記憶のなかの台湾旅〜タピオカの創始店に行く〜
※これは2019年に一か月かけてゆっくり台湾を一周したひとり旅を振り返ったエッセイです。
台湾第三の都市、台中
新竹から更に鉄道で南に下って、台湾第三の都市と言われる台中駅へやってきた。台中は日本で言うと京都的な立ち位置で、なるほど駅の建物も京都駅を思わせるようなハイカラで近代的な雰囲気だ。
町中も都会ではあるのだがどこか台北とは異なる地方都市らしい独特の空気感がある。(新竹も地方ではあるのだが、台北が近いせいか町の雰囲気の違いみたいなものは薄かった)それなりの規模の街では三泊はしようと思っていたのでこの台中の町も、駅から近くのゲストハウスを拠点とする。七階ほどの高いビルがそのまま大きなカプセルホテルのようになっている。設備も新しく綺麗好きな日本人でも抵抗感なく泊まれそうな宿だ。
〇綺麗で新しい、談話室が一番上の階にあって窓からの景色がいい
×シャワーの数が少ない、同じ部屋になった大陸からの旅行客のおばさんの話し声がうるさかった(これはホテルのせいではない)
荷物を整理して少し休んだ後、ホテルから歩いて十五分ほどの大きなショッピングモールへ行き、そこの回転寿司屋に入った。台湾でも寿司は人気の料理で、店には行列が出来ており、機械から出てくる番号待ちのシートをもらって少しばかりその場で待機する。
店内は日本同様にレールの上を寿司が流れていて、皿を客が取って食べるシステムだ。私が座ったのは真ん中付近の席なのだが、当然、人気のネタはレールの前の方の席の客に取られて、売れ残りの不人気のカッパ巻きの亜種みたいなものだけが流れてくる。それも、レールの内側に職人がいないので注文もできない。一応テーブルの脇に注文用の紙みたいなのがあり、店員を呼べば好きなものも頼むことが出来そうだったが、中国語がわからないので注文もできない。
そして肝心の寿司の味だが、寿司の断片を拾い集めたような曖昧な印象だ…。ご飯が酢飯ではないところがより「なんか違う感」に拍車をかけている。
寿司の完成度はともかくそのショッピングモールにはユニクロや無印などの馴染みのあるショップも数多く入っており便利だったので、少なくなってきた化粧水などを買い足して、コンビニでビールと菓子を買って帰路についた。
台中街歩き、タピオカのふるさと
台中には台北のように地下鉄が発展しておらず、街中の移動はすべてバスで行う。そのせいか、移動の難易度が格段に上がり、観光に行くのも緊張感が漂う。というのも台湾のバスは日本のように電光掲示板のような目的地を記すものは車内には無く、またアナウンスもない為「スマホのグーグルマップとにらめっこして、目的地に近づいたら降車ボタンを押す」という原始的な方法を繰り返していた。(のちに慣れてきたころには便利なバスのアプリを駆使して一通り乗りこなすことはできるようにはなった)
そんなこともあって、台中市内で有名な身長が三十三メートル大仏様のいる宝覚禅寺や、植物園のある国立博物館をまわってみたり街歩きしたのだが、どうも楽しみきれずに気疲れしてしまった。
一旦ホテルに戻って休み、夕方から歩いて行ける宮原眼科というお土産屋さんに遊びに行った。ここのお店、眼科という名前なのだが、病院ではなくとってもおしゃれな人気お菓子屋さん。店内はまるでハリーポッターの世界のようにファンタスティックで見ているだけで楽しい。しかし私は飛行機の重量オーバーの件でお土産には手を出せずにグッバイ。
気持ちを切り替えて元祖タピオカの生みの親である春水堂へと足を運んだ。
日本で空前のブームを巻き起こしたタピオカが台湾出身なのは有名な話だが、更にその始まりは台中の町からだったということはあまり知られていない。(ただこれは諸説あるらしい)
タピオカミルクティーを生んだ春水堂創業店は今でも多くの客が訪れており、たくさんの観光客で店内は賑わっていた。点心などの軽食も用意されているようだったがここはあえてタピオカミルクティーだけを楽しむことにする。
そのお味はほんのりと上品な甘さで、台湾によくある暴力的な甘さはあまり無かった。タピオカも小ぶりで弾力がしっかりしている。たくさんの派生のある中の唯一無二の原点らしい、王者の余裕を感じられる美味しさだった。タピオカミルクティーとは、日本の若者が好む「可愛さ」とか、「インスタ映え」とかそういった率直的なものとは本来全然別のところにあるグルメなのかもしれない。
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