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宮本武蔵はこう戦った

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己を信じろ!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

己を信じろ!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

佐々木小次郎は、武蔵が自分の間合いに入る紙一重の時に、頭上に振りかぶっている備前長光を振り下ろした。

一拍子といえども、ほんの僅かながら時間がかかる。

しかし、武蔵は燕よりも遅い。

突進してきている武蔵ほどの速さであれば、切先が武蔵の頭上に達する時には間合いを一寸五分ほど超えており、充分に斬ることが出来る。

小次郎は充分に確信を持って斬り下ろした。

切先は見事に、下げている武蔵の頭上を捉

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武蔵が斬られた!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

武蔵が斬られた!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

全力で砂の上を走る。

見る間に小次郎に迫る。

小次郎の顔が眼前に立ちはだかる。

どうした!

小次郎は、微動だにしない。

小次郎の太刀は大上段、頭上のまま。

動かない。

燕返しの前触れである横に払う太刀の動きがない。

なぜだ?

相手の間合いに入る寸前。そこで躊躇は出来ぬ。

勢いのまま、前に出る。

目の前が小次郎の顔で一杯になった。

ハッ!

頭上に、稲妻。

斬られる!

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秘剣 つばめ返し!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

おもむろに、佐々木小次郎は背負っている刀を下から前に回し、鐺で大店の軒先にある燕の巣をはたき落した。

白っぽい土煙をたてながら、巣は地面に落ちた。

砕けた。

砕けた中に、何やら黒く動くものが、五つ六つ混じっていた。

それは、よく見ると、子燕であった。

まだ飛ぶことも出来ない子燕は、歩くこともやっとのことで、一つに集まって、唯か弱く泣くばかりであった。

小次郎は、落とした巣には一瞥もくれ

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異形のサムライ(小説『宮本武蔵はこう戦った』より)

異形のサムライ(小説『宮本武蔵はこう戦った』より)

父、無二斎より、小倉藩の権力争いのごたごたを収める意味も含めて、「佐々木小次郎」なる剣術師範と試合をしてくれと懇願された時も、さほど気にも留めていなかった。

政治ににかかわる垢じみた剣術家など、いつものように一蹴してやればよいと思っていた。

しかし、見てしまった。

佐々木小次郎の使う剣を。

その存在自体を見てしまった。

それは、今までに見たことのない存在。

自分の範疇の中に入らない存在

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本能には勝てない!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

本能には勝てない!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

「恐ろしい」

武蔵は、全身が強張って身動きが出来なくなってしまった。

小次郎は、目の前で見た「つばめ返し」の技を私との試合に使うに違いない。

彼は、私の太刀よりはるかに長い太刀で、遠い間合いから攻撃をしかけてくる。

相手が、遠い距離から仕掛けてこられると、こちらでは、明らかに届かないと分かっていても、今までに経験したことのない長さの太刀であることが頭に刷り込まれているので体が勝手に反応して

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武蔵、斬られる!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

武蔵、斬られる!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

 小次郎は武蔵が自分の間合いに入る紙一重の時に、頭上に振りかぶっている長光を振り下ろした。一拍子といえども、ほんの僅かながら時間がかかる、突進してきている武蔵の速さであれば、切先が武蔵の頭上に達する時には間合いを一寸五分ほど超えており、充分に斬ることが出来る。

 小次郎は充分に確信を持って斬り下ろした。切先は見事に、下げている武蔵の頭上を捉えた。あとは長光の思うがままに任せておけばよかった。いつ

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武蔵の読みと誤算(『宮本武蔵はこう戦った』より)

武蔵の読みと誤算(『宮本武蔵はこう戦った』より)

 二人の距離が、三間を切った。

 ここまで入ると、小次郎の初太刀が来るはずだ。左から右にかけて顔の前を初太刀が横切る、あの燕返しの前触れが来る。しかし、それに惑わされてはいけない。間髪入れずに、次の太刀が来るからだ。初太刀に反応して、脇構えから木刀を上げてしまうと、右胴はがら空きになってしまう。そこを小次郎は、すかさず次の太刀で、難なく右胴に切り付ける。それ故、小次郎の初太刀には反応してはいけな

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