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広告やマーケティングの力で和菓子の「おいしい」を伝える。佐賀で創業70年を超える老舗和菓子屋3代目の挑戦。

ソウルドアウトの特徴として、社員の中に将来実家を継ぐ仲間が多くいることがあげられます。そんな仲間を応援したいと、先日「地方事業家採用」をリリースしました。

”将来的に地元の家業を継ぐ、または事業を立ち上げることを志す方を有期雇用で採用し、最長5年で地方拠点の市場シェア拡大や拠点立上げを目指してもらう制度です。

地方・中小企業の後継者に、DXの波が。ソウルドアウト「地方事業家採用」スタート

先日はソウルドアウトで働いたあと、福岡にある本格焼酎の蔵元の5代目となった多田くんにインタビューをし、

第二弾の今回は、ソウルドアウトで5年働き、家業の和菓子屋に入った市丸くんに、ソウルドアウトで働いた経験は活きるのか?この制度をどう思うか?など話を聞いてきました!

話を聞いた人
市丸 翔大(いちまる しょうた)さん(@Maruichi23
有限会社菓心まるいち
2015年4月新卒入社、2020年3月退職

有限会社菓心まるいち
住所:佐賀市鍋島町鍋島1224-7
創業:1950年
自社製造の餡子を使った和菓子の製造販売
ウェブサイト:https://www.kashinmaruichi.co.jp/
ECサイト:https://kashin-maruichi.stores.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/kashin.maruichi/
Instagram:https://www.instagram.com/kashin_maruichi/

画像引用元:有限会社菓心まるいち | Facebook

祖父が創業した老舗和菓子屋。原点は佐賀のもち米を使ったお餅

─── 「菓心まるいち」について教えてください!
 
市丸さん:自社製造のあんこを使った和菓子の製造販売をしている和菓子屋で、今年で創業73年目です。祖父が創業し、父が2代目。3代目は、和菓子職人の兄と私が会社を継ぎ、第三創業期を引っ張っていく、そんな想いでやっています。
 
現在、佐賀市内で3店舗を営業しており、卸売はほとんどしていません。自分たちで作ったものを、自分たちで売っています。まるいちで働いているのは、工場の職人が5人、店舗の販売員が7~8人、役員や社長を含めて17人ほどです。
 
─── おじいさんが創業した和菓子屋さんなんだ。創業からこだわってきたことや、おじいさんの代から受け継いできたことはある?
 
市丸さんまるいちは最初、お餅屋さんとして創業しました。佐賀は、北海道、新潟と並んでもち米の産地として有名です。地元のもち米を使って、お祝い用の紅白のお餅などを一つひとつ丁寧に作っていたそうです。
 
地域の皆さんに育てていただいた私たちまるいちは、素材の味を生かす技術を、70年間300種類以上のお菓子を作ることで磨いてきました。まるいちの原点は、佐賀のもち米を使ったお餅なのです。
 
そのもち米のおいしさを引き出す、餡作りにもこだわっています。 豆本来の、上質な香りとほどよい甘み、滑らかな舌触りを追い求め、昔ながらの手仕事と新たな技術を上手く使いながら、日々改善を続けています。
 
─── 今朝届いた「さがどら」、おいしくて3つペロッと食べちゃったよ(笑)。
 
市丸さん:ありがとうございます!さがどら」は、まるいちの一番人気の商品です。素材選びと製法にかなりこだわっていて、全国菓子大博覧会というお菓子のオリンピックともいわれる展覧会で金賞を受賞したこともあります。モチモチでしっとり食感のある生地は、佐賀県産の厳選されたもち米から生み出されています。


─── では、市丸くんはまるいちで今どんなことをしているの?
 
市丸さん:私は営業として、和菓子のおいしさや楽しさを伝える活動をしています。和菓子そのものがもつ物語、和菓子をどういうときにどんなふうに楽しんでほしいかなど、想いを伝えています。
 
─── 和菓子の魅力を伝えていくために、具体的にどんなことに取り組んでいるの?
 
市丸さん:伝えるための前段として、まず、和菓子についての勉強をしています。歴史や文化の勉強はもちろん、店番をして長年働いてくださっている従業員の方から教わることもありますね。そして、学んだ和菓子の魅力を最大限に伝えるため、写真撮影の仕方をプロのカメラマンの方に教えていただきました。
 
伝える手段はいろいろあって、私はその整備をしています。例えば、まるいちの世界観が伝わるように、パンフレットのテキストを一から直したり、ウェブサイトのリニューアルを行なったりしてきました。
 
─── なるほど、伝える手段の整備をしているんですね。手段として、デジタル化も進めているの?
 
市丸さん:そうですね。自社ECサイトを立ち上げて運営したり、SNSアカウントの開設をして日々発信したりしています。もともと、オフラインのイベントや、百貨店の催事に参加することはあったものの、その効果は一時的なものだと感じていました。デジタルで情報発信をしてコンテンツを蓄積し、まるいちのことをいつでも伝えられる状態にしています。

職人である兄と役割分担して「売る側」を学ぶことに

─── 市丸くんは、ソウルドアウトに入社する前から家業を継ぐことは決めていたの?
 
