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大和ヌレガミ@小説家
2021年11月11日 00:36
ぼくはふと淋しい顔をするときがあるらしい。そんなとき、彼女はとても切なくなるらしい。だまって、ぼくの手をにぎる。すこしうつむくぼく。その手はひんやりとつめたくてそして小さかったけど、あたたかくて大きかった。だからちょっぴり強くにぎりかえした。
2021年11月6日 23:27
君を楽しまそうと、はしゃいでいるオレが好き。君にカッコいいとこ見せようと、好きな事にうちこんでいるオレが好き。君と幸せそうにしているオレが好き。おちこんでいる君の頭をだまって撫でているオレが好き。たまらなく、どうしようもなく、自信をなくして、あきらめているだけど君に一生懸命はげまされてもう一度がんばろうとしているオレが好き。そんなオレはオレのことを好きだけど、そんな
2021年10月24日 04:51
同じアルバイトの人が給料の締めの日にいきなりクビになった。特別、親しかったわけじゃないけど淋しくなるな、とも思わなかったけどこれからは、あの人のモノマネをすることもなくなるんだな、と思った。 #眠れない夜に
2021年10月22日 23:56
また風邪をひいた。今日はデートの日だ。無理していくと、どうなるだろう。やさしいあの子のことだから、今日は休めと言うだろう。「具合悪いからごめん」と電話したら、どうなるだろう。やさしいあの子のことだから、少しガッカリしていてもそれを見せずに心配してくれるだろう。今日はどうしよう?あの子の心配した顔が見たいのでぼくはパジャマを脱ぎ捨てた。 #眠れない夜に
2021年10月19日 00:10
母にあげようと思って花を買った。母の日より五日後のことだった。無雑作に台所のテーブルに置いてみた。いつもありがとう、とか言って花を渡すガラじゃないからしばらくすると母が気づいて「この花はあんたが?」と聞いてきた。テレビゲームをしているぼくは母の顔も見ずに「うん、あげるわ」と無愛想に言う。母は食卓で父や兄に嬉しそうに、その花を見せていた。五百円にしてはいい買い物をした
2021年10月17日 00:25
小さい頃、逆上がりができなかった。居残りで練習させられた。できる人が練習を手伝ってくれた。ぼくが逆上がりできないと帰れないので一生懸命教えてくれた。そして逆上がりができるようになった。みんな拍手をしてくれた。だからつい、喜んだ。いや、喜んだフリをさせられたのかも。着たくない服を無理に着せられて、「カッコいいよ」と言われたときに出るたぶん、そんな笑顔。
2021年10月16日 04:36
休憩所でボーッとしていたら副主任がオレの前にすわって、煙草に火をつけた。この人は無口で苦手なんだ。そんな副主任が話しかけてきた。「いままで一生懸命働いてきて子どもがやっと大きくなってきたと思ったら子どもは全員、家をでていった。わしはなんのために働いてたんか、よくわからん。だから、君は好きなことをやりなさい」なんでそんな話を急に始めたのだろう?真面目で不器用で
2021年10月12日 00:24
#眠れない夜に 子どものころのように河原に寝そべって雲を見ることにした。だけど十五分で退屈して用事があるわけでもないのにどこか違う場所にむかった。もう大人になってしまった。
2021年10月10日 02:36
好きな子が泣き出した。昔の嫌なことをぼくに話して……たいしたことはしてあげれないのでとりあえず頭をなでておいた。泣きやむまで、何度も何度もなでつづけた。その子は、ありがとう、ありがとう、と何度も何度も泣きながら言った。小さい肩が震えていた。今ならキスできるかな?ずるい気がしてできなかった。風が強くなり、好きな子は立ち上がった。「今、すごい顔をしているから
2021年10月9日 04:02
壁のむこうから、ほらハトの鳴き声が聴こえてきたよここはビルの七階ずいぶん高いところに巣をつくるんだねカラスにいじめられ猫にもおどかされこの街じゃあ肩身がせまいクルックーでもぼくらもほらクルックーなんとかやっているだろクルックー? #眠れない夜に