見出し画像

記憶のなかの台湾旅~はじめに~


 2019年の五月末、知人の間でゴミ会社と悪名高い職場をついに退職した。

 ここのゴミ会社、有給日数が当初言われていた時と条件が違っていたり、希望していた退職日から二か月も延長させられたりと、まあ最後の最後まで散々だったのだが、これで晴れて自由の身だ。

 自由な身になったらやりたいことがそれはもう沢山あったのだが、常にリストの一番上にあったのは「長期間の海外旅行」だった。一体どれぐらいの日数が長期間にあたるのかは人の感性それぞれのような気がするが、私はそれをとりあえず三十日(一か月)とすることに決めた。三十日もあったらいよいよ「旅行」ではなく「旅」っぽくなる気がするからだ。

 更に、先の予定というものをガチガチに決めたくなかったので、宿は予約せずに現地で状況を見てネットで探すことに決めた。
 ぼんやりとしたルートは頭に入れつつも何処に何泊滞在するかはその時になって決める。気に入った都市があれば予定よりも長く滞在するのもよし、見どころが少ないと感じれば早めに別の町に移ってもよし。先の予定を決めないで自由気ままに移動する。どうだろう、これだけでかなり「旅」っぽくなったのではないだろうか。

 行く先を台湾に選んだのは、海外の一人旅として一番手っ取り早く難易度が低い気がしたからだ。
 治安もよく、基本的には親日で知られており、物価が安くてメシが美味い。飛行機で三時間程と距離も近く、インフラも一通り整っており、中国語は一切わからないものの日本人たるもの漢字は読めるので、標識などある程度の意味は理解することが出来る。(行ってみてわかったがここの利便性は結構大きかった。特に食べ物に関しては)
 それに台北のみだが台湾には以前一回行ったことがあったので、他の国に対して身構えみたいなものが少なかったというのもあるかもしれない。あと九州とほぼ同じ大きさというサイズ感もいい。鉄道で一周出来るのもわかりやすくていい。

 とにかく台湾は女一人で旅をする上で色々と好都合だったのだ。台湾に行った旅人たちが口を揃えて「台湾はいいよ」とお薦めしてくるのですっかりその気になってしまったのもある。一か月もかけてゆっくり一周したのなら、首都の台北では見えない本当の台湾というものが見えてくるに違いない。私は張り切ってガイドブックを三冊も買い込み、意気揚々と日本脱出の準備に明け暮れるのだった。

日記(出発前日)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?