『Outer Wilds』をクリアした:①出会いとこれから始める人に向けて(ネタバレ無)
序文
結論から延べよう。
間違いなく、人生ベスト級の傑作ゲームであった。
アカデミー賞受賞、ゲーム版『星を継ぐもの』の評判は伊達じゃない。
人生ベストゲームは『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』と言い続けているライト~中級ゲーマーの私だが、『Outer Wilds』はBotWに過去もっとも肉薄したゲームと断言していい。クリア直後にこの記事を執筆している時点での感想として、総合ではやはりBotWに軍配が上がるものの、ある面では確実にBotWを凌いですらいた。
物語を紡ぐ者として(念のため、私の本業は小説家である)、「終わったあとにあれこれ語りたくなるのはいい作品の証」という持論があるのだが、『Outer Wilds』はまさしくそんな類の作品である。これまで、プレーしたゲームの感想をざっくばらんにstand fmで配信することはあったが、noteに記事を書こうと決めたのは初めてだ。
それほどまでに、誰かに語りたくて、布教したくて仕方がない。ウズウズが収まらず、ほかの方の感想ブログなどを読みながら、自分も筆を執ったしだいである(1円にもならない文章のために)。
というわけで、『Outer Wilds』について好き勝手に語っていこう。
そもそも、『Outer Wilds』との邂逅
1年と少し前になるだろうか、初めてPCにSteamをインストールした。いったんゲームをやり出すと膨大な時間を費やしてしまう性分なので、存在は知りながらも手を出すのを控えていたのだが、ついに、である。
それまで現行のハードはNintendo Switchしか所有していなかったものの、Wii U期には無名のインディーゲームをダウンロードして遊びまくっていた時代もあったので(『運命の洞窟 THE CAVE』は名作!)、Steamでもネットの情報をもとに数々のインディーゲームを買いあさった。『THE WITNESS』などの傑作にも出会えた。
そんな中で、インディーゲームの名作として必ずと言っていいほど名前が挙がっていたのが本作『Outer Wilds』である。
紹介に軽く目を通して、難解そうなのとボリュームがありそうなので何度か二の足を踏みながらも、最終的に避けては通れないだろうと思い、購入した。2021年4月のことだ。
ところが、である。
当時使用していたPC(Surface Book)は、当然ながらSteamを導入する前提ではなかったので、ほかのゲームはともかく『Outer Wilds』はスペックの面で厳しかった。Switchのプロコンをつないでプレーを始めるも、おかしなことが起きるのがバグなのか仕様なのかさえわからず、どうにか別の惑星には一度だけたどり着けたものの、コントローラが誤作動を起こしてまともにプレーできないというのを三度ほど繰り返したとき、私はあきらめた。
――いまはまだ、このゲームをプレーすべきときではない、と。
それから一年。購入当初から不具合の多かったSurface Bookがとうとう充電できなくなったので、念願のゲーミングPCを導入した私は、喜び勇んでSteamをインストールした。まともに動かなかったり、時間がなかったり、単純につまらなかったりで、いわゆる積みゲーはけっこうな数になっており、仕事の一段落と体調不良が重なったのを機に、私はそれらを消化し始めた。(Steamではないが、EPICにて無料で仕入れていた『PINE』はBotWの完全なる模倣でありながら、まずまずの良作だった)。
『Outer Wilds』は、その中でも最後のほうにリトライした作品だった。初回プレー時のわけのわからなさが強く印象に残っており、なかなか手を出す気になれなかったのだ。
初心者の心を挫く序盤の不親切さ
万に一つでも、この記事を読んで『Outer Wilds』に挑戦しようという人が現れたときのために、これだけは忠告しておく。
始めるにあたって、まず初心者向けの手引きをまとめたネットの記事に目を通したほうがいい。
ただし、ネタバレは厳禁!
