【地域おこし協力隊サポーターズ鹿児島 錦江町地域おこし協力隊OB 山中陽 】
『地域おこし協力隊サポーターズ鹿児島』(以下:サポーターズ)について知ってもらうにあたり、昨年度はメンバーや活動紹介を毎月行ってきました。今年度からは現役の地域おこし協力隊(以下:協力隊)やOBOGの皆さんの背景にも迫っていきたいと思います。
第12弾の記事はこちら。
今回は錦江町地域おこし協力隊OBで、『株式会社燈』と『株式会社hinata』の代表を務める山中陽さんの想い(第1〜3章)について紹介していきます。
錦江町の未来を想う“人”に魅かれて
山中:僕は社会人になってから教員を2年、民間企業を2年経験しました。大学時代からずっと「生涯をかけてやりたいこと何なのか?」と考えていたのですが、民間企業を経験してもその答えが見つかりませんでした。
そんな時、高校時代の友人と飲む機会があり、それが転機になったんです。その友人は東日本大震災直後に気仙沼へ行き、現地で直面していた課題からNPO法人を立ち上げ、空き家ビジネスを始めていました。
そんな友人から「錦江町の空き家プロジェクトに関わるから、一度遊び来てみてよ!面白い人たちがたくさんいるから!」と誘ってもらい、錦江町へ遊びに行くことにしました。それが2019年1月下旬のことでした。
山中:ちょうど遊びに行った日はゲストハウスに改修予定の空き家に関するワークショップが開催されるタイミングでした。町役場の課長さん含めた職員や地域の皆さんなど20人程集まっていて、懇親会まで参加させてもらいました。
その時、純粋に「めちゃめちゃ面白そう」と感じたんです。何が面白かったかというと、その場にいた“人”でした。行政と地域が同じ目線で同じ方向を向いて話し合っている風景を見て、次第に心魅かれている自分がいました。
僕はそれまでゲストハウスに泊まったこともないですし、空き家に関する知識もありませんでした。でも、錦江町の未来を想う“人”たちが決め手になり、その年の4月には錦江町地域おこし協力隊として着任することになりました。
困ったときは素直に頼る
山中:協力隊になり、ゲストハウス開業に向けて空き家改修がスタートしました。しかし、工具の使い方や見積もりの基準など、わからないことが多くて…。そこが一番苦労しました。
ありがたいことに協力隊の担当職員だった方や地域の皆さんが伴走してくださったこともあり、何とかオープンを迎えることができました。おそらく、皆さんの伴走がなかったらもっと時間がかかっていたかもしれません。
さらに、作業を進めていく中で、一緒に汗をかき、食卓を囲んでコミュニケーションをとってきたからこそ、地域の皆さんと信頼関係を築けました。
ゲストハウスは“人と人とをつなぐ宿”をコンセプトに『よろっで』と名付け、今では宿泊の他にも、カフェやバー営業、イベント等の場所貸しもしていて、町内外問わず色々な方に足を運んでいただいています。
山中:錦江町の皆さんはとても優しいです。「困ったことがあったら頼れよ」と直接おっしゃってくださいます。ただ、僕は結構頼り下手なところがあって、心のどこかで「頼ったら負けだ」と思ってしまうこともあるんです。
1年目はゲストハウス、2年目はシェアハウスを始めるにあたり、まちの皆さんに助けていただきました。だからこそ「3年目に入っても頼り続けたままでいいのか?」と葛藤があって、そのバランスが難しかったです。なので、一時期は自力でできる部分は試行錯誤しながら作業を進めていきました。
それでも、「山中くん、もっと頼っていいんだよ」と温かい言葉を何度もいただいて…。そういった経緯もあり、困ったときは素直に頼ろうと今では意識するようにしています。
“三方良し”を目指す
山中:現在は個人の仕事とは別に錦江町の仲間たちと『株式会社燈』を立ち上げ、活動しています。何かをカタチにするにも一人ではうまくいきません。だからこそ、行政やまちの皆さんと連携し、楽しみながら“三方良し”を目指しています。
錦江町は高齢化率が高く、二人に一人は高齢者という状況です。幸い、“よろっで”は色々な人が遊びに来てくれる場所になっているので、皆さんと関係性を築きながら、どの世代もターゲットになる企画をつくっていきたいと思っています。
僕は協力隊(公的な立場)として移住してきたのでまちに溶け込みやすかったですが、違うカタチで移住された方も多いので、そのような方々も含め、まちと繋がって何かが生まれる事業を継続していきたいです。
山中:協力隊を経験し、任期後に事業を進めている僕だからこそ話せることはたくさんあります。例えば、任期中のお金の使い方や卒業後の生計の立て方など、聞きたくても聞きづらいこともある程度お答えできるかなと。どうしても協力隊の任期中って、卒業後のことが不安で色々気になると思うんです。
ありがたいことに今は何とか生き残っています。今年からは錦江町の協力隊制度の設計のサポートも進めていく予定で担当者や協力隊、OBOG、それぞれの気持ちがわかる自分だからこそのサポートや人繋ぎを少しずつカタチにしていこうと思います。
“よろっで”ではご飯を食べながらお話はできますし、僕自身も現役やOBOGの皆さんの話をお聞きしたいので、気軽に遊びにいらしてください。
(終わり)