妄想の中で、魂だけ参戦する術を身につけた。

この感覚が久しぶりだった。
わたしは今、ドームに立っている。

開演時間までは、まだ余裕がある。
密を避けるための入場規制があるため
以前よりも随分早くに入場しているのだった。

あ、ドームに立っている、なんて書いたら
まるでステージ側に立っている人みたいだ。

もちろん、観客として
彼らのファンとしてこのドームに戻ってきたのだ。

参戦前の腹ごしらえ、と行きたかったのに
わたしの食欲はゼロだった。

自分たちは、ただ見るだけなのに…
なぜこんなにも緊張しているのだろう。

いや、食欲がないのは緊張ではないかもしれない。
新幹線の中で、サンドイッチとおにぎりの両方を食べたから…ということも否めなかった。
テンション上がりすぎてドーナツまで買っていたけど、さすがにそれは食べられなかった。

最寄りの駅に到着してすぐに、あのおっきなドームが迎えてくれたのだった。
まるくてかわいい、そうそう、この感じ。

今回、物販に並ぶのはやめた。
理由はただひとつ。暑いから。

夏のわたしは、とにかく機能しない。
ただの太めの棒のようだ。
それも、極太の。

熱中症で倒れて今日このライブが見られない、なんてことが起こればとんでもない。
自分を一生恨むことになるから。

グッズを今日販売開始するなんて、初日に参戦するわたしたちにはちょっといけずなんじゃないですか?

まぁ、そんなのどっちだっていい。
あとでオンラインで買えばいいだけの話。
最初から現地で買うつもりはなかったから
前回のライブグッズを持参した。

それでいい。
ここにいられるだけで、丸儲け。

入場する前に、久々にInstagramの友達とも会えた。
一回しか会ったことがない上に、お互いにマスク姿。
DMで連絡を取りながら、目印は頭の上のぬいぐるみだった。

会えた時にはお互いに探り合いのようで。
彼女だと分かった時にはハグしたいくらいうれしかったけど、それはさすがにまだ我慢。

久しぶり!と言って、お互いに涙目でエルボータッチをした。
お互いに力が入りすぎて、電流が流れてちょっと痛かった。
うれしかったから、そのビリビリも仕方がない。

マスクが足りなくなった時に、多めにあるからとわざわざ宅急便で送ってくれた彼女に
やっと直接お礼が言えた。

最後に行ったライブが2020年の2月初旬。
日本にも、未知のウィルスとやらがもうすでに入ってきていたから

あの日のわたしは
「これが最後かもしれない」と
彼の姿をこの目に焼き付けていたのだった。

ここまでの間、何度かオンラインライブもあった。
離れていてもここで繋がってるぜと、画面越しに目があった時
色々な感情が爆発して泣いた。

オンラインの時も、繋がっていると感じた。
それよりもっと今日、彼らと繋がることが出来た。

そうだ、思い出した。
ドームにしばらく立っていると
ふくらはぎが痛くなる。
でもこの感覚もなんだか心地よい。

最後かもしれないと感じたあの日、ライブが始まる前に大きな虹を見た。
そんな繋がりかはわからないけれど
今日、虹の日でもある7月16日に
この場所に戻ってこられたことがとてもうれしい。

本当だったら、昨年の6月に会えたはずだから、会いたい気持ちはもう1年以上寝かせてきた。

ここにいる人みんなが特別な思いを持った今回のライブ。

定刻通りに暗転し、オープニングの影像が流れてくるやいなや
あちこちから、鼻をすする音が聞こえる。
わたしだって例に漏れず、涙と鼻水でぐしょぐしょになっていた。

顔面が崩壊していたところを
マスクがカバーしてくれていたので
あぁ、マスクのある生活も悪くないなぁと再確認出来た。

歓声は出せない分、拍手もしたし
もげるほど手を振った。

今、絶対わたしをみて笑ってくれたよね?

思いが通じた瞬間だった。

たっぷり2時間強のライブ時間。

ネタバレになるといけないから、詳細は控えておくけれど
「とにかく濃ゆい」そんなライブだった。

推しに相応しい人間でありたいと、ダイエットや美容に力を入れていた時に聴いていた曲が、今日は1番グッときたかもしれない。

退場規制の中、隣の人と少し会話をして、
とってもいいライブでしたね、とそんな言葉にまた泣いた。

コンビニでお酒でも買って、ホテルに帰ろう。

コロナが落ち着いたら、またいつもの居酒屋で打ち上げのポテトを食べられることを楽しみにしながら

今日は、あの部屋でゆっくりしよう。

明日は観光せずに新幹線に乗る。
せめて、おみやげくらいは沢山ゲットしたい。
そしてテイクアウトで、いつものご当地グルメも忘れずに。


なんてことを、家のソファーの上でずーっと考えていました。

え?
ライブ?

行ってません。
魂だけ遠征していました。

ホテル?
泊まっていませんよ、家にいます。

だから、ネタバレはナシです。
だってただの妄想だもん。

わたしの想像力だけで、チューハイが2本空きました。
おつまみは、ハニーバターアーモンド。

チューハイには全然合ってない感じです。

いつかね、きっと現実になる日が来るのかな。
来るよね。

その日を楽しみに、わたしは明日も全力で生きるのです。
目標があれば、そこにまっすぐ向かうだけ。


力がみなぎってきました。

いつも、生きる活力をありがとうの気持ち。

どうか最後まで、怪我もコロナも無縁なライブで駆け抜けてください。

ライブがある日は、遠くから妄想しています。

優しくそっと背中を押していただけたら、歩んできた道がムダじゃなかったことを再確認できます。頂いたサポートは、文字にして大切にnoteの中に綴ってゆきたいと思っております。