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怪人二十面相の大久保

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「怪人二十面相」に描かれた大久保
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#新宿区

少年探偵団、大久保に誕生す

少年探偵団、大久保に誕生す

◆少年探偵団誕生

 怪人二十面相と長きにわたる闘いを繰り広げてきた少年探偵団。その誕生を描いているのが、昭和11年発表のシリーズ第一作「怪人二十面相」だ。

 少年探偵団を結成したのは、明智小五郎でも小林少年でもない。羽柴壮二君という小学生である。実業界の大立者・羽柴壮太郎氏が所有するロマノフ家の宝冠を見事に盗み出して逃走しようとする二十面相に罠をしかけたのが、次男の壮二君。ところが、これに激怒

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怪人二十面相と小林少年が見た戸山ヶ原     ①戸山ヶ原とは何か

怪人二十面相と小林少年が見た戸山ヶ原     ①戸山ヶ原とは何か

 怪人二十面相は、戸山ヶ原にアジトを持っていた。
 
 この事実は、少年探偵団シリーズの記念すべき第一作にして、シリーズ最高傑作である「怪人二十面相」にはっきりと記されている。

 戸山ヶ原とは何か。
 戸山ヶ原とは、新大久保駅と高田馬場駅との間、山手線をはさんで東西に拡がっていた広大な野原である。東側というのは、現在の大久保三丁目であり、西側というのは、現在の百人町三丁目・四丁目だ。東側には、戸

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怪人二十面相と小林少年が見た戸山ヶ原       ②怪人二十面相の戸山ヶ原

怪人二十面相と小林少年が見た戸山ヶ原       ②怪人二十面相の戸山ヶ原

 「車のとまったところは、戸山ヶ原の入り口でした。老人はそこで車をおりて、まっくらな原っぱをよぼよぼと歩いていきます。さては、賊の巣くつは戸山ヶ原にあったのです。
 原っぱのいっぽうのはずれ、こんもりとした杉林の中に、ポッツリと、一軒の古い洋館が建っています。荒れはてて住みてもないような建物です。老人は、その洋館の戸口を、トントントンと三つたたいて、少し間をおいて、トントンと二つたたきました。」(

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怪人二十面相と小林少年が見た戸山ヶ原    ③小林少年が見た戸山ヶ原

怪人二十面相と小林少年が見た戸山ヶ原    ③小林少年が見た戸山ヶ原

 「窓の外は荒れはてた庭になっていて草や木がしげり、そのずっと向こうにいけがきがあって、いけがきの外は道路もない広っぱです。その広っぱへ、子どもでも遊びに来るのを待って、救いをもとめれば、もとめられるのですが、そこまで声がとどくかどうかも、うたがわしいほどです。
 それに、そんな大きなさけび声をたてたのでは、広っぱの人に聞こえるよりも先に、二十面相に聞かれてしまいます。いけない、いけない、そんな危

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怪人二十面相と小林少年が見た戸山ヶ原      ④その後の戸山ヶ原

怪人二十面相と小林少年が見た戸山ヶ原      ④その後の戸山ヶ原

 二十面相が戸山ヶ原にアジトを構えていた頃、日本は、東京オリンピック招致に向けて動き出していた。開催予定は昭和15年。そして、昭和7年、正式に立候補を果たすと、昭和10年のロサンゼルスでのIOC総会で、ついに東京オリンピックの開催が決定された。
さらには、昭和11年というから、奇しくも、「怪人二十面相」が発表された年、戸山ヶ原の屋内射撃場がオリンピックの射撃競技に使われることが決まった。「大人

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