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「レバニラ」という名前にモヤシは納得しているのか?

「ハムエッグ」は誠実だ。


"ハム”も”玉子エッグ”もお互いを尊敬しているので、料理名は平等に名乗っている。




一方・・・・・・



「レバニラ」は不正をしている。



「レバニラ」の根幹をなすのは、たしかにレバーとニラだ。
だが、ほぼ間違いなくモヤシ・・・も使われている。

しかし、その「レバニラ」という名称には「モヤシ」という名前は一切入っていない。




中華料理店において人々はぶっきらぼうに、

「レバニラっ」

と注文する。


店の方も、

「レバニラ一丁!!」

なんて答える。


厨房のオヤジが振っている鉄鍋の中では、次のような会話がおこなわれているに違いない。

レバー「モヤシみたいな雑魚は、すっこんでろ」
ニラ「てめぇなんて、かさ増し要員なんだよっ」
モヤシ「ひぃぃぃっ」


鍋の中で会話する野菜たち


こんなの、おっかしいだろ・・・・・・!

モヤシが可哀想だ;


というわけで今回のお題。



【お願い】2024年1月12日追記

「俺は『ニラレバ』と呼んでいるぞ!」という方もいらっしゃるでしょうが、今回は「レバニラ」に統一しました。(どちらかに統一する必要があったので)
ご理解ください。

料理名のつけかた3パターン


そもそも、料理名はどのようにつけられるのか。
3つに分類してみた。


①自営業タイプ


「自営業タイプ」の定義は、

特定の食材が1種類だけ・・・・・使われる

というものである。

鶏肉の唐揚げは、鶏肉が単体で使われる。

玉子焼きも、ネギや明太子などが紛れ込むこともあるが、それらはあくまで補助。
メインは玉子だ。

⭕長所⭕
自営業だけに、事業主(鶏肉など)単体の努力を旨味に直接反映できる。
職場での人間関係に悩むこともない。


❌短所❌
一方、働き手が自分一人しかいないので、体調不良などを起こした場合は業績悪化に直結してしまう。

⏹️向いている性格⏹️
責任感が強い食材。
手を抜けば、すぐにバレる。


②二人三脚タイプ


「二人三脚」タイプの定義は、

特定の食材が2種類だけ・・・・・使われる

というものだ。

「たまごかけごはん」なら、玉子と白いゴハンの2種類だけが使われる。食材を2つ組み合わせることで、おいしさを引き立てあうことができる。


たまに無性に食べたくなるぜ


⭕長所⭕
平等に名前を表しているので、食材たちも納得できる。
食べる側も「これが使われているんだな」とハッキリ認識できる。(アレルギーの面で重要)

❌短所❌
相手に依存している、とも言える。
単体では力を発揮するのが難しい。


⏹️向いている性格⏹️
相手を尊重しつつも、自分の個性をしっかりと主張できる食材。



③チームプレータイプ


カレーは、

◆肉
◆たまねぎ
◆にんじん
◆カレー粉

などが、力を合わせることでできる。
(じゃがいもは皮むきがメンドクセーので我が家では使いません!😅)


しかし、カレーという名称には食材名が一切入っていない・・・・・・・・


全員が主張を控えることで、みんなが納得しているのだ。
まさにチームプレーである。


⭕長所⭕
複数の食材が集まることで無限の可能性が広がる。
日本人が好きな「寿司」「カレー」「ラーメン」などには多くの食材が必要。

料理名には、食材と関係ないものが使われるため、食材同士が喧嘩になることもない。


❌短所❌
”組織の歯車”となりがちな食材がいる。

⏹️向いている性格⏹️
「一人はみんなのために」を実践できるもの。



権力集中タイプ


しかし、上記3つの分類に当てはまらないものもある。

ひとつの食材が独裁政権・・・・をしき、不当に利益を得ているタイプだ。


たとえば、麻婆豆腐。キミのことだ。



麻婆豆腐は、豆腐屋と肉屋に間に住んでいた女性が作った料理である。
「豆腐」と「ひき肉」は不可欠だ。

しかし、料理名に「肉」という字はない。



お察しのとおり、レバニラも”権力集中タイプ”である。
レバーとニラの連立政権により、モヤシの発言力は封印されている。


↑どう見てもモヤシは最前列で活躍している



たまに”レバニラモヤシ炒め”と称されることもあるが、”レバニラ”に比べれば圧倒的に少数だ。

なぜモヤシは料理名から”追放”されたのか。


麻婆豆腐の場合は、「肉」の字が省かれ「豆腐が」メインとなるのはまだ理解できる。
豆腐が占める量が多く、見た目からして”豆腐”という感じがするからだ。



一方レバニラは、レバー・ニラ・モヤシの容量はどれも同じくらい・・・・・・だろう?




なんなら、


「ウチのはモヤシが一番多いです」


という店もある。



このような扱いを受け、モヤシに不満はないのだろうか?


