[映画評]vol.18 ブノワ・ジャコー監督『EVA エヴァ』7/7公開

 フランス映画『EVA エヴァ』試写。
http://www.finefilms.co.jp/eva/

 フランスのベテラン、ブノワ・ジャコーが監督、『ピアニスト』や『エル』のイザベル・ユペールが主演した、いわゆるファム・ファタールもの。エヴァと名乗る謎めいた女娼婦に耽溺し翻弄され破滅していく若き劇作家ベルトランを描く。試写が始まる直前にプレスリリースを読んで初めて気づいたんですが、ジョセフ・ロージー監督ジャンヌ・モロー主演の名作『エヴァの匂い』(1962年)と同じ原作小説『悪女イヴ』の映画化なんですね。

 私が『エヴァの匂い』を見たのはだいぶ前なので記憶が曖昧ですが、モノクロームのスタイリッシュな映像とジャジーな音楽で、ジャンヌ・モローの悪女ぶりが怖いほど炸裂していた『エヴァの匂い』に比べると、本作は今ひとつ引き込まれるものがない。イザベル・ユペール演じる女娼婦に青年作家(ギャスパー・ウリエル)がのめり込んでいく理由に説得力が足りないし、その過程も描き込み不足に感じる。その理由をイザベル・ユペールの魅力が乏しいからとは言いませんが、徹底的に素性不明の謎の女として描かれていたジャンヌ・モロー版エヴァに比べると、イザベル・ユペール版はそれなりに人物の背景が描かれ謎が少ないゆえに危険さが足りない気がします。イザベル・ユペールには背徳と退廃の匂いが希薄なんですね。

 とはいえブノワ・ジャコー監督は『EVA エヴァ』は『エヴァの匂い』のリメイクではないと直接の関連を否定しています。比較されたくない様子なので、以上のような感想は迷惑なものに違いない。なので『エヴァの匂い』を知らない人の方が楽しめるかもしれません。悪女に翻弄され破滅していくお話は、いつの時代でも男にとって恐ろしくも魅力的ではあります。映像はきれいだし、いかにもフランス映画らしいフランス映画の小品として楽しめると思います。ギャスパー・ウリエルもなかなかのイケメンぶりでした。

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