[映画評] vol.13 ウギス・オルテ/モルテン・トローヴィク監督『北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ』6月下旬公開

『北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ』試写

 スロヴェニア(旧ユーゴスラヴィア)のインダストリアル・バンド、ライバッハ(劇中ではライバックと発音してますね)が、2015年に欧米のロック・バンドとしては初めて北朝鮮でライヴしたというドキュメンタリー。ライバッハの所属レーベル、ミュートの総帥ダニエル・ミラー翁もコメントで登場する。

 当時のNMEの記事
https://nme-jp.com/news/3749/

 ライバッハの紹介に始まり、北朝鮮に降り立ち、バンドと北朝鮮側が噛み合わない珍妙なやりとりを交わしながら、なんとかライヴの実現まで悪戦苦闘する過程を描く。モチーフとしてはストーンズのキューバ公演を描いた『ハヴァナ・ムーン』と同じだけど、北朝鮮はキューバほど開放的ではないから、たぶんここで描かれないこと、撮れなかったこと、カットされたことも多くあったのだろうとは想像がつく。そしてライヴ実現までの過程が長く描写される割に、肝心のライヴの様子がほんの数分で終わってしまい、観客の反応も(我々基準では)イマイチぱっとしないので、「大成功だった」と当事者が自賛するほどのカタルシスや感動を、観客がいまひとつ共有できないのである。北朝鮮側がライバッハをどう捉えているか、なぜ彼らを招聘したのか、ライヴの結果についてどう見ているのかわからないのも、仕方ないとはいえ物足りない。

 それでもこういう形で北朝鮮にカメラが入ったのは初めてだろうし、閉ざされた独裁国家の素顔の一面を見られるという意味でも、貴重かつ興味深い場面の連続ではある。ライバッハの音楽にすごく興味のあるって人はそうそういないだろうけど、これがひとつの極めて意義深い異文化交流の記録であることは間違いない。ライバッハが共演する北朝鮮の少女コーラス隊(グループアイドルみたいなもんか)が可愛かった。6月下旬公開。

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