「Outer Wilds 初心者」などのキーワードでググればそうしたページがヒットする。しかも、わらわら出てくる。なぜか。
それほどまでに、このゲームは初心者に不親切な設計になっているからだ。そしてまた、それらの記事を書いた誰しもが、その不親切さを乗り越えるだけの価値のあるゲームだと強く確信しているからでもある。
(インディーゲームにおける導入の不親切さについては、『Outer Wilds』に限った話ではない。先述の『THE WITNESS』にしたって何の説明もなく始まるが、その後リメイク版『MYST』をプレーしたときはわけがわからなすぎて初めの何時間かは呆然とした。『MYST』と同じチームが制作したという『OBDUCTION』も同様に不親切すぎて手も足も出ず、いまだに積んである)
とはいえ、初心者向けの手引きだけで情報量は膨大になるので、そのページを読み通すどころか、検索するのさえ億劫に感じる人は少なくないだろう。(かくいう私も、チェックしたのは「何をすべきゲームなのか」と「最初に見直すべき設定」「探査機の操作方法」の3項目だけだ)
なので、ここでは簡潔に、もっとも重要と思われる情報を厳選し羅列しておこう。
●どういうゲームなの?
オープン“スペース(宇宙)”アクションアドベンチャー。謎解き要素多め、アクション要素は少々(だが、その少々が往々にして厄介)。
●ストーリーは?
星系滅亡間際の22分間をループしながら、さまざまな謎を解き明かすべく宇宙を探検する話。詳しくはストアページを見るなどしてほしい。
●対応プラットフォームは?
2022年7月現在、SteamのほかにEPIC、PS4、Xbox Oneに対応している。同年9月15日にはPS5とXbox Series X/Sでも発売予定とのこと。なお、Switch版は一度2021年夏発売予定とリリースされたが、その後は発売延期が続いているらしい。
●PC版でもコントローラを使うべき?
公式がコントローラ使用を推奨している。OP画面を見れば一目瞭然。
●ネタバレ厳禁なのは、ストーリーを知ってしまったらつまらないから?
この質問には、YESと答える人もいるだろうが、私個人の回答としてはNOだ(比較対象として、『Ever17』や『Undertale』について同じ質問を受ければ迷うことなくYESと答える)。
むろん、ストーリーというかバックグラウンドも面白くはあるのだが、問題はそこではない。
探索することで行ける場所が増え、同時にストーリーが浮かび上がってくるという唯一無二の体験を、不可逆的に損ねるからだ。
ネタバレありきでこのゲームをプレーしてしまうと、徹頭徹尾単なる作業に終始する。そして作業として見た場合、このゲームはほんのわずかの楽しさと引き換えに、甚大な苦痛を強いられるものとなる。
●クリア時間は?
私はノーヒントで36時間だった。無駄にした時間は多かったものの、解けない人には一生解けなそうな謎も中にはあったので、30~40時間というのが一つの目安になりそうだ。
ただし、ファンサイトのアンケートによればノーヒントでクリアしたプレーヤーは2割を切るらしい。
●難易度は?
かなり難しい。特に謎解き部分が。
私は謎解きが大好きで、謎解きにはわりかし強いほうだと思うが、それでも数えきれないくらい多くの場所でつまずいた。
ただし、解けてしまうと「なんでこんなこともわからなかったのか」と感じるものが多く(中には理不尽なものもあったが)、最終的には攻略サイトなしで自力クリアを達成したので、主観では謎解き部分の難易度設定については「絶妙」「最適」という評価である。
●何をすべきゲームなの?
探査機に乗り込むことができたら、機内の航行記録をチェックしよう。この航行記録を埋めていくことがゲームの基本線になる。一にも二にも航行記録、行き詰まったらそのつど航行記録を隅から隅まで読み込むべし。ゲームに必要な情報は(ほぼ)すべて航行記録に書いてある。ので極論、途中で発見する文章の多くは読み飛ばしてしまっても構わない(とはいえ、丁寧に読んだほうがよりスムーズに進行できるうえにストーリーも満喫できるのは言わずもがな)。
●最初は何をすればいい?
設定を見直そう(ここは初心者向けページを参考にした)。視点感度を下げるのと、表示中の時間停止の有効は必須。ジェットパックブーストモードも自動推奨。
ゲームが始まったら、まずは村をひととおり探索しよう。探査機が使えるようになったら、あとは好きに宇宙を飛び回ればいい。探索を進めるうちに、航行記録はおのずと埋まっていく。
●チュートリアルはないの?
