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行き先が決まらない旅④(うつつ世編)
電車の窓は開いていないのに、
さらさらと風が吹き抜けた。
季節外れの春うららな日の光に、
わたしは気持ちよくうつらうつらしていた。
電車の小気味いい揺れは心地よく。
冷房とは違う、さっぱりとした適温に包まれて。
ふと隣の席に気配を感じて薄目を開けた。
衣服がふわっとわたしに触れたのだ。
それは薄いブルーの透けた生地。振袖の端で。
男性だと思った。
そして隣の席に、誰かが座った重みを感じて、
行き先が決まらない旅①(旅行記編)
【着地点】 JR岡山駅
2022年6月2日 20時半頃
わたしは新神戸から新幹線にのり、
岡山の地に降り立った。
本当は今日から5連休だった。
でも、取引先が今日がいいというから。
絶対に進めたい案件だったから。
午前中は仕事をして。
そして、逃げ出さんばかりに、
岡山までやってきた。
疲れていたから。
せっかく、のぞみ号の指定席で切符を買ったのに、
ひかり号に乗るという痛恨のミスで、