小石と星粒の恋物語


#忘れられない恋物語

#宇宙SF


道の小石が夜の星粒に恋をしました。

小石は言いました。

「星粒さん。貴女はキラキラとして美しいですね」

星粒は言いました。

「小石さん。貴方はコロコロとして優しいですね」

小石と星粒は遠く遠く恋の想いをもちました。

次の夜も次の夜も二粒は見つめ合い語り合いました。曇りの夜は少し雲の切れ間はないかと探しました。雨の夜にももしかしたら少し雲の切れ間はないかと探しました。そして、晴れた夜はとても喜んで見つめ合い語り合いました。いつか一緒に星空を散歩したいね。散歩道の散策も楽しいよ。と、二粒の恋の夢はふくらむのでした。


ある日、小石はくつにけっとばされました。コロコロと、下水管に落っこちてしまいました。小石は暗闇で泣きました。星粒も星空で泣きました。泣いても泣いても、会うことはできませんでした。それ以来。会うことは叶わなくなりました。それは永遠の別れなのでした。二粒は毎晩毎晩、泣きました。毎晩毎晩、泣きました。ずっとずっと泣いていました。


ところで、それをみていた神様が。二人のことを気にとめてくださいました。そして、二粒に、特別に、秘密のお話をしてくれました。

『選べる道は、二つある。

一つ目は、永遠に忘れてしまうこと。

二つ目は、永遠に忘れないこと。

さあ、どちらを選ぶ?』


小石は答えました。

星粒も答えました。


『そうか』

神様は頷きました。そして、二粒はやはり永遠に会えませんでした。

時々、切なく遠く遠くを見つめます。遠く遠くを見つめても恋しい粒に会えることはありません。ただ、そうするとなぜか心が少しだけあたたかくなるのでした。ですから今も二粒は遠く遠くを見つめているそうです。

もし、どこかの美しい星粒があたたかいなと思ったら。もし、どこかの優しい小石があたたかいなと思ったら。思いを馳せてみてください。それは二粒にとって、忘れられない永遠の恋物語なのですから。

そっと、話を聞いてあげて。そっと、眠らせてあげてください。それはそっと、夢の中なら、神様の目にも隠れることが出来るかもしれませんから。

永遠の別れの中に、夢の中で二粒は再会出来るという夢を、封じ込めておきましたから。

ですから。起こさないでください。優しい小石を。ですから。起こさないでください。美しい星粒を。

ただそおっと遠くから、ながめていてくれたらいいですから。そうそう、そうです。そうっと。二粒を思ってくれて、ありがとう。

おやすみなさい。良い夢を。







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