大の

平成一桁千葉生まれ大阪在住/瑠璃と胡麻

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最近の記事

砂の中で暮らすわれわれ〜石弘之『砂戦争 知られざる資源争奪戦』感想書評〜

最近家の近所の図書館がリニューアルオープンするという僥倖にあずかり、普段なら買わない本を見繕っている。その中で目についた本。刊行は2020年。まあ正直おもしろくなさそう〜と思いながら、仕事上土砂に関係したこともあるので頁をめくった。 めちゃ惹き込まれる冒頭じゃん!! この1行だけで、われわれが如何に砂という資源の恩恵を受けているかわかる良い書き出しだ。 6章構造であり、内容はざっくり以下の通りだ。 1章 世界は都市化している 2章 各国がいかに砂を消費しているか 3章 

    • 小5に薦めたい〜辻村美月『かがみの孤城』感想書評〜

      原恵一がアニメ映画の監督をしてたので「気になるな〜」と思いつつスルーしてた作品。最近、家の近所の図書館が「駅直結になり蔵書数大幅増」という激進化を遂げたので借りて読んでみた。 ああ〜〜〜〜〜懐かし良い! 「学校に行きたいけど行けない子どもたちが鏡の向こうの城に招待される」という王道直球の思春期ファンタジーストーリーが直球エンタメで素晴らしい。なんか『虹色ほたる』にも通じる直球さ。これは思春期の時に読んだら、家の鏡という鏡を毎日凝視していただろうな〜。 思春期の少年少女が不

      • 人間くささと恐怖〜鈴木光司『リング』感想書評〜

        自分はホラーというジャンルが死ぬほど苦手だが、『天久鷹央シリーズ』で本書が登場したことと、小説なら映画や漫画より耐えられるだろうと思って読んでみた。ホラーという一大ジャンルの金字塔として一度体験してみたかったのもある。 怖えけど怖いだけじゃない!!激辛だけど旨味もある麻婆豆腐みたいだ!! まず地の文の描写がとても写実的。人物の挙動や姿勢、表情についての描写も細やか。また、東京を中心に、箱根や鎌倉、大島などへ呪いの謎を解くために赴くことになるが、道中の経路や風景描写が写実的な

        • 政治実験小説〜堂場瞬一『デモクラシー』感想書評〜

          みすず書房の読書アンケートで、竹内洋が挙げていたので読んでみた。堂場瞬一は本屋でしょっちゅう見かけるが読むのは初めて。 ほぉ〜〜〜〜〜!! 国会が廃止され、無作為に選ばれた千人の国民が「国民議員」として立法府となる世界を描いた政治実験小説。文体がシンプルかつどんどん展開が進むので、とてもテンポ良く読めた。 物語は主に以下の登場人物の目線で語られる。 ・議員に選ばれて不安な女子大生 ・新体制を作り直接民主制を推す現首相 ・旧体制復活を目指す都知事 ・国民議員を補助・監視す

        砂の中で暮らすわれわれ〜石弘之『砂戦争 知られざる資源争奪戦』感想書評〜

          日記3〜新しい町は良い〜

          目覚ましの鳴らない7時前に目を覚ますと、首の左側が凝り固まっていた。昔から寝違えをする癖があり、決まって首の左側だ。変な寝相の癖でもあるらしい。 もそもそとベッドから起き出してパスタを120gぐらい茹で上げる。大皿に移してだし醤油とチューブわさび、作り置きのなめたけとごちゃ混ぜにすれば、即席和風パスタが出来上がる。混ぜる最中、立ち上がるわさびの匂いで現実が厚みを増す。ダンジョン飯を観ながらすぐに完食する。 筋トレをする日なのだが気分が乗らず、雀魂の三麻を何周かして勝って気

