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最初から決まっている

 コンテストで審査員を務めた人が、大賞取る人はもう決まっているのでと聞いたとか、出た人が優勝する子はもう決まっているのだけどね、と言われたというのをネット記事で見ると、どこでもそういう感じなのかと思う。
 学校やクラブ、チーム、団体、仕事など、集団になると「学級委員」「キャプテン」といった役を選ぶことがある。これには自分で立候補することもできるが、他人から推薦されることもある。そのほかに、何かに表彰されるのに選ばれることもある。絵や作文だったり、学業、運動などで優秀と思われる成績を残していると分かる人が選ばれると思っているので、その後も何かの代表に選ばれるというと、優秀な人と感じていた。だが、それ以外の理由もあるのだなと分かるようになってきた。
 子供が小学校のころ入っていたスポーツチームでの出来事だった。地区内で各チームから数人代表になる選手を選び、地区代表としてのチームを作る。そのチームで市外、県外のチームと戦う、という事を行なっていた。
 その選考テストの日。テストが始まるまでの空き時間があった。テストをする人もいたが、何か呼ばれたのか、場を離れた。テーブルの上に資料が置かれたままで、子供は興味があって見に行ったのだという。それは、参加者の名簿だった。すると、名前の横にマル、バツが書かれていることに気付いたのだという。同じチームの子は全員来ているし、出欠の印ではなさそうだ。そして、まだ選考のためのテストは何も行われていない。バツが付いていた子は、チームに入ったのが遅くて試合には出られない子だった。子供はそのことを、その日帰ってから教えてくれた。
 あの印は監督が書いたのだと子供は言った。最初からそのつもりならテストしなくていいのに、と思ったとも言った。その話を聞いた人は、技術がそれほど高くない子が選ばれたら、他のチームの指導者たちに笑われるから選ばせたくないんだろうと話していた。同じチームの親だった。私の子供にはバツは付いていなかったが、この話は誰にも言ってないと、分かっているよという風に話していた。
 こんな事を、小学校のうちから知る。頑張ったら報われると信じる子も、そう教える親もいるのに、つらいことと思う。
 ところで、私が勤める会社でも、常にそのようなことが起こっている。誰かを昇進させる。ボーナスを増やしてあげたい。それは仕事の出来や仕事への態度などで決めているのではない。気に入っている人を優遇する。お気に入りでないと、仕事で優秀な成績を残しても何もしない。見ても見ないふり。ミスがあると、お気に入りはかばったり知らないふりなのに、そうでない人だと猛攻撃。毎年、優秀な社員を何人か選んで表彰する式もあるが、これは成績というより、選びたくない人、選んでもいい人が決まっていて、それに沿って選んでいるのだ。例えば成績が同じくらいの2人がいる場合、評価したい人の選ぶ理由を作るため、片方の社員に時間のかかる仕事をさせるとか、逆に仕事量が少なくなるように考えて仕事をさせる。そして、二人を比べたらこちらの方が優秀という理由を作り上げる。年数の長い社員は気づいているのだが、誰も異論を唱えない。言っても無駄なのだ。
 選ばれない人というのは、それでも居続けた方がいいのか。それとも場所を変えた方がよいのか。選ぶ人間が変わることもあるだろうが、そういう体質の会社が丸ごと変わることはないだろう。

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