ないこともない。村で起きるイベントや村内にあるさまざまな施設は、その後の探検において必須となる基礎知識を与えてくれる。
……のだが、実は私にはこのチュートリアルがほとんど役に立たなかった。どういった場面で必要になる知識なのか、ゲームを始めたばかりでは皆目見当がつかないからだ。
あなたもそのように感じるかもしれない。だが、できればチュートリアルを頭に叩き込んでから探査機に乗り込んだほうがいい。ここで得られる知識を正しく理解しているかどうかが、いくつかのポイントを通過するうえできわめて重要な意味を持ってくる。
●宇宙を飛び回るも何も、まともに操作すらできないんだけど……
わかる、わかる。正直、私もいまだに宇宙空間で探査機をうまく操れない。序盤はほかの惑星に探査機を故障させることなく着陸させられる気がまったくしなかったが、それでも何とかなった。習うより慣れろ、である。
そうは言っても、これは初心者のための記述なので、探査機について覚えるべき次の5種類の操作を記しておこう。参考までに、プロコンの操作を添えておく。
・上昇……ZR、下降……ZL
・前進、後退、旋回……Lスティック
・ロックオン……Lスティック押し込み
・自動操縦……十字キー上
・速度同調(惑星をはじめとする対象物の動きと探査機や主人公の動きを同調させるもので、相対的に静止状態にする。ほとんどの場合ブレーキとして使用できる)……A
このほかにも回転(L+Rスティックだっけ?)などもあるが、とりあえず操作に慣れるまでは上記5種類だけで充分。着陸モードというのもあるにはあるが、一度も必要性を感じなかったのにボタンの押し間違いで発動してしまうという厄介な機能。
宇宙服を着た主人公の操作も、自動操縦がない以外はおおむね同じ(Aは地面に足をつけた状態ではジャンプとして機能するが、ZRで代用できるのであまり使わないと思う)。
なお、探査機の自動操縦はあいだに障害物があると衝突してしまうので注意。あいだというのは画面上のあいだではなく航路のあいだなので、自動操縦にしていると急に画面外から太陽が現れて塵と消える、といった展開は初めのうちはよくある。
●行きたいのに行けない場所があるんだけど……
この星系内に存在する、ゲームクリアのために訪れる必要がある場所は、探査機に乗れるようになった段階ですべて物理的には到達することができる。
これはBotWに勝っていると感じた最大のポイントで、タイムループを繰り返しているために主人公が新たな能力を身に着けたり、探検の幅を広げる道具を手に入れたりといった展開が一切ない(唯一の例外と言っていいのが、一時停止メニューに追加されるアレ)。得られるのは、航行記録とプレーヤーの知識のみである。
これはストーリーを進める順番がプレーヤーに委ねられるオープンワールド型ゲームの完成形、究極形と言っていいのではないか。
正しい目的地であるにもかかわらずどうしても行けないなら、間違いなくあなたの得た情報やひらめきが不足している。ほかの場所を探索するなどして、行き方を学んでからリトライしよう。
●これ、ループの途中で中断して、そこから再開できないの?
できない。必ずループの頭から始まる。
●さっさと死んで次のループに行きたいんだけど……
一時停止メニューから「終了」→「探検を再開」してもいいのだが、実はこの手順を簡略化する方法を学ぶことができる。
何しろ正しいクリアの順番などないので、その方法を学ぶのが早くなるか遅くなるかは人によるとしか言えないのだが、学べるポイントに到達するのに特別な知識はいらないので、多くの人は比較的序盤で訪れることになるはずだ(なお悲劇的なことに、私はそのポイント自体には最初に到達していたが、肝心の方法を学んだのはだいぶ後半に差し掛かってからだった)。
さしあたり初心者向けの情報として思いつくのは、このくらいだろうか。また思いついたら追加します。
そのほかに訊きたいことがあればコメントやツイッター(@okazakitakuma)にて質問受け付けますのでどうぞご遠慮なく。
後半に続く
ここまで勢いで書き殴ってきたが、すでに4900字を超え、軽く原稿用紙12枚以上書いた計算になる(仕事ならウン万円……いや、何も言うまい)。
職業柄、文章をよく読むほうだと思うが、それでもnoteの長文記事を読み飛ばさなかったためしがないので、一本の記事にするにはこの長さが限界だろう。初心者向けのネタバレ無しの記事は分けたほうがいいと考えたことも、ここで切る理由の一つではある。
というわけで、まさかの連載形式になるが、次回はネタバレありの感想を綴っていく。飽きっぽい性分なので、できるだけ早く、この熱がさめないうちに。
(追記:作家仲間でありゲーマー仲間でもある伽古屋圭市氏の指摘を受け、初心者向け情報の項で質問事項を二つ追加した。併せて、より読みやすくなるよう体裁を整えた。)
(『Outer Wilds』をクリアした:②に続く)
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