 『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』 5/12公開

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』 試写
http://floridaproject.net/

 ウイレム・デフォーがオスカーの助演男優賞でノミネートされた映画。ストーリーだけ聞くといかにも地味な映画で、たぶん試写状をもらわなければ見に行くことはなかったんじゃないかと思うけど、期待をはるかに上回る素晴らしい傑作だった。いや、「傑作」と大上段に構えるよりも、「愛すべき作品」と言ったほうがいいか

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[映画評] vol.10 マイケル・アプテッド監督『アンロック / 陰謀のコード』4/20公開

映画『アンロック / 陰謀のコード』試写
http://unlock-movie.jp/

 ロンドンを舞台にしたスパイ・アクション映画。監督は『007 / ワールド・イズ・ノット・イナフ』のマイケル・アプテッドで、主演は『ミレミアム』シリーズのノオミ・ラパス。脚本に無駄がなく、演出もテンポ良く進行して飽きさせない。もっともお話そのものはかなり入り組んでいてどんでん返しも多く、そのうえ説明的な描写

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