マガジンのカバー画像

詩作

39
現代詩を書いています🖋
運営しているクリエイター

#詩

詩07 まぶしい

詩07 まぶしい

まぶしい
世界がまぶしい
幼子の喃語がまぶしい
公園の嬌声がまぶしい
走り去る後ろ姿の
ほっぺたの稜線がまぶしい
まぶしい
帰りたくないと
泣きじゃくる声がまぶしい
まぶしい
世界はまぶしい

どうかすべてが
すこやかでありますように

詩06 くしゃくしゃ

詩06 くしゃくしゃ

晴れた日に
掛け違えたボタンを

ひとつふたつ
掛け直して君は行く

雨の日に
外れかけたボタンを

ひとつふたつ
数え直すぼくがいる

ぼくはまだ
くしゃくしゃのパジャマ
ぼくはまだ
見送ったまま
ぼくはまだ
毛布をたぐる
ぼくはまだ
くしゃくしゃのままだよ

詩05 つなわたり

詩05 つなわたり

境界線に乗っかって
どこに行けるか歩いて見ていた
右の方に落っこって
その先はまたくらやみのなか

ぐーるぐーるぐーるぐーる
ぐーるぐーるぐーるぐーる

境界線に乗っかって
どこに行けるか歩いて見ていた
左の方に落っこって
その先はまたくらやみのなか

ぐーるぐーるぐーるぐーる
ぐーるぐーるぐーるぐーる

見えるのは青空 だけ
見遣るのは もう飽きた
見えるのは青空だけ
見遣るのは もう飽きた

もっとみる
おまじないのうた(復職日記28)

おまじないのうた(復職日記28)

昨日は、こんなかまってほしい子みたいな記事を書いてしまった。

でも、読んでくださるみなさんがやさしくて、あたたかい言葉をたくさん頂いて、わたしのなかの小さなわたしは、ちゃんと、泣き止みました。

みなさん、本当にありがとうございました。

※※※

一度「かなしい」の蓋が開くと、とめどなくなってしまうことが度々ある。
ふだんはきっと、ぎゅっと蓋をしめて、その「かなしい」が詰まったビンを、小さなわ

もっとみる
詩04 ほんとうの夏

詩04 ほんとうの夏

水曜日
今年はじめて蝉の声を聞いた
たしかに
蝉の声だった

蝉に混じって
こどもの歓声
ボールの跳ねる音
ひとりで蹴り続けているのかもしれない
誰もいなくとも
弾ける声

蝉の声と混じり合って
夏を知らせる

今年は
まぼろしの夏が
6月の終わりにやってきて
しばらく居座った
今日
水曜日
ここからの夏は
ほんとうになるだろうか

今日
水曜日
蝉の声が聞こえた
たしかに
聞こえた

はじま

もっとみる
詩作03 雨に濡れる

詩作03 雨に濡れる

雨音の中 ねむる
まるで雨に打たれているみたいだ

わざと傘をささずに
歩いたきのうを 思い出す

雫がもみの木に纏わって
クリスマスツリーのようだった

横断歩道をわたる
真っ白い排気ガスが烟る
いまどき珍しい車
わたしはマスクをしているから
大丈夫

観念して傘をさす
両手いっぱいの買い物袋
コンビニはいつでもまぶしい
欲しいものも欲しくないものも
整然として
選択を
いつでも選択を待っている

もっとみる
詩作02 雨が降ります

詩作02 雨が降ります

雨雲が近づいています
その知らせのあとすぐ
雨が降った

雨の降り始め
ちいさく音が鳴り
木々が
揺れていた

ソファにもたれ
窓のむこうに目を遣る
雨はたしかにそこにあり
雨はたしかに降っている

ほんの10分前
わたしは空の下に居た
空の下に居たのに
いま
わたしは濡れることもなく
雨の姿を
見つめている

降り出しの音は
かすかだった
かすかだったそれは
振り出しの音に
似ている

詩作 街の日

詩作 街の日

街の日

東京は
誰もいない道を探すほうが
むずかしい

よつかど よつかど
どこの角にも人がいて
自転車を漕いだり
連れ立って歩いていたり する

誰もいない
誰もいない手触り
誰もいない道を
思い出す

草いきれ
燃す田畑
堆肥 羽虫
空回りする車輪
止められない歌声

全部
思い出す
誰もいない手触り
忘れたくない思い出
忘れられない思い出

誰もがいるこの場所で
誰もいないあの道を
撫でさ

もっとみる