市丸さん:幼い頃からずっと、いつかはまるいちを継ぐんだろうな、とぼんやり考えていましたね。店頭販売の手伝いをしていたとき、お客様にお菓子を買ってもらい、喜んでもらえることを幸せに感じたり、両親が必死に働く背中をみて憧れを抱いたりしていたのを覚えています。
 
─── 家業を継ぐことを決めていた市丸くんが、新卒でソウルドアウトに入社した理由を教えてください!
 
市丸さん:いつかは家業を継ぐことを予定していたので、その上で、新卒のキャリアとしてどんな一歩目を踏み出せばいいのか考えました。兄は製菓の専門学校に通っていて、作る側の知識を十分につけてくれていたので、売る側の経験や知識があれば役に立つと思い、広告やマーケティングの業界を中心に探していたんです。
 
ソウルドアウトはその中でも、ずば抜けて心に刺さった会社でした。「地方、中小企業を支援する」という理念に共感し、ここしかないと思って入社を決めました。
 
─── お兄さんとの役割分担を考えて、市丸くんは広告やマーケティングを学ぼうと思ったんだ。ソウルドアウトに入社して、どんなことを経験したの?
 
市丸さん:最初の配属から退職するまで、ずっと営業をしていました。営業職は、幅広く物事を考えて決めていく仕事だと思っていたので、ほかの職種への異動希望は特に出さずに、営業としてのキャリアを積んでいきました。
 
─── 5年間の営業職での仕事を振り返って、配属当初はどんな感じだった?うまくいかない時期もあったと思うけど。
 
市丸さん:自分の無力さをひしひしと感じていましたね。お客様が本当に必要としていることを理解したり、論理的な提案をしたりすることがなかなかできなくて。お客様に伴走し、成長を支援したいのに、全く力になれていない感覚がありました。
 
社内でもかなりの問題児だったと思います(笑)。ですが、上司の方や先輩に恵まれ、皆さん時間をかけて、愛情をもって、私に向き合ってくださいました。
 
─── 今でも覚えている印象的なエピソードはある?
 
市丸さん:ある上司の方に毎朝30分、私との対話の時間を設けていただいていました。そこでは、「なぜこうなると思う?」「どうやったらできると思う?」を繰り返して、二人で一緒に考えるんです。私が理解できるようになるまで、投げ出さず、しっかりお話をしていただきました。バリュー「8 SOULs(エイト ソウルズ)」の中にある「できる理由をさがす。」を身をもって教えていただきましたね。
 
まるいちは、地方の中小企業です。ないものの方が多い。なので、このとき教えていただいたマインドは、家業の仕事をする中でもかなり活きています。ない中でも「あるもの」を見つけてどう活かすのか。考えるクセがつきました。

─── まさにベンチャーマインドだね(笑)。ソウルドアウトの文化から学んだことは大きいのかな?
 
市丸さん:そうですね。会社に根づく「学ぶ文化」は、自分の根っこの部分にも浸透していると思います。寝ているとき以外は、何かしらのコンテンツを吸収していますね。脳みその体力がついたような感じです(笑)。運転中にラジオを聞いたり、街中にいても街や人を観察したりする意識をもっています。
 
そして、取得した情報を鵜呑みにせず、どう解釈するのか。そういった姿勢も身につきました。
 
─── 勉強熱心な社員が多いのは、ソウルドアウトの特徴かもしれないね。ほかにはどんなことを学んだの?
 
市丸さん:3年ほど一緒に仕事をしてきた上司の方からは、仕事の進め方を教えていただきました。営業では、自分で何かをつくり出すよりも、いろんな人の協力を得てそれをまとめあげていく仕事が多いんです。だからこそ周りの人への配慮や感謝を忘れない、という大切なことを教えていただきました。
 
まるいちで佐賀県内のイベントに参加することが何度かあり、その際は、自分たちだけではなく、外部の方とプロジェクトを進めました。皆が気持ちよく仕事ができるようにするにはどうすればいいのか、意識できていると思います。
 
─── 一緒に仕事をしてきた仲間から、仕事のマインドや姿勢を学んだんだね。最初は無力さを感じていたと話していたけど、その無力感は徐々になくなっていったのかな?
 
市丸さん:入社4年目頃からは、だんだんなくなっていったと思います。自分の仕事に自信がもてるようになっていきました。
 
あるお客様で、デジタル広告以外の領域まで携わらせていただけるようになったことがきっかけです。販促を目的としたデジタル広告の領域を超えて、マス広告やブランディングの部分まで、コピーライターやクリエイティブディレクター、プランナーといった、社外のパートナーの方々と一緒に取り組んでいたんです。
 
経験や知識の幅が広がり、視野が広がったと思います。営業をするときのお客様との会話の質が変わっていきましたね。

2015年度新卒入社式

家業でやりたいことの妄想が膨らみ、退職を決意。事業主の難しさを痛感

─── だんだんと仕事の楽しさがわかってきていたんだね。そんな中で辞めると決めたのはどうして?
 
