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取材前、リラックスのために使っている言葉

笑顔に大ネタは要らない

取材先は大体初めて行く場所で、初めて会う人に話を聞く。社員さんにキャリアを聞くこともあれば、経営者に今後のビジョンを聞くこともある。ブックライティングのためにセンシティブな生い立ちから聞く取材もある。

取材される人にとっては「今日初めて会ったライターに、自分のことを根掘り葉掘り聞かれる」状況になる。ライターから考えると、こんな状況でも取材で来たからには記事にできるだけの材料をもらわなければならない。

使える時間は限られている。なるべく早く本題に入りたい。

でもその前に、これはやっておいたほうがいいと確信しているプロセスがある。それはなるべく早いうちに相手に1回笑ってもらうこと

別に大ウケするネタ話をする必要はない。何か少しでも「フフッ」と笑ってもらったらOK。この1回目の「フフッ」があるのとないのとでは、その後の10分間の空気が全く違う。

ずっと張り詰めた空気のまま質問を始めても、硬くなっている相手からはありきたりな答えしか返ってこない。相手にとっては対外的に失敗してはいけない「仕事」なのだから仕方ない。

でも1回でも「フフッ」があると空気がガラッと変わる。何か分からないけれど固まっていたものがお互いに緩んで、「では今日1時間、よろしくお願いします」と挨拶した後も「はい、どうぞ」とやわらかい答えが返ってくる。

取材のたび、どうにかして早いうちにこの「フフッ」を出せないか苦心してきた。たぶん意識していない取材はない。

そういえばどんな言葉がけをしているだろう、とちょっと思い出してみた。

取材前に使っているこんな言葉

①「こういった取材は初めてですか?」

採用ページの社員紹介や導入事例などで取材する場合は、多くの人が「そうなんですよ、今回が初めてで」という話になる。その気持ちは想像できるので「結構緊張しますよねえ」「準備も大変でした?」と相手の状況について聞いてみる。仕事から少し離れた感覚になって、リラックスしてくれる(笑顔を見せてくれる)人が多い。

②「この辺ってお昼はどこで食べるんですか?」

雑居ビルが多くて周りにお店が少ないとか、超高層ビルの上階でどうやって降りるんだろうとか、ランチ事情について本当に謎なオフィスがある。せっかくなので取材前に「ちょっと気になったんですけど」と聞いてみる。お弁当派かもしれないし、想定外の裏技もあるかもしれない。「なるほど」とお聞きしているうちにリラックスしてくれる(笑顔を見せてくれる)人が多い。

③「資料のここにびっくりしました」

取材によっては事前に質問案をお送りして、箇条書きなどで簡単な回答をもらってから話を聞くことがある。他の人と比べて特徴的なポイントがあったら「事前のご回答ありがとうございました、いただいた資料のこの点がとても珍しいと思って」「今日もそこを伺えればと思います」とお伝えする。自分の回答で大丈夫なのか心配される人も多いので、安心したときにリラックスしてくれる(笑顔を見せてくれる)人が多い。

質問回答ではなく、サイトなど事前にこちらから調べたことで気になっている点があるときも、積極的に相手に伝えるようにしている。

④「写真もきれいに写りますから」

カメラマンさんと同席しているとき、特に何度か組んでいて様子が分かるカメラマンさんのときは「取材中もちょっと撮ります」「でもめちゃくちゃ雰囲気良く撮ってくださるんで安心してください」と言い切ってしまう(本当だし)。

「シワが」とか「肌が」という話になっても「たぶんきれいに飛ばしてくださると思うんで!」「今までの写真もそうなので大丈夫です!」と伝えるとリラックスしてくれる(笑顔を見せてくれる)人が多い。

せっかくなので楽しんでほしい

ご縁があってお話を聞く機会をいただいたのだし、まだ知られていないエピソードを掘り起こすチャンスでもある。せっかくなので相手の方にも「面白かったな」「気分良く話せたな」と思ってほしい。

個人的にダメだと思うのが「巧く話を引き出してやろう」とか「聞いてあげる」と狙う気持ちの根っこ。わざわざ相手の時間を割いていただいてその人にしかない体験を話してもらうのだから、もうちょっと謙虚でいたい。

なるべくならお互いに良い時間にしたい、そのためにはなるべく早く1回笑ってもらう。これは今後もずっと意識し続けることだと思う。

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