モヤシの無念は、私が晴らす。


そう誓って県立図書館で調べても「なぜレバニラには”モヤシ”の名前が入っていないのか」はわからなかった。


文献は豊富に揃っているが・・・・・・


途方に暮れる日々――

モヤシのことで頭がいっぱいで仕事は手につかず、上司から叱責されることもしばしば(嘘です)。





しかし、

答えは自宅にあった。



ある時、何気なく自宅の本棚を眺めていた時のことだ。

一冊の本が目に留まる。


自宅の本棚



↓コチラの本!!


福永 雅文
『【新版】ランチェスター戦略 「弱者逆転」の法則』
日本実業出版社
2018/3/29



「ランチェスター戦略」とは、


弱い立場にある側が強者にどのようにして挑むかを考えた弱者の戦略

のことだ。

もともとは軍事に使われていたが、今ではマーケティングの場で使われている。


この本の表紙をめくると、

『【新版】ランチェスター戦略 「弱者逆転」の法則』
表紙を開いたところ


と書いてあるではないか。

モヤシは書店でこの本を手に取り、


と思ったことだろう。

モヤシはレバーとニラが寝静まった深夜、この本を読みふけったに違いない。


そして次の文章に釘付けになる。

■弱者の基本戦略=差別化戦略

(中略)

弱者は武器性能を上げることが至上命題です。 武器性能を上げることをビジネスでは差別化と言い換えました。独自性や質の優位性です。差別化こそが弱者の生き残る道です。

福永 雅文
『【新版】ランチェスター戦略 「弱者逆転」の法則』
p85
日本実業出版社
2018/3/29



「差別化戦略」。
こちらの本では例として「朝専用コーヒー」が紹介されている。

アサヒ飲料は「朝専用」として「ワンダ・モーニングショット」を発売した。


下の方を見ると「徹底的に!」と書いてあるほどの力の入れよう


「朝専用では昼や夜に売れないからダメなんじゃない?」


と思うのが普通であろう。
が、20代~40代のビジネスパーソンが「朝、”気づけ”のようにコーヒーを飲む」場面を狙い撃ちしたことで大ヒットした。
「朝専用」にしたことで、総合な売上は伸びたのだ。


これが差別化である。


モヤシは、考えた。

「自分にできる”差別化”はなんだろう・・・・・・」



そこで思いつく。

「僕、名前を捨てよう・・・・・・・



名前を捨てることはカンタンにできない。

社会生活において、自分の間違えられたら不快になるし、忘れられたら悲しくなる。


また、病院では「〇〇クリニック」など自分の名前を冠することが多い。


名前とは尊厳・・・・・・なのだ。



モヤシはそれを捨てた。
生き残るために。



名前を捨てる利点とは何か?


それには、

という特性が関係している。

たとえば、

といった具合だ。

例はいくらでも挙げられる。

◆朝の練習→朝練(あ/さ/れ/ん)
◆連続ドラマ→連ドラ(れ/ん/ど/ら)
◆大学卒業→大卒(だ/い/そ/つ)
◆産業廃棄物→産廃(さ/ん/ぱ/い)
◆早期割引→早割(は/や/わ/り)


日本語は略される時、4音になりがち――。

料理名もこの”宿命”から逃れることはできない。

◆さばの味噌煮→さば味噌
◆うなぎどんぶり→うなどん
◆イカの天ぷら→イカ天
◆ツナマヨネーズ→ツナマヨ
◆豚キムチ→豚キム


だから、「レバニラモヤシ炒め」では不都合なのだ。

「レバニラ」の方がスッキリするのだ。



ピーク時における中華料理屋の厨房を想像していただきたい。
目も回るほど忙しいはずだ。



忙しい中華料理屋において、

「レバニラモヤシ炒めっ」

なんて言っていたら、情報の伝達に手間と時間がかかる。




しかし、

「レバニラっ」

なら、円滑にコミュニケーションが取れる。



自ら進んで名前を捨てたモヤシのことは、すぐに料理界に広まった。


「モヤシは、安いしおいしいうえに、自己主張をしないらしいぞ」

と食材の間で評判になったに違いない。

その結果、モヤシは数々の料理で”採用”され、今日も市場に出回っている。


モヤシの「差別化戦略」は成功したのだ。



というわけで答え。



そんな「モヤシ」にも、憧れの人・・・・がいる。

それは・・・・・・


のり弁。


「のり弁」は、白身魚フライや、ちくわの磯辺揚げといった”揚げ物スター”が堂々と鎮座している。
が、名前には、どう考えても脇役の”のり”だけが採用されている。


”のり”は、江戸時代(”のり”の養殖が確立)からオニギリを支えている。
決して出しゃばることなく、淡々と黙々と仕事をこなしてきた。


その実績が認められ、”のり弁”という見事な名前が採用されたのだ(知らんけど)。


がんばれモヤシ。
君もいつかきっと主役になれる日が来る――。

(了)


自分の考えが100%正しいとは思っていません。
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