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小5に薦めたい〜辻村美月『かがみの孤城』感想書評〜

原恵一がアニメ映画の監督をしてたので「気になるな〜」と思いつつスルーしてた作品。最近、家の近所の図書館が「駅直結になり蔵書数大幅増」という激進化を遂げたので借りて読んでみた。

ああ〜〜〜〜〜懐かし良い!
「学校に行きたいけど行けない子どもたちが鏡の向こうの城に招待される」という王道直球の思春期ファンタジーストーリーが直球エンタメで素晴らしい。なんか『虹色ほたる』にも通じる直球さ。これは思春期の時に読んだら、家の鏡という鏡を毎日凝視していただろうな〜。

思春期の少年少女が不思議な世界に迷い込む、という設定はむちゃくちゃベタだ。作中で言及されていた『ナルニア国物語』もそうだし、自分の世代で言えば『ブレイブストーリー』や『デジモンアドベンチャー』『映画ドラえもん』なんかもそうだ。ただ、それらで起きるのは必ず冒険であり、国や世界の危機を子どもたちが救っていくような物語だ。『かがみの孤城』では子どもたちは探検しない。鍵探しという謎解きに挑みつつも、基本的には7人が遊んだり話したり交流したりするだけ。辻村美月特有の人間心理の観察眼が発揮される構成だと思う。

惚れっぽいウレシノにつきまとわれて迷惑に思ったりそれを理由に軽んじた結果彼がキレたり、クラスメイトの女子生徒が恋愛絡みで因縁をつけてきた挙句被害者面したり、中学生特有のイザコザの解像度がめちゃくちゃ高いので、読んでいてあの頃の気持ちをなんとなく思い出す。世界が学校と家しか無かった頃。クラスの中の見えない権力と、それを握ったらやりたい放題も許されるような理不尽な力学。その中で、学校へ通うことができない登場人物たちの「助け合える」という希望の光が輝かしく思える。ぜひ当事者である小学生や中学生に読んでもらいたいと思った。

前半は少し読んでてトラウマ描写がしんどいが、7人が全員同じ中学校の生徒であることが明かされる中盤からは全てノンストップで展開されていくのも読んでて気持ちいい。ただ傷を舐め合うだけの友達ではなく、力を合わせて現実に立ち向かえる仲間であることを気づいた時から、物語が一気に駆動していく。そこからの伏線回収と謎解きはただただ気持ちよく、パズルのピースがぴったりハマっていく爽快感もあった。

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