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【2020年上半期】読んでよかった6冊の本

2020年も半分が過ぎた。今年は家にいることが多かったおかげか、例年よりもたくさんの本を読んだ。読むジャンルを広げることもできた。

いろいろ読んだ中でも、これは読んでよかった!と思える本を6冊選んでみたい。

流浪の月

2020年本屋大賞受賞作。また読みたい!という類の本ではない。けれど、読んでいる最中には感情をとんでもなく揺さぶられた。

両親をなくして居場所を失ってしまった少女が、ある日、一人の青年についていってしまう。彼の家は居心地がよくて素晴らしいのだけど、世間から青年は誘拐犯判定されてしまう…。

ここから物語の歯車がぐるぐるまわりはじめる。

一度、不条理のスパイラルにはまってしまうとなかなか抜け出せない。この作品の主人公達もそうだ。そんな中でもなんとか、自由を掴み取ろうともがき苦しむ。自由とは、愛とは、常識とは…。いろいろなこと考えさせられる作品だった。

【過去の書評記事】


めんどくさがりのきみのための文章教室

仕事で文書を書く機会はたくさんあるけれど、文章を書く機会はほとんどない。

noteで記事を投稿するようになって、文章を書くということについて考えるようになった。おそらく高校生の時くらいぶりだ。

事実が内容のベースとなる文書とは違って、文章は感情や思考を書くものだ。普段、ビジネス文書を書くことは多いけれど、当然感情を書くことはしない。

文書においては、内容が誤解なく正しく伝わることが正義とされている。一方で文章は想像力を膨らませて、いろんな解釈ができた方が面白いと言われる。つまり、全く正反対の性質を持っているのだ。

そして、僕には解釈の余地がある文を書く習慣がまったくなかった。だから、記事を書き始めた当初はとまどいがあった。自分の気持ちを書くということに肩ひじを張ってしまっていた。

しかしながら、本書を読んだことがキッカケで文章を書くということに対してリラックスした気持ちになれた。文章には、正解なんてない。もっと自由に書いていいんだ。そんなことを教えてくれた。


「言葉にできる」は武器になる。

この本も文章を書くときに参考になった。伝わる文章を書こうと思うと、どうしても文章のテクニックや表現方法の方に目がいく。

けれども、本当に大事なのは、自分が考えていること・伝えたいことの解像度を上げること。そこが、明瞭になっていれば、おのずと言葉も伝わりやすくなる。料理と同じで、素材がよければ仕上がりも美味しくなるのだ。

素材を磨くためにも、日々の生活の中で自分が考えていることをしっかりと拾い上げていく。そして、心の声に耳を澄ませる。

感情と思考を言葉にしよう、という気持ちを一層強くしてくれた。

【過去の書評記事】


Who You Are

チームの文化形成は、いま最も感心があるテーマの1つだ。

最近、自分が所属している組織の風土も変わってきている気がしている。なんというか生ぬるくなっているのだ。生ぬるいことは必ずしも悪いことではない。けれど、そこに物足りなさを感じているのも事実だ。

ついこの間、退職する人に「ここは学校みたい」と言われた。たしかにそんな感じかも、と思った。自分もそうは思っていたけれど、実際に言葉にされるとなんかグサっときてしまった。だからこそ、文化や風土をよくしていくにはどうすれば…という意識が生まれた。

本書は、組織の「文化」という捉えどころのないものを体系的に分析している。文化形成のためのアプローチのヒントがたくさん書かれていた。

1つの結論として、文化はメンバーの行動の積み重ねで形成されていくということだ。所属するメンバーの大半が同じ行動規範に基づいて行動するとき、それが文化になる。つまり、自分も所属している組織の文化形成の一部であり、人ごとではないのだ。

ひとつひとつの行動の積み重ねが文化になる。だからこそ、何を大事にしたいのかをはっきりさせ、細かな行動にもこだわっていなればならない。

まだ正解はわからないけれど、前に進むための道しるべになった。

【過去の書評記事】


オタク経済創世記

エンタメビジネスに関わる人みんなにオススメしたい本。

なぜ、日本ではマンガ・アニメ・ゲームがこれほどまで人気があるのか。いまや、これらのコンテンツは世界に誇る日本の文化になっている。ポケモン、マリオ、ドラゴンボール…キャラクターコンテンツが、これほどたくさん生み出される国は他にない。

面白いのが、これらのキャラクターコンテンツの周辺に経済圏が形成されていることだ。ポケモンというひとつのキャラクターに対して、アニメ・ゲーム・グッズ、おもちゃなど、さまざまなビジネスが展開されており、それぞれにファンコミュニティを形成されている。そして、これらのコミュニティはキャラクター経済圏と言ってもいいほどの規模感になっているのだ。

このようなキャラクター経済圏は、原作の土壌としてのマンガ、アニメ制作委員会、ライセンスアウトビジネスの商習慣など様々な要因が複合的に重なった結果、生まれてきたものなのだ。

このような歴史的経緯をふまえて、これからのエンタメビジネスはどうなっていくのかも考察している。かなりワクワクして読むことができた。

私の個人主義

夏目漱石のかつての講演を集めた文集である。小難しい漢字も多い文章なのだけど、内容に親近感を覚えたからか一気に読んだ。

本書には、全部で4つの講演がおさめられている。その中でも、タイトルにもなっている「私の個人主義」だけでも読む価値がある。

明治に生きた夏目漱石も現代のわれわれと似たような苦悩を抱えていた。自分が人生で何をすべきなのか、そもそも何がしたいのかわからない…。いまを生きる若者なら誰しもが抱えているものだと思う。

これらは、明治という個人主義の明け方に生まれた種類の苦悩だ。個人が生き方を選択できる時代になった。だからこそ、どうすれば良いのか途方に暮れてしまうのだ。それは、漱石ほどの偉人でも若い頃は同様だった。本文を引用したい。

私はこの世に生れた以上何かしなければならん、といって何をして好いか少しも見当が付かない。私はちょうど霧の中に閉じ込められた孤独の人間のように立ち竦んでしまったのです。そうしてどこからか一筋の日光が射して来ないか知らんという希望よりも、此方から探照燈を用いてたった一条で好いから先まで明らかに見たいという気がしました。ところが不幸にして何方の方角を眺めてもぼんやりしているのです。ぼうっとしているのです。

彼のすごいところは、どうしていいかわからないなら自分で理想の文学を作ってしまおう、という結論に達したことだ。漱石はこれを、自己本位という境地と言っている。自分の好きにやろう!と開きなおったとも言える。

現代に生きる我々も学ぶところが多いと思う。


上半期の読んでよかった本はこんな感じだ。小説を1冊しか選べなかったのは、ちょっとくやしいところ。下半期はもっとたくさん良い本に出会えるよう、散策していきたい。


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