マガジンのカバー画像

臀物語

181
タイトルをしりとりで繋げる物語、です。 「しりものがたり」と読みます。 第1,第3,第5日曜日に更新予定です。 詳しくはプロフィールに固定してある「臀ペディア」をお読みください。
運営しているクリエイター

2022年4月の記事一覧

戒め

 すっかり日も落ちてきたある日の夕暮れのこと。授業が終わり、駅に向かおうと歩いていたスーザンに話しかけてきたのはもちろんクリスだった。
「スー、お疲れ様。」
「クリス、お疲れ様。」
「スーはこの後何か用事ある?」
「ううん、特にないわ。どうして?」
「この前CMでね、サンセットで季節限定のパフェが始まるって言ってたの。」
「サンセットって、あの、えーっとなんていうんだっけ、ああいうお店のこと。」

もっとみる

無理難題

「先生、どうしたらいいと思います?」

ほのかは頬杖をつきながら尋ねてきた。

「どうと言われましても……」

「人生経験長いんだし、なんかヒントくらいちょうだいよ。」

彩世もため息を漏らしながらそう言った。

「いやいや、僕も君たちと10歳くらいしか変わらないですからね。」

高校生というまだまだ若くてピチピチな生き物に囲まれていると、時たま自分がとても老けて思えることもあったが、それでも自分

もっとみる

バスドラム

練習と片付けを終えて外に出てみると、すっかり日も落ち、辺りは夕闇に包まれていた。
「さっさと帰ろ。」
誰に言うでもなくそう口にすると、清志はゆっくりと歩き始めた。
「おーい、清志くん。」
すると、後ろから清志のことを呼ぶ声が。
振り返ると、笑顔で手を振りながらこちらに駆け寄る人が一人。それは、清志よりも後に入った、大学生の真壁 玲央(まかべ れお)だった。
「玲央さん、どうしたんですか?」
「清志

もっとみる

銀歯

目を覚ますと、既に太陽は高い位置に差し掛かっていた。
枕元のスマホを見ると、示された時間は昼前。このままでは一日を無駄にしてしまう、そう思い、自らの体を奮い立たせるように声を出しながら体を起こす。
まずはキッチンへ。ここでポットにお湯を入れ、その間にと洗面所に向かい、顔を洗う。
お湯が出るまで時間のかかるこの家では、眠気を覚ます意味も込めて冷水で顔を洗うのが日課となっていた。
キッチンに戻り、お湯

もっとみる