見出し画像

歳時記を旅する50〔薔薇〕前*ことごとく刺す意あらはに薔薇の棘

土生 重次
(昭和五十三年作、『歴巡』)

    童話『星の王子さま』(サン=テグジュペリ 一九四三)の王子がいたという星は、家ほどの大きさで、そこには一輪のバラの花があったという。
王子はバラの花を美しいと思い、大切に世話していた。バラは、王子に食事の水やりや、風をしのぐ衝立、寒さを防ぐガラスの覆いを求めたりしていた。
    しかし、ある日王子はバラの花とけんかしたことをきっかけに、自分の星を出て行くことを決心する。
バラは無邪気に四つのトゲを見せながら、「さあ、いつまでもぐずぐずしないで。いらいらするから。行くって決めたのなら、もう行って」(河野万里子訳 新潮文庫)と言う。
 バラの棘は動物から身を守るためのもの。句の薔薇の棘も、意地悪なのではなく、弱い花だからこそ。 

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和六年五月号「風の軌跡ー重次俳句の系譜ー」)




 






   


この記事が参加している募集

読書感想文

海外文学のススメ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?