市丸さん:根拠のない自信が湧いてきたんです(笑)。営業の仕事がだんだんと軌道に乗り始めて余裕ができ、家業のことを考えるようになっていきました。「まるいちに帰ったら、こんなことができるのではないか」と考えているうちに、早くやりたいと思うようになっていったんです。
 
─── 妄想を膨らませていたんだ(笑)。どんな妄想をしていたの?
 
市丸さん:例えば、当時スマホ対応されていなかったウェブサイトをリニューアルさせようとか、電話とFAXの注文しか受け付けていなかったので、デジタル化させようとか。そういった基本の「キ」の部分です。
 
─── やりたい気持ちが高まっていったんだ。家業に入った当初、ソウルドアウトとは働き方も仕事内容も全く違うと思うけどどうだった?
 
市丸さん:ソウルドアウトへの入社時と同じで、無力さを感じていました。戻って何かをしなければならない、という焦りも感じていましたね。
 
自社ECサイトの立ち上げ時には壁にぶち当たっていました。食品のEC化率は2~3%*でまだまだ低く、賞味期限や在庫の話もあってウェブで売っていくのは難しいな、と。ある程度解決できてきましたが、これは今でも思っています。
 
また、ソウルドアウト時代、お客様から預かっていたお金の重さを実感できました。自社ECサイトの集客方法を考えたとき、毎月10万円でも広告費を捻出してデジタル広告を出すことはかなり難しいことだと痛感しました。
 
*参照:経済産業省 電子商取引に関する市場調査
https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003.html

─── なるほど。事業主の難しさを感じているんだ。
 
市丸さん:広告を使わない集客方法の難しさを痛感しています。お菓子のおいしさ、魅力をどう伝えていくのか。70年ずっとやってきた実店舗があるので、地元のお客様には、目にとめてもらって伝えていく手段があります。ですがリアルでは出会わない方に、デジタルで伝えていくためには何が最適なのか、試行錯誤を繰り返しています。

母の日の上生菓子

事業家採用では、同志との繋がりができることに期待

─── ソウルドアウトでは、市丸くんのような地方企業の事業後継者を応援したいと思っていて、先日「地方事業家採用」という採用方法をリリースしました。ぶっちゃけ、どう思った?
 
市丸さん:とてもいいな、と思いました!私が在籍していたときも、同じように家業を継ぐ予定の仲間が何人かいましたが、さらに同志が増えるのはとても嬉しいです。
 
同じような考えや悩みをもった仲間との繋がりができると思います。キャンプファイヤーのようなイメージで、火種の真ん中がソウルドアウト、私たちは炭火。どんどん広がって、盛り上がっていく。とてもいい制度だと思います!
 
─── ありがとう!市丸くんみたいに、継ぐことが決まっている人にとっては良さを感じてもらえそうだね。
 
市丸さん:そうですね。私の就職活動中にこの制度があったら、応募していたと思いますよ!5年という期間もちょうどいいと思います。私も5年働いたので。期限が決まっていると、キャリアプランを立てやすいですし、行動しやすいですね。
 
─── 家業を継ぐかどうか、迷っている人にもぜひこの制度を使ってほしいと思っています。5年という期限の中で、家業を継ぐ道を選んでもいいし、正社員になる道を選んでもいい。
 
市丸さん:そうですね。私の場合は、ソウルドアウトで働いたあとに家業を継ぐことを、家族とも話し合って了承をもらっていました。ですが、実際に迷っている方には、ぜひこの制度を、家族との合意形成を図るときに活用できるような気がします。

「おいしい」の先にあるものを伝えていきたい

─── では最後に、まるいちが目指す世界を教えてください!市丸くんはその中でどんなことに挑戦したいですか?
 
市丸さん:まるいちは、おいしいお菓子を通して社会に貢献することをビジョンとして掲げています。昨今は飽食の時代といわれていて、品質を追求する技術はどんどん向上し、ある程度おいしいものは、誰でも作れるようになってきました。なので、まるいちとしては、おいしいお菓子であることは前提にありつつも、おいしいの先にあるものを伝えていきたいと思っています。
 
─── 「おいしい」のその先……、とてもわくわくしますね。家業を継いで始めたECの目標はありますか?
 
市丸さん:まずは、EC化率を10%以上にすること。まだ始めて半年ですが、月間売上高のEC化率5%前後を安定的にあげることができるようになってきました。まずはここの底上げをしていきます!
 
─── 今日はお話を聞かせてくれて、ありがとう!これからの市丸くんを全力で応援しています!

 

【インタビュー後記】
ソウルドアウトに新卒で入社して、業務を重ねていくにつれてデジタルマーケティングを覚え、経験とノウハウが市丸くん個人にも蓄積されていく。そして業務を通じてアイデアが湧いてきて、実家の家業に対して施策を思いつく。とても理想的な流れだと思います。市丸くんと同じ立場で実家に戻って家業を継ぐ人たちも増えてきているので、そんなコミュニティが構築できると嬉しいですねー


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