岡崎琢磨

小説を書いているらしいです。https://note.mu/okazakitakuma…

岡崎琢磨

小説を書いているらしいです。https://note.mu/okazakitakuma/n/n329479b35ee7

最近の記事

地獄の2022年――消化器症状との壮絶な闘い

序文:これを書かずに1年を終われないタイトルのとおりである。 今年2022年、私の体調は控えめに言って地獄だった。 2014年、持病の過敏性腸症候群の悪化を理由に2ヶ月間仕事を休んだことがあったが、あの年よりもはるかにつらかったと言っていい。 何せ、最大で7kg体重が落ちた。 真剣に、重病が隠れているのではないかと疑ったほどだ。 結論から言うと、いまなお不調と闘っている。 ただ少なくとも、以前とそれほど変わらない日常を送ることができてはいるだけましだ。不安定なだけで、体調が

    • 『Outer Wilds』をクリアした:③本作の素晴らしかったところと『Echoes of the eye』の感想(ネタバレ有!!!)

      ①はこちら↓ ②はこちら↓ 重大な警告本記事は筆者にとって人生ベスト級の傑作ゲーム『Outer Wilds』について、ネタバレありで率直な感想を綴っています。 未プレーの方は必ずここで引き返してください。 さもなくば、例のアレを外したままタイムオーバーしちゃったときみたいな目に遭います(未プレーの人にはわからんて)。 もう一度繰り返す。 未プレーの方は、必ずここで引き返してください。 大丈夫ですね? それでは進もう。 序文:長い月日が経ってしまった見出しのとおりであ

      • 『Outer Wilds』をクリアした:②プレー中に感じた不満点(ネタバレ有!!!)

        ①はこちら↓ 重大な警告本記事は筆者にとって人生ベスト級の傑作ゲーム『Outer Wilds』について、ネタバレありで率直な感想を綴っています。 未プレーの方は必ずここで引き返してください。 さもなくば、例のアレを外したままタイムオーバーしちゃったときみたいな目に遭います(未プレーの人にはわからんて)。 もう一度繰り返す。 未プレーの方は、必ずここで引き返してください。 大丈夫ですね? それでは進もう。 序文:長所を言語化するのが難しいおかげさまで①の記事は、まずまず

        • 『Outer Wilds』をクリアした:①出会いとこれから始める人に向けて(ネタバレ無)

          序文結論から延べよう。 間違いなく、人生ベスト級の傑作ゲームであった。 アカデミー賞受賞、ゲーム版『星を継ぐもの』の評判は伊達じゃない。 人生ベストゲームは『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』と言い続けているライト~中級ゲーマーの私だが、『Outer Wilds』はBotWに過去もっとも肉薄したゲームと断言していい。クリア直後にこの記事を執筆している時点での感想として、総合ではやはりBotWに軍配が上がるものの、ある面では確実にBotWを凌いですらいた。 物語を紡ぐ者と

        地獄の2022年――消化器症状との壮絶な闘い

        • 『Outer Wilds』をクリアした:③本作の素晴らしかったところと『Echoes of the eye』の感想(ネタバレ有!!!)

        • 『Outer Wilds』をクリアした:②プレー中に感じた不満点(ネタバレ有!!!)

        • 『Outer Wilds』をクリアした:①出会いとこれから始める人に向けて(ネタバレ無)

          祖父のこと

          2019年1月に、僕はこんな記事を執筆した。 話題が個人的すぎて誰も読まないだろうと思っていたが、とある編集者さんからはあれを読んで泣いた、と言っていただいた。 それからおよそ2年半が経ち、2021年8月2日、この記事に出てくる祖父もとうとう亡くなった。教員として校長まで勤め上げ、さまざまな趣味を愛し、最後まで認知症にもならず、僕の新刊にも目を通してくれる、立派な人だった。 その日の朝、母が読売新聞に出た新刊『Butterfly World 最後の六日間』(双葉社)の広

          祖父のこと

          胆汁性下痢の話・その後

          以前、こんなエントリを書いた。 正直、思った以上に反響はなかったが、その後いくつかの動きがあったので、誰かの参考になればと思い、記すことにする。 1.胆汁性下痢疑いの方からDMをいただくnoteの記事を読んだ方から、ツイッターのほうにこんなDMをいただいた。 胆汁性下痢で検索してnoteも読ませていただきました。 私も原因不明の下痢で半年ほど悩まされており、症状的に胆汁性下痢を疑っているのですが近所の内科でそう伝えたところ「胆汁って…ww」といった反応で取り合ってもらえ

          胆汁性下痢の話・その後

          胆汁性下痢だと判明して衝撃を受けた話

          タイトルからもわかるとおり、汚い話題になることをお許しいただきたい。なお前半は僕の病歴の話になるので、胆汁性下痢について気になる方は後半の見出しまですっ飛ばしていただくことをおすすめします。 およそ10年前に始まった過敏性腸症候群との闘い 僕はもうかれこれ10年間、過敏性腸症候群(IBS)に悩まされてきた。 きっかけは大学を卒業して地元に帰り、友人と会う機会が減ったことだ。久々に先輩に誘われて飲みにいった日、お店に着く前に何度もトイレにいきたくなった。そのときはまだ、IB

          胆汁性下痢だと判明して衝撃を受けた話

          作家廃業を考えた僕を、ミステリが救ってくれた――『春待ち雑貨店 ぷらんたん』文庫化と『Butterfly World』連載完結

          2016年2月に、僕はこんなツイートをしている(元のRTはわからなかったのであしからず)。 当時、日常の謎ミステリを主戦場としていた僕にとって、これはたびたび頭を悩ませていた問題だった。日常に寄り添う小説としてのリアリティと、ミステリが宿命的に帯びる非日常性に、いつも板挟みになっているように感じていたのだ。 同時期、僕は新潮社yomyomにて『春待ち雑貨店 ぷらんたん』の連載をスタートさせた。この作品は、上記の問題に対する、僕なりのひとつの解だった。 ミステリ色を極力抑

