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実家をIT化せよ(1日目) 〜親の移住と、家族の記録#05〜

両親の移住に向けてサポートすると決めた私が最初に取りかかったのは、「実家のIT化」だった。当時実家にあった通信機器はFAX付きの固定電話と、父が会社から支給されていたガラケーくらい。そのガラケーも通話機能しか使っておらず、就寝中や休日にはしっかり電源が切られていた。

デジタル環境の差は、老後の豊かさの差に直結する。得られる情報は多いほうが絶対にいいし、両親との連絡手段が複数あれば私も安心だ。当時、父は66歳、母は63歳。年齢的にもこれが最後のチャンスだろう。移住するしないに関わらず、この機会を逃してはならない。

まずはパソコンの導入だ。私が設定してから実家に届けることを考えると、種類はノート一択。画面サイズは、そこそこ大きいほうが両親には見やすいだろう。高度な作業はしないので最先端ハイスペックは不要。家電量販店を何軒かまわり、最新モデルのