もしYUIの「CHE.R.RY」が古典和歌だったら
平成の香りほのめく懐かしのヒット曲、YUIの「CHE.R.RY」。
この曲が世に出てきた頃、私は親にガラケーを買ってもらったばかりでした。
「指先で送るキミへのメッセージ♪」の部分を聴くと、流行りのギャル文字を駆使してメールを打っていた記憶が蘇ります…。笑
「CHE.R.RY」のテーマといえば、ずばりピュアな初恋。
今回はこのフレッシュなフルーツを思わせる、甘酸っぱい初恋の歌を和歌にしてみました。
なぜ“返事はすぐにしちゃダメ”?
このセオリー、確かに聞いたことあるようなないような…。
でも何ですぐに返事しちゃダメなんだろう??
恋愛のエキスパートでも何でもない私ですが、少し考えてみました。
恐らく、手に入れるのが困難なものほど余計に欲しくなる心理が、人間にはあるからではないでしょうか。
例えば数量限定のグッズや、期間限定のお菓子など…。
いつでも手に入る訳じゃないからこそ、つい買ってみたくなりませんか?
そして苦労して手に入れたときほど、愛着も生まれやすいものです。
きっと恋愛も同じで、好きだからといってすぐに返事をしてしまえば、簡単に手に入る“チョロい女”だと思われかねません。
とは言え、時間をあけすぎても関係が冷めてしまう。
つまり、自分の価値を上げつつも互いの恋心が冷めないような、適度なタイミングを見計らう“かけひき”が必要なのでしょう。
平安時代にもあった“恋のかけひき”
このような感覚は、現代に限らず平安時代にもあったようです。
見知らぬ男性から求愛の和歌を受け取ったときは、たとえ嬉しくても一度断るのが女性のたしなみ。
それでも男性側は諦めずアプローチし続け、最後には恋を実らせる。
そんな和歌のやり取りがたくさん残っているのです。
しかし「CHE.R.RY」のように、恋の予感にウキウキして、かけひきなんてとてもできない!と前のめりになってしまう平安貴族も少なからずいたのではないか…?
そんなことを想像しながら、和歌にしてみました。
「思ひ」と「火」の掛詞
第四句に使ったのは、「思ひ」という言葉。
これには「火」も掛かっており、その縁語として「燃ゆる」を置いています。
関連して、古今和歌集から同様の掛詞を使った和歌をご紹介。
叶わない恋の火よ、燃えるなら燃えてしまえ!どうせこの思いは神にだって消せやしないんだから。
…と、切なくも力強い一首です。
ちなみに富士山は、かつて火山活動が活発だったことから、上記のように燃え上がる恋の和歌でよく詠まれたのです。
「燃え」だけでなく「煙」も、「火」の縁語になっていますね。
人を好きになる気持ちは、誰にも止められるものではありません。
しかし人間には理性もあります。
意図せず芽生えてしまった恋心を、どう判断し対処するか。
そこにきっと経験の差が現れてくるのでしょうね…!
ひとたびは 逢ふをいなべと 聞くものを
燃ゆる思ひは しづめ難きや
※解説は冒頭のインスタ参照
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