三村おにぎり

主に旅行記/きっとこれから楽しいこといっぱい起こるよ

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最近の記事

記憶のなかの台湾旅〜虹色のおじいちゃんに会う〜

※これは2019年に一か月かけてゆっくり台湾を一周したひとり旅を振り返ったエッセイです。 台湾バスの恐怖体験  台中に来たら必ず行きたかったところに「彩虹眷村」が一番にあげられる。ガイドブックによるとその小さな集落は家の壁一面に鮮やかなイラストが所狭しと描かれていて、それが傍から見ると虹色の村に見える為、「レインボーヴィレッジ」とも呼ばれているそうだ。そんなの気になりすぎる。  ただそのスポットはややアクセスが悪く、台中駅から鉄道で隣の駅へ行き、そこからまたバスを乗り継

    • 記憶のなかの台湾旅〜タピオカの創始店に行く〜

      ※これは2019年に一か月かけてゆっくり台湾を一周したひとり旅を振り返ったエッセイです。 台湾第三の都市、台中  新竹から更に鉄道で南に下って、台湾第三の都市と言われる台中駅へやってきた。台中は日本で言うと京都的な立ち位置で、なるほど駅の建物も京都駅を思わせるようなハイカラで近代的な雰囲気だ。  町中も都会ではあるのだがどこか台北とは異なる地方都市らしい独特の空気感がある。(新竹も地方ではあるのだが、台北が近いせいか町の雰囲気の違いみたいなものは薄かった)それなりの規模

      • 記憶のなかの台湾旅〜新竹を歩く〜

        ※これは2019年に一か月かけてゆっくり台湾を一周したひとり旅を振り返ったエッセイです。 屋台村の中の寺院  夕飯を食べる為に、新竹の中で一番有名な屋台村に足を運んだ。観光地の筈なのに入口がまるでわかりづらく、何度も同じタピオカ屋の前を行ったり来たりする羽目になる。  やっと見つけた入口は、なんとも狭くて薄暗いシャッター街が奥まで続いており、人の気配も無く、なんとも怪しいな雰囲気だ。本当にこんなところが観光地なのだろうかと疑わしく思う。しかしながらこの手の怪しい暗い路地

        • 記憶のなかの台湾旅〜台湾の鉄道に乗る〜

          ※これは2019年に一か月かけてゆっくり台湾を一周したひとり旅を振り返ったエッセイです。 台湾の鉄道に乗る  台湾に来て四日目の朝、重い腰を上げてついに三日間拠点としていた宿をチェックアウトした。宿という拠点を失うと、なんだか足場を失ったようで急に不安になってくるものの、次の宿は昨日の夜にアプリで予約してある。今日は台北を出て南下する。次の町へ移るのだ。  台湾の鉄道には台北内に張り巡らされた地下鉄とはまた別に、台湾を大きく海沿いに一周する台湾鉄道が走っている。今回の旅

        記憶のなかの台湾旅〜虹色のおじいちゃんに会う〜

          記憶のなかの台湾旅〜台北植物園と屋台メシ〜

          ※これは2019年に一か月かけてゆっくり台湾を一周したひとり旅を振り返ったエッセイです。 まるでジャングル、台北植物園  珍袖博物館に行ってからというもの、私は「園」や「館」といった名前が入ったスポットに異様に信頼を置くようになっていた。何も観光ルートを考えていない旅人にとって、何も準備せずに見るだけで楽しめるようになっている施設は時間つぶしにとても重宝する。そしてその考えはこの旅の終盤まで継続するのだった。  台北植物園にしてもそうだ。以前ツイッターで見かけて気になっ

          記憶のなかの台湾旅〜台北植物園と屋台メシ〜

          記憶のなかの台湾旅〜台北散策〜

          ※これは2019年に一か月かけてゆっくり台湾を一周したひとり旅を振り返ったエッセイです。 ひそかな名所?珍袖博物館  台湾到着の翌日の朝、宿の近くのカフェでサンドイッチを食べながら、これからどこへ行こうかとグーグルマップを見ていると、宿から歩いて十分ぐらいのところに何やら博物館があるのを偶然発見した。  その名も珍袖博物館、変な名前だ。ガイドブックにも一切載っていない。調べてみるとミニチュアやドールハウスを集めた世界でも珍しい博物館らしい。両親の次にシルバニアファミリーに育

          記憶のなかの台湾旅〜台北散策〜

          記憶のなかの台湾旅〜出発〜

          ※これは2019年に一か月かけてゆっくり台湾を一周したひとり旅を振り返ったエッセイです。 ぐだぐだな旅の始まり  あ~やっちまったな。  私は空港にてこの旅最初のため息を漏らした。  というのも、航空券の予約時にケチって荷物の預け入れをしない方を選択していたのだが、私のスーツケースは機内持ち込みの許容重量の十キロを軽くオーバーしていたのだ。スタッフのお姉さんは「向こうでお土産を買ってこれ以上重くしないでくださいね」と釘を刺しながら見逃してくれたものの、一か月も異国でぶ

          記憶のなかの台湾旅〜出発〜

          記憶のなかの台湾旅~はじめに~

           2019年の五月末、知人の間でゴミ会社と悪名高い職場をついに退職した。  ここのゴミ会社、有給日数が当初言われていた時と条件が違っていたり、希望していた退職日から二か月も延長させられたりと、まあ最後の最後まで散々だったのだが、これで晴れて自由の身だ。  自由な身になったらやりたいことがそれはもう沢山あったのだが、常にリストの一番上にあったのは「長期間の海外旅行」だった。一体どれぐらいの日数が長期間にあたるのかは人の感性それぞれのような気がするが、私はそれをとりあえず三十

