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つぶやき

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31文字におさまらなかった140字程度の短文
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#140字自由詩

有ることを知らなければ無いという感覚は存在しない欲しいと思うことも探すことも手に入れるために近づくために努力することすらも有ることは教えられたものなのか知らぬ間に見聞きしたものなのか生まれ持ったものなのかそんなことは今は問題じゃない手には入らないものとの距離をどうやったら保てるか

さっき小さな嘘を一つついた。嘘をつく前の後ろめたさは嘘をついた後の開放感にいとも容易く吸い込まれて見事に分解されて清々しさに変わってしまった。これはたぶん、あれは嘘なんかではなくて私が私を守るための大事な丸い盾であったのだと。あちらもこちらも傷つかないまぁるいまぁるい柔らかな盾。

桜草は桜を妬まないし金平糖は星を貶めようとはしない似てる似てないそればかり似て非なるものに対する感情はすべて我が身を貶める咲くまでの試練が桜にはあるし星がなぜ輝いて見えるのか伏線や裏読みをしなくちゃならない風が吹いている美しいという感情だけで充分生きていける目に耳に入れるのは自分

あおいくつをはいて

あおいくつをはいて

あおいくつをはいて そとにでよう

うつむいて あるいても

よそみをして あるいても

おひさまは おこったり しないから

ささくれは おひさまに とけるから

ささくれは おひさまが とかしてくれるから

ゆっくりでも のんびりでも

おひさまは しかったり しないから

ささくれをとかしに そとにでよう

解けかけた靴紐をぎゅっとまた結び直せば同じようには歩けるかもしれないけれど踵は擦り切れてないかい靴ずれは起こしていないかい小石が入り込んではいないかい雨水が染み込んではこないかいその靴紐はその靴にあったものなのかい長くはないかい短くはないかい靴そのものを取りかえるという手もあるよ

届かぬ思いを吐き続けるのは何故だろう届けとも願わずに届くものだと信じているかのように切手を貼りさえすれば届けられる葉書にも必ず宛名は必要で世界が閉じていることは深呼吸をし顎を上げ広く見渡さなくては気付けはしないからきっとたぶんそれは自転を継続するための動力として吐き続けているだけ

欲しい言葉を探し歩いて探しあぐねて蛍の灯よりは少し大きい火種になれば充分で暖まりますか暖まれますか素知らぬ顔で踏みしだかれた音さえさせない殻を拾い集めても煙すら上がらぬままで無駄なことだと思いながら立ち止まるのも悲しくて歩き続けるのも寂しくて蛍の灯にも満たない血豆がほつんと両足に

失くしたり奪われたり落としたりしたものなら取り戻すことは可能かもしれないけれど影も形もなかったものを「取り戻す」って言葉に落とし込んで手に入れられたかもしれないっていう仮定の極みを中身が見えないように真綿で包んで誤魔化してるだけ取り戻せるものか新たなものかの判断を今は誤りたくない

本音ってなに。本当の音ってこと?広がらず消えることなくすーっと通る音ってこと?タメ口は生意気だと言われ敬語を使えば他人行儀だと言われ。モノにはすべて表があるからこその裏。表は良くて裏は悪いと決めたのは誰?単音ばかりは寂しい。和音で生きればいいじゃないか。楽し悲しもリズムとともに。

ぽたりと落ちた雫が隣へとまた隣へと無色の水面を伝い緩やかに動き続ける終わりなきかに見える波が岸辺に集うか細き淡い緑の草の群れを揺らしたかにも見え土の中に飲み込まれゆく波は少し湿った柔らかな土に包まれて大きく深呼吸をし緩やかな眠りについて華奢な根と茎を経か細き葉にのぼりまたぽたりと

捥げるのか落とすのか分からないまま距離を取る翼?羽根?羽毛?ハラハラとパラパラとゆっくりと急速にその身から痛みはあるのか哀しみはあるのか喜びはあるのかそんなことを考える堕ちるのならばその先を堕ちゆく様をどうかどうか見せて落下速度は異なるだろうけれど落ちる地は似てるかもしれないから

どれほどの言葉があれば埋まるのだろうか100?200?1000?2000?行き先も持たず彷徨う言葉じゃなく届けと切に願われている言葉尖った矢先を持たずそれでもきちんと飛んでゆくそんな言葉がどれほどあれば肺を大きく膨らませ足を出し両手を交互に振る力が出てくるのだろういったいどれほど

美しそうな言葉を吐く人には気をつけなさいと貴方は言う輝いて見つめられないほどの光は闇を消してしまうから吹き飛ばされてしまうから蕩けた心はもう決して元には戻れないから美しさを決めるのはアナタなのだから美しそうに聴こえる言葉に惑わされないようにしゃんと耳を立てていなさいと貴方は言った

丹念に積み上げられたお城が土台から砕け崩れ飛び散り欠片ひとつも残すことなく霧散し泣き崩れ術もなく立ち尽くし壊れてゆくのを見たいのかもしれない亀裂だらけの飴細工さえ宝石に見えるキミの目踏みしだかれて粉々になる音ですら愛の告白に聞こえるキミが壊れていく様がたぶんこの世で一番美しいはず