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【#54】サターンか、プレステか。どっちを買った?

平成。

それは「ポケットビスケッツ」がミリオンを達成するような時代。
この小説は、当時の事件・流行・ゲームを振り返りながら進む。

主人公・半蔵はんぞうは、7人の女性との出会いを通して成長する。
中学生になった半蔵が大地讃頌を歌うとき、何かが起こる!?

この記事は、連載小説『1986年生まれの僕が大地讃頌を歌うとき』の一編です。

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1997年(平成9年)7月27日【日】
 半蔵はんぞう  11歳  小学校(5年生)


 『サターンか、プレステか』

 1995年の年末に発売された当時、4~5万という衝撃的な価格だった“次世代ゲーム機”は、値下がっていた。

 2万円前後で買えるようになっていたのである。

【※】
 セガサターンは、1996年3月22日に20,000円になった。
 プレイステーションは、1996年6月22日発売に19,800円になった。

 
 しかし、僕ら小学生に両方買うことはできない。

 そこで、次の問題が生じるのである。

 

 『サターンか、プレステか』


 多くの友人が悩み、学校で議論を重ねていた。

 

 しかし、僕に迷いはなかった。

 

「コレください」

 

 僕はレジに箱を置いた。

 値下げと共にデザインも新しくなった、セガサターンである。


 



「きみ、サターン買うの?プレステじゃなくていいの?」

 

 大学生くらいの店員さんが、片方の眉を吊り上げて聞いてくる。

 買う前にこんなことを聞かれるなんて初めてだった。

 

「プレステはドラクエの続編も出るって話だから、将来性があるよ」

 

【※】
 (今はどうか知らないが)昔はゲームショップに知識が豊富な店員がいた。
 そのような店員は、聞いてもいないのに必要以上の情報をくれるのでありがたかった。インターネットが未発達だった時代、貴重な情報源だったのだ。

 

 セガ好きの僕がセガサターンを選ぶことは、当然のことだった。

 水が上から下に流れるように、これはもう“決まっている”ことなのだ。

 

「セガサターンがいいんです。あと、このソフトもください」



『天地を喰らうⅡ 赤壁の戦い』か・・・・・・このゲームの価値がわかる君ながら、セガサターンを買っても大丈夫だろう」


 

 お母さんにお金を払ってもらい、僕は軽い足取りでお店を後にした。

 ジャスコの中にあるこの大型ショップは、ゲーム・本・音楽CDが一体となって売られている。

 お客さんは誰もが笑顔で、好き好きに商品を手に取っていた。

 

『♪MajiでKoiしちゃいそうな 約束の5秒前』

 

 最近よく聴く曲が流れているが、曲名はわからない。

 

【※】
 1997年4月15日に発売された、広末涼子の1作目のシングル『MajiでKoiする5秒前』のこと。
 60万枚を超えるヒットとなった。


 雑誌コーナーの前を通ると、『ジャンプ』が並んでいた。

 表紙には、麦わら帽子をかぶったキャラクターが描かれている。

 

(新連載のマンガかな?)



 

【※】
 『ONE PIECE』のルフィ。『ONE PIECE』は、1997年7月22日から連載が始まった。

 

 少し気になったが、今は一刻も早くセガサターンをやりたい。
 思いっ切り夏休みを楽しもう。

 お母さんを置いていかないぎりぎりの速度で、早歩きする。

 

「げ」

 

 なぜここで会ってしまうのか・・・・・・

 ショップの入り口で偶然会ったのは、愛川さんだった。

 

「『げ』って何ですか?」

 

 白いワンピースを着た愛川さんが、にらんでくる。

 

「いや、何でもない。愛川さんもゲームを買いに来たの?」

「ち、ちがいます。私は映画を観に来たんですよ。『コナン』の映画です」

 

【※】
 『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』のこと。1997年4月19日に公開された劇場版『名探偵コナン』シリーズの第1作目である。

 キャッチコピーは「真実はいつもひとつ!」。

 

愛川さんは、僕が抱えているセガサターンの箱を見つめている。

 

「男子って、ほんっとゲームが好きですね・・・・・・」

「人の勝手だろ?」

 

 それに、僕はゲームばかりやっているわけではない。

 月に1,2回の休息日以外はスポ少のサッカーをしている。

 

「そうかもしれませんね。では、また学校で」

 

5年生になって約四か月。
愛川さんの男子嫌いを思い知っていた。


先週は掃除の時間にホウキで『牙突』の練習をしていたら、スネを蹴られた。


イイケンなんて、ミニ四駆を学校に持ってきたことを先生に報告され、『シャイニングスコーピオン』を没収されていた。

 

(夏休み明け、また顔を合わせるのか・・・・・・)


 

いや、今考えても仕方がない。

 

僕はお母さんの車に乗り込むと、すぐに『天地を喰らう』の説明書を取り出した。


ゲームを買った帰り、車の中で説明書を読むのがたまらなく好きだった。

 

(つづく)

次の話→

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見出し画像は『天地を喰らう2 赤壁の戦い』(CAPCOM)です。
出典:youtube(天地を喰らう2  関羽 ノーミスクリア (最高難度設定、攻略解説付き) 配信者:赤座クリスティ / ChristieTheRedさん

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