          記憶のなかの台湾旅~はじめに~

          ひとり旅をするおたく~伊豆大島一周編~#完

          (十四)  元町港には十三時頃に戻って来ることができた。  目星をつけていたガイドブックにも載っている人気の寿司屋は、昼過ぎにも関わらず人でいっぱいだった。店先から伸びている列に十分程並んでから店内に入る。ここでも店内の席は客でいっぱいのようで、テラス席に案内をされた。  二階のテラス席からは港の海が見渡せて気持ちがいい。注文を済ませて潮風を楽しんでいたところ、どこからか視線を感じる。視線の出所を探るとテラス席の向いの席に座っている女性と目が合った。偶然にも偶然、それは昨

          ひとり旅をするおたく~伊豆大島一周編~#完

          ひとり旅をするおたく~伊豆大島一周編~#6

          二日目 (十二)  その晩、カプセル内が暑かったのでパンツ一丁で寝ていたら、ホテルの人に「ここで裸で寝るのは神様に失礼だから死刑にあたる罪です」と恐ろしい宣告を受けた。当たり前だが夢だった。  そんな夢から覚めると時刻は既に九時をまわっている。今日の十五時の船便で帰るから九時にはホテルを出てまた少し観光するつもりだったのに。  今日の目標は島の名物のべっこう丼を食べること、と決めていた。昨日の夜食べ損ねてしまったからだ。その土地の名産品を食べないのは旅の醍醐味をスルーし

          ひとり旅をするおたく~伊豆大島一周編~#6

          ひとり旅をするおたく~伊豆大島一周編~#5

          (十)  時刻は夕方、ホテルのチェックイン時間までまだ少し時間があったので、サイクリングでかいた汗を流そうと港からそう離れていない露天温泉に行くことにした。  観光案内所から聞いた情報だと、おみやげ屋でチケットを買うとわずかながら安いとのことだったので、港の目の前のおみやげ屋に寄って「浜の湯のチケットひとつください」と言った。 「はいはいチケットね」とおばさんは慣れた様子でコピー用紙を切ったような簡素な手作りのチケットを渡してくる。値段は百五十円。破格のお値段であるように思

          ひとり旅をするおたく~伊豆大島一周編~#5

          ひとり旅をするおたく~伊豆大島一周編~#4

          (八)  再び来た道を戻り、一周道路に戻ってきた。おじさんの車からは、山の坂を上がりきったあたりで降ろしてもらった。 「後は大方下りだから、自転車で降りていったら気持ちいいと思うよ。あと半分ぐらいがんばってね」  おじさんはそう言って手を振って道の先へと消えていった。再び山道に一人取り残されて一瞬心細くなるが、それもすぐに吹き飛んだ。なんだか大地から壮大なパワーを貰えた気分だ。私は再び自転車のペダルに足をかけた。  平坦な道を少しだけ進むと、確かにだんだんと下り坂になって

          ひとり旅をするおたく~伊豆大島一周編~#4

          ひとり旅をするおたく~伊豆大島一周編~#3

          (六)  大島公園から出発してわずか三十分足らず。  私は自転車を押しながら息切れをしつつ山道を歩いていた。  目の前には森、そして坂だ。山の中にゆるい坂道が果てしなく続いている。少し平坦になったかと思えば気づいたらまた坂になって、進んでいるような気が永遠にしない。山なのだから坂があるのは当たり前なのだけれど地形そのものを呪いたくなってくる。もはやギアを一番軽いものにしても、体力的に自転車に跨ってぺダルを漕ぐのは不可能に近かったので、僅かな平坦な道を自転車に乗って進み、坂は

          ひとり旅をするおたく~伊豆大島一周編~#3

          ひとり旅をするおたく~伊豆大島一周編~#2

          (四)  自転車天国の伊豆大島には、大島一周道路というものがある。途中で山も通るものの、基本的には島の外側をなぞったわかりやすい海沿いの道路だ。景色もいいのでチャリダー達には好評のようだ。  その道にそって最初は町の中を走りながら、どんどん町から離れて山の方へ近づいていく。ぺダルを漕いで島の風を浴びているうちに不安な気持ちはどんどん消えていった。それは故郷の埼玉にはない潮風を感じるからか、道路脇に当たり前のように植えてあるハイビスカスの花が南国の雰囲気が気分を盛り上げてく

          ひとり旅をするおたく~伊豆大島一周編~#2

          ひとり旅をするおたく~伊豆大島一周編~#1

          一日目 (一)  私にとってのはじめての一人旅は、意外なことに東京都内である。東京都、しかしながら船で五時間ほど揺られないと辿りつくことのできない東京都である。  あれは前の職場で働いていた頃、私は何を思ったか普段運動もまともにしないというのに「自転車で何処かを一周したい!」と唐突に決意した。    その時確か石田ゆうすけさん著の「行かずに死ねるか!」という地球を自転車で一周するというトンデモエッセイ(これが本当に面白いので是非読んでみて下さい。旅行記の傑作です)を読ん

          ひとり旅をするおたく~伊豆大島一周編~#1

          ひとり旅をするおたく~伊豆大島一周編~プロローグ

          ※本作は以前コミティアにて発行した旅行エッセイの再録です。 平成最後の夏、何を思ったか私は「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」にドハマりしていた。  周囲のオタクがアイドルだのラップだのに萌えを見いだしている中、私一人だけが路線バスの旅に「燃え」を見いだしていたのだ。滑稽きわまり無い。  まったくテレビを見ない人の為に説明すると、「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」とは、俳優の太川陽介さんと漫画家の蝦子能収さんとそのゲストの女性タレント(通称マドンナ)が三泊四日かけて路線バスだけ

          ひとり旅をするおたく~伊豆大島一周編~プロローグ