          作家廃業を考えた僕を、ミステリが救ってくれた――『春待ち雑貨店 ぷらんたん』文庫化と『Butterfly World』連載完結

          ツイッターのTLを見なくなったことによるメリット・デメリット

          以前、こんな記事を書いた。 冒頭で報告しているとおり、5月の終わりごろからツイッターのタイムラインをほぼ見なくなった。理由は上記の記事に書いてある。 で、あれから半年が経ったいまでも、TLを見ずに過ごしている。いや、かたくなに一瞥もくれないわけではなく、自分のツイートは続けているからツイッターのページやアプリを開くときは開くし、通知は確認しているし、たまにはTLを見ることもあるのだが、TLに流れてくるすべてのツイートをチェックする習慣は完全になくなった。 それまでは、自

          ツイッターのTLを見なくなったことによるメリット・デメリット

          ある編集者の話

          今年の5月に発売された連城三紀彦『運命の八分休符』(創元推理文庫)の解説の中で、僕は次のようなエピソードを記した。 二〇一四年二月、当時福岡で作家活動をしていた私は、打ち合わせを兼ねて上京した際にお会いした東京創元社の同い年の編集者から、一冊の文庫本を渡された。 「これ、岡崎さんに読んでほしいんです」 この文庫とは、連城三紀彦『恋文』(新潮文庫)だった。連城作品との出会いを綴ったエピソードで、僕の小説観に多大な影響を与えた出来事だった、と認識している。 その、僕と同い年

          ある編集者の話

          ルッキズムと身体醜形障害の話――『Butterfly World』連載開始に寄せて

          8/27発売の双葉社「小説推理」誌上にて、長編連載『Butterfly World』がスタートした。長い時間をかけて準備し、第二稿までを書き上げて臨むもので、とても思い入れの強い作品だ。連載をしっかり走り切り、満を持して単行本の刊行を迎えたい。 ところで、告知のツイートの中に「ルッキズムがテーマのひとつ」と記した。この点について、少し補足しておきたい。 『Butterfly World』は蝶の翅を持つ人型のアバターを操作するVR空間《Butterfly World》で起き

          ルッキズムと身体醜形障害の話――『Butterfly World』連載開始に寄せて

          夢と種明かし

          怖い夢を見た。 友人と異国を旅していて、地下格闘技場にたどり着いた。一般人でも自由に参戦でき、勝てば賞金がもらえるという。体格のいい友人が意気揚々と参戦を決め、本番までのあいだ、僕らは別の試合を観戦することにした。 二人の挑戦者が現れ、プラスチック製のように見受けられる、白くて大きな箱の中に入った。やがて試合開始のゴングが鳴らされるが、箱の中は見えない。格闘技なのに闘いの模様が見られないなんて変だな、と思っていると、やがて箱の中からひとりの挑戦者が姿を見せた。 彼は手に

          夢と種明かし

          新刊が出ない

          ツイッターでも何度か触れたが、2020年は単著の新刊が出ない。2012年にデビューして以来、コンスタントに新刊を世に送り出してきたので、こんな年は初めてである。 と言うと、今年は充電期間なのだな、などと思われるかもしれないが決してそんなことはない。余裕があることは否定しないが、基本的にはスケジュールの都合である。その辺をもう少し詳しく説明したいと思う。 僕は作家としてとても恵まれた環境にある。 デビュー作がヒットした結果、それまでフリーターの底辺に過ぎなかった僕が、たく

          新刊が出ない

          近況について

          5月の終わりごろから、ツイッターのTLをほぼ見なくなってしまった。 ということをわざわざツイッターで宣言するのは、どうも自意識過剰な気がして好きじゃないのだ。けど、相互フォローの作家さんの中には告知をRTし合う互助関係の方が少なからずいて、いまでも僕が告知のツイートをすると反応してくださるのに僕はお返しができないので、その点は大変申し訳なく感じている。この記事を見てくださった方、僕の告知は今後どうぞお気になさらないでください。 新型コロナウイルスの流行以降、ツイッターを見

          近況について

          ショートショート『外出自粛の恋人』

           二〇二〇年四月七日、新型コロナウイルスの国内感染者数増加にともない、東京都を含む全国七都府県に緊急事態宣言が発令された。住民は不要不急の外出の自粛を強く要請され、可能な限り自宅にて過ごすことを余儀なくされた。  人との接触を減らすしかないぶん、ネットを通じて映像通話のできるアプリを使ったコミュニケーション、いわゆるオンライン飲みやオンラインデートは急増した。これは、そのような状況下で交際を続ける、一組のカップルの記録である。 「……これでいいのかな」 「おーい。やっほー」

          ショートショート『外出自粛の恋人』

          幻について

          以前、知人からとある女性を紹介されたが、うまくいかなかった。彼女とは二度会っただけで、その後も僕からは何度か連絡をしたが、最終的には向こうがそれを無視したと記憶している。 僕はべつだん傷つきもしなかった。女性はとても美しく、僕は少なからず魅力を感じていたものの、高嶺の花という印象が強く、彼女と付き合えるビジョンが浮かばなかった。連絡が返ってこなくなっても「まあ、そんなものか」と思い、深追いしようともしなかった。 今日、彼女を紹介してくれた知人と久しぶりに会った。僕らがうま

          幻について