          日記3〜新しい町は良い〜

          日記2〜最近好きな家事〜

          最近好きな家事がある。ベッドメイキングだ。 これまで家事として認識していなかったが、眠る前に枕と掛け布団を整えるだけで、随分といい気持ちで眠れることに気がついた。 家事は生活の重要な一分野であり、自分を生かす活動という点で生活そのものと言ってもいい。自炊で腹を満たし、掃除で清潔を保つ。自分で自分の世話をしているようなもので、手間をかけた分だけの満足がある。自分が大切だから手間をかけるのではなく、手間をかけられたことで大切だと認識する。その効果は、生存に関係ない家事でこそ顕著

          日記2〜最近好きな家事〜

          映画感想『LAMB ラム』

          予告編が不気味でゾクゾクしたのと、羊が好きなので気になっていた。prime見放題に追加されなので観た。 羊かわいい〜〜〜〜 ↓ うわっ……………… まず、舞台アイスランドの自然がとにかく美しい。どのシーンで止めても絵画のようだ。山間部だが、日本のように雑木林が生い茂るでもなく、草地が広がる高原といった光景だ。牧草地も家屋もフィヨルドの雲海が白く包み込み、人里離れた山間部は神秘的な雰囲気を出している。牧羊を営む夫婦の自給自足的な生活も慎ましく、現代版おとぎ話のようだ。 音

          映画感想『LAMB ラム』

          日記1〜買い物をたくさんした日〜

          8時ごろ、重たい身体をどうにか持ち上げる。歯磨きをしたはずの口にはニンニクの臭いがこびりついており、喉や胸の毛穴はアルコールが張り付いているような感覚があった。昨日は友人と打ちっぱなしの後に牛角の食べ放題に行って酒盛りまでした。胃袋はまだ重たい。 フラフラと浴室に向かって蛇口を捻り湯を溜める。洗面所の室温計は10.7℃を示していた。待つ間にマグカップに水道水を入れてレンジで温め、ぬるい白湯を作る。すすると荒れた食道から全身にゆっくりと熱が広がる。昨夜は寝つけず、『リング』と

          日記1〜買い物をたくさんした日〜

          共同体の横糸〜謠人和楽『民謡訪ねて300m〜唄に生きる〜』感想書評〜

          1月14日の京都文フリで買わせていただいた本。八軒屋浜にある石碑が登場すると聞いて読みたくなった。前の職場で八軒屋浜に関係する仕事をしていたからだ。 著者は信仰と民謡の類似性を上のように述べる。優しい目線だと思う。高校日本史並みの知識だが、人類が定住農耕生活を始めてこれから、共同体というものが生まれた。特に水田は水利権の問題もあり、隣人との競争も避けられない。我田引水という四字熟語の成り立ちも納得できる。共同体は生活の安定も生むが、身分の上下や望まぬ労役、妬み嫉み、軋轢など

          共同体の横糸〜謠人和楽『民謡訪ねて300m〜唄に生きる〜』感想書評〜

          言葉の強度〜シロナミ『金星』感想書評〜

          2024年1月14日の文学フリマ京都で隣のブースで買わせていただいた日記本。道いく人に片っぱしから声をかけまくるバナナのたたき売り実演販売スタイルだった我々と違い、自然と人が集まり滑らかに手渡されていく姿勢が美しいくらいにスマートで、こうありたいと思った。 あまりにも良すぎる。 シンプルな感想になってしまったが、本当に良い。買わせていただいたとき、日記本と聞いて背筋が伸びた。今回自分が販売したエッセイも、東京4年間大阪3年間のいわば回顧録で、広義の日記本のようなものだ。日々

          言葉の強度〜シロナミ『金星』感想書評〜

          文フリ京都2024お疲れさまでした。

          1月14日(日)に京都で開催された文学フリマに、けー52「瑠璃と胡麻」として出店してきました。ありがたいことに用意したエッセイは完売でした。買っていただいた方、お立ち寄りいただいた方、両隣のサークルさま、運営やスタッフの皆さま、本当にありがとうございました。 「瑠璃と胡麻」は今回の出店のために大学の先輩と作ったサークルです。「最近本読むのが面白えから文フリ行ってみてえんだ!」と先輩から昨年の文フリ大阪に誘われ、一般参加2人でエンジョイしまくって「今度は出店する側になろうぜ!

