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フランスの「自由」に染まりながら過ごす日々。

 フランス・リヨンで過ごす日々もあとわずか。
先日不安過ぎてこんな記事まで書いたくせに、緊張したのは初日だけで、2日目から「リヨンを観光している外国人」という立場を最大限に利用して、かなり好き勝手にやらせていただいている。

 こちらに来て2日目にはひとりで外に出て買い物をしているし、ひとりで美術館へも行った。ドイツではまだできていない「ひとりカフェ」も、フランスでは昨日無事に達成した。

 この妙な順応性は「 旅行ハイ 」のような、緊張を通り越してなかば自棄のようになった結果だと思っていた。実際、ドイツに来てすぐはそんな感じがあって、全く疲れを感じなかった。ずっと神経が張り詰めていて、あまり眠れないくらいなにかに追い込まれていた。そんな状態で体が保つはずもなく、1ヶ月ほど経った頃に高熱で倒れた。


 けれど今回のリヨン旅行では、ドイツに来たばかりの頃のような追い込まれ方はしていない。少し前のフランス・イギリス旅ほど忙しくもないし、今回はビジネスの場に出ていくこともないので、完全に旅行者として過ごすことができているのも大きいと思う。
 結果、よく歩けば疲れて眠くなるし、なにかの焦燥に駆られることもなく、ぐーたらしたいと素直に思えている。今まで旅行に行くと予定をギッチギチに詰め込みたい人間だったので、正直かなりの心境変化だ。来たことのない場所の割に、肩の力がいい感じに抜けている気がする。


 悠々自適に旅先で過ごせているのは、旅に慣れたところもあると思う。あと前回の旅の経験が色々と強烈過ぎて、ただ観光するくらいなら全然平気になっているという可能性もある。

 でも、それ以上に私に影響を与えているのは、フランスの人や国の雰囲気が大きいような気がする。
 フランスのどこがそんなに影響を与えているのかというと、ここに住む人達はとても「 自由 」なのだ。


 フランスの人は男女関係なく自分のおしゃれを心のままに楽しんでいて、見ている方も楽しいし良い刺激になる。
食事の自由もかなりきくので、外食をしやすい国だとも思う。(外食の種類が多く、食べる量の調整もし易いお店が多い)。

 車が来なければ迷わず赤信号を渡るし、電動キックボードは2,3人乗りしてるし(笑)、美術館の見学に訪れた子どもたちが先生方の「シィー!」の声掛けに1ミリも従わないところとか。(子どもはどの国でも賑やかだけど、黙る気が一切ないのは初めて見た)


 年齢も関係ないし、善悪両面で自由な人たちを見ていると、この国は本当に自由の国なのだろうと思った。
「 自由 」には色々な形があるけれど、フランスの少なくともこの街には「制限がない(少ない)」「 縛られない 」という「 自由 」がある。

自分の好きなようにやることが許されている。


 簡単に言うなら、そんな感じだろうか。
街を少し歩くだけでそのあたりが一目瞭然なので、観光客の私も「自由にやろう」「心のままに過ごそう」と思いやすい。
そういう国や人の雰囲気が、慣れないところですぐに怖気づく私を解放してくれているような気がする。

 もちろん「 自由 」には代償がある。
そして、全くルールがないわけじゃない。ただ、フランスのことを何から何まで知っているわけではない私にとっては、自由なことで生まれる「 ゆるさ 」が過ごしやすくしてくれている。


 だいぶ落ち着いてきたけれど、今リヨンはパリと同じくまだ暴動が続いている。(パリよりは全体的に控えめらしい)

 リヨンに到着してすぐは、夜の電車は運休。午前中に繁華街へ行くと、高級ブランド店などのショーウィンドウが割られて商品が盗まれていたり、道端のゴミが燃やされて黒焦げになっていたり。車の窓ガラスや、バス停の広告看板のガラスも割られているし、パトカーが行き来する音もよく聞こえた。

 数日経った昨日も、街を巡回するパトカーや警察官が多く、少しものものしさを感じた。


 そんな日本ではほぼ見ない光景に、私は少し怖さを覚えていたのだけれど、リヨンに住む人たちは全く気に留めていないところに驚いていた。
通りがかっても全く動じる様子がないし、日本ならとりあえずスマホで写真や動画を撮ってSNSにでも上げそうな光景も、ノールックで素通り。
フランスが個人主義だからというのもあるのかもしれないし、日本人の私より見慣れた光景というのもあるかもしれない。

 いずれにせよ、私は何日もしないうちに私も気にならなくなっていて、私も着実に彼ら側の人間になりつつある。
 なんなら警察官が巡回してくれているおかげで、日中の治安がいいわーと思いはじめているくらいだ。(もともとリヨンは治安がいいらしいけれど)


 私は色々なものに影響を受けやすく、順応性も高い方ではあるのだけれど、こんなに早く馴染めているのは珍しい。
個人的に相性がいいというのもあるけれど、フランスという国やそこに住む人たちが、来る人を受け入れ、魅了する力をそれぞれ持っているような気もする。

 でなければ、フランスにこんなに人が集まらないし、世界中の人から憧れられる場所にもならないと思う。


 きっと旅行で少し滞在するのと、何年も住むのとではまた見え方が違ってくるだろう。どの国にもいいところ、悪いところはあるはずだ。
でもこの圧倒的な包容力のようなものは、一体どこからくるのだろう?


不思議な国だな、フランス。


 きっと私から見えている部分は、フランスという国のほんの一部だ。そしてここに書いているのは、その中のさらに一部しかない。
でも「フランスをもっと知りたい」と思うくらいには、この国に魅了されている自分がいた。

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