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#エッセイ
【202310(14)+X】 ”おとな”の居場所
そう、マスターは言っていた。
話の脈略をたどると、それは友人に向けて放たれた文言だったのだけれど、そのフレーズはじんわり、ぽつーんと、たしかに私の胸にも光をともしてくれたのだった。
たったひと晩のできごとが、
今でも忘れられない。
*
▼ 1軒目
「おっす~!」
1年弱会っていないことがまるでウソみたいに、親友との再会はいつもどうりの軽やかな挨拶ではじまった。
進学・就職のために若くし
福岡から遠く離れたこの街で、待ちに待った瞬間を迎えた日
ずっと、ずっと待っていた。
シーズンが始まった3月から、今に至るまで。
ずっと、ずっとこの日を夢見ていた。
途中、「もう今シーズンは見られないのかな……」と悲しい気持ちになっては「いや、まだ分かんないよね」と首を横に振り続けた。
気持ちだけではどうにもならない悔しさは、私も知っている。だからこそ、懸命にバットを振ってもフライに倒れる彼の打球を見ては、「悔しかねー、拓也ぁー」と呟きながら試合の行