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最近の5冊:つい開きたくなる写真集

家には「読み物」としての本と「眺め物」としての本がある。写真集は代表的な後者だ。その中でも好きな5冊を挙げてみようと思う。

コロナ・ブックス『植田正治の世界』(平凡社)

手頃な価格でアート・ビジュアル系の作品を楽しめるシリーズの1冊。植田正治は1913年生まれ、2000年に亡くなった写真家。1930年代から報道写真でもポートレートでもない「構図を演出した芸術的な写真」を撮影して「植田調」といわれるスタイルを確立した。

名前を知らなくても作品を見ると「あっ」と思う。私もそのレベルの認識から名前を調べて、手元に置いておきたくなってこの本を買った。表紙は1949年発表の「パパとママとコドモたち」という作品で、裏表紙にはもう一人の子どもと着物姿のママが続けて配置されている。このお洒落感!

対談や美術館情報、使用していたカメラの紹介などもあって読み応えあり。

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BMC『いいビルの写真集』(パイインターナショナル)

BMCとは「ビルマニアカフェ」の略称で「1950〜70年代のビルがかっこいい!」という志で集まった活動集団。大正・昭和初期のレトロは注目されているものの、戦後の高度経済成長期の建築は軽視されているのではという思いから活動が始まったらしい。

確かにその頃のビルは意匠を凝らしていて、外観も個性的なものが多い。階段の造り、細かな内装、嵌め込まれたガラスやドア、タイルやリノリウムの床模様なども「当時の最先端技術とデザイン」が盛り込まれていて楽しい。

どこか懐かしさを感じさせる写真がフルカラーで並び、注目ポイントが丁寧に解説されている。姉妹本の『いい階段の写真集』も味わい深い。

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『白鳥真太郎写真集 貌・KAO〈2〉』日本経済新聞出版

広告写真でさまざまな著名人のポートレートを撮っていた白鳥真太郎は、契約期間が過ぎると忘れられてしまうこれらの写真を残したいと考え、1999年に『貌』を出版。いわば〈1〉にあたる写真集でこれは会社員時代に買った。2016年に第2弾が出た。

皺の一つ一つ、髪の毛の一本一本まで精緻に写し込まれたポートレート。モノクロ写真は特にライティングとの効果が相まって迫力がある。その人の表情だけでなく目の奥までつい覗き込みたくなる。

白鳥真太郎の実家は長野県松本市にあった白鳥写真館。おそらく小さい頃や学生時代、会社員時代も何度か前を通っているはずなのだけれど、写真集が出るまでは知らなかった。

笑顔もあれば、カメラを見据える顔もあれば、物憂げに視線を逸らした顔もある。どれもその人らしい。タイトルの通り「貌」の有りようを考えさせられる。

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アリ・セス・コーエン/岡野ひろか訳『Advansed Style』(大和書房)

サブタイトルに「 ニューヨークで見つけた上級者のおしゃれスナップ」とある通り、海外で撮影された写真が並ぶ。特徴的なのは登場するのが60〜100歳代というシニア女性であること。そして皆の色遣いがカラフル!

日本の年配女性だと「もうそんな年ではないから」と遠慮してしまいそうな原色や明るいポップな色もガンガン着て歩いている。背筋をピンと伸ばして撮られることに臆していない。むしろそれまでの年輪や人生を「どう?」と得意げに掲げているような堂々とした姿。

自分はまだ40代だけれど、いつかは彼女たちの年代になる。そのときに「私なんて」と思わない戒めと鼓舞のために、今も手元に残している写真集。

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daikonflex『only after dark Ⅷ』

daikonflexさんは仕事をしながら京都で写真家活動されていて、twitterInstagramから日々の写真を見ることができる。年に何度か京都のライト商會などで個展を開催されているので、近くの方はぜひ見に行ってほしい。

個展に併せて自費出版で写真集を制作されることが多く、販売も現地。私は関東住まいでなかなか京都まで足を運べないので「今回の写真集は郵送でも買えます」というツイートを読んですぐDMから「買います!」と注文して手に入れた。

どうしてそこまでdaikonflexさんの写真に惹かれるか。毎回「ああ、人が写っている」と画像情報以上の実感が迫ってくるからだと思う。撮る人と撮られる人の関係、その場の空気、温度、湿度、その一瞬の前後について、写真一枚を見ただけでワッと押し寄せてくる。

それがスナップのような日常的な写真からいつも立ち上るのが不思議で面白くて、何度も見たくなる。コロナ禍が収まったら京都へ行きたい。

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お気に入りの写真集は、「読むぞ!」という気合いを入れなくても開けばあちら側の世界へ誘ってくれるパワーがある。頭の中がノイズで埋まり始めてきたら文字ではない本が心地よい。


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