          文フリ京都2024お疲れさまでした。

          これが大阪!これがキャバレー!〜高殿円『グランドシャトー』感想書評〜

          年末に大阪から千葉へ帰省する際、乗り場の売店で文庫を買った。飛行機内ではスマホが使えないため、気づけば一冊買ってしまうことがある。大阪のご当地本大賞をとっていたのも気になった。 アッパレ!これが大阪じゃ〜い! 女の根性モノが好きなので、グランドシャトーを建て直すルーのシーンが好き過ぎる。財力で資材を寄せ集め、真正面から箱を改造していくスペクタクルは読んでいて熱くなる。「ババアこそ花柄着るべきや。ハナが足りへんねんから」などのジョークも効いていて良い。とはいえ、ルーの訛りはど

          これが大阪!これがキャバレー!〜高殿円『グランドシャトー』感想書評〜

          映画感想『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』

          ※ネタバレ注意 2024年映画一発目。もともと好きな漫画でアニメも欠かさず観ているので、オリジナルストーリーと聞いて楽しみに観に行った。 まあ〜〜〜良いんじゃない!? 「校長が好きなお菓子を作ってステラを獲るために北国へ家族旅行へGO!」というストーリーも可愛いし、クリスマス感のある街並もワクワクする。フィオナやフランキーなどお馴染みメンバーも出てきてワイワイ。ユーリだけは登場するとメチャクチャになるのでお休みは仕方ないが笑った。 ただ何というか…クレヨンしんちゃん枠な

          映画感想『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』

          2024年目標

          12月28日〜1月6日まで10日間帰省して関東の友達や親族と酒宴三昧だった。姪っ子の可愛さに脳みその全てをやられていたが、そろそろ今年の自分の人生を考えていく。 収支計画設計 2023年に結婚したので、妻との生活のためにしっかりした収支計画を立てる。昨年にFP相談して叩き台は出来たので、個人のクラウドに保存して逐一修正が効く重要資料とする。 資格取得計画設計 今後の人生を経済的・精神的に支えてくれるそれなりの資格をこの10年のうちに取りたいため、興味や有用性、将来性を加味

          2024年目標

          時代劇入門にオススメ〜宮部みゆき『震える岩 霊験お初捕物控』感想書評〜

          このところ朝井リョウや辻村美月の「現代社会の生きづらさ」みたいなテーマの小説ばかり読んで疲れてきたので、疲れない題材を人に相談したところ「宮部みゆきの時代小説はいかが?」と言われたので読んだ。刊行は1993年と30年ほど前の作品である。 満たされる〜〜〜!! 現代社会が主題だとどうしても物語を自分に引き付けて実践的な教訓を得ようとしてしまうが、時代劇ならそうはならず、純粋に物語、お芝居として楽しめる。超能力を登場させる宮部みゆきの作劇もダイナミックで読みやすい。さらに江戸時

          時代劇入門にオススメ〜宮部みゆき『震える岩 霊験お初捕物控』感想書評〜

          短編オブ短編〜伊坂幸太郎『逆ソクラテス』感想書評〜

          知り合いが「面白いよ」と言っていたので読んでみた。 上質な短編とはこのこと〜〜! 伊坂幸太郎は昔好きでよく読んでいたが、最近はあまり読んでいなかった。久しぶりに読むと文体が懐かしい。登場人物がよく動き、よく喋り、物語が機関車のように駆動していく。朝井リョウや辻村美月、宇佐見りんなど、内心の描写が多めな作家を読んだ後だと違いをよく感じる。各駅停車から快速に乗り換えたようだ。 ストーリーがよくまとまっており、登場人物たちがハッキリ際立っている。逆に言えば、先述の作家たちと比べ

          短編オブ短編〜伊坂幸太郎『逆ソクラテス』感想書評〜