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実質キングスマン〜J・S・スコット『フランス人は10着しか服を持たない』感想書評〜

「普段なら買わない本を図書館で借りて読もう」のうちの一冊。今から10年前の2014年に刊行された、80万部超えのベストセラーだ。
もともとはジェニファー・L・スコットが2008年から執筆したブログ記事だ。

原題『Lessons from Madame Chic』のとおり、著者がパリへ留学した際のホストファミリーのマダム・シックから教わった様々な生き方の作法を紹介している本。ぶっちゃけ邦題は意訳しすぎというか、宣伝手法として振り切りすぎな気はする。読めばわかるがマジで10着しか持っていないという訳ではない。でも本は売れたので勝てば官軍である。

本著は16のチャプターに分かれ、それぞれがシックな生き方のコツを紹介している。とはいえ、「間食しないと次の食事が楽しみになって心から食べることを楽しむことができる」とか、人によっては「それ当たり前では?」となるものも多い。
邦題も「着ない服を買ってタンスのこやしにするより、本当に気に入った10セットを大切にしなさい」という意味以外の何者でもない。
他にも
・身体を動かしなさい
・自分のファッションスタイルを見つけなさい
・身だしなみはきちんとしなさい
・量より質にこだわりなさい
・教養を磨きなさい
などなど、言われれば「そりゃそうですよね」となるものばかりだ。

じゃあそんな当たり前の教訓ばかりの本書の魅力が何かというと、典型的なカリフォルニアガールだった著者が、フランスの伝統的なマダムに出会い、そのシックな(まさにchicは仏語で「品のある」意味)生き方や振る舞い方に感銘を受ける様子そのものである。「イマドキの若者が、自分とはタイプの違う人生の師と出会い、感化されていく物語」という王道なストーリーなのだ。
カリフォルニアに行ったことも出身の方に会ったこともないが、ケイティ・ペリーのMVをなんとなくイメージする。活動的で消費社会的で流行に敏感。そんな女の子が、真逆のような人生を送るマダムから教訓を得るのがギャップがあって面白い。文章の語り口もガールなので軽く、スラスラ読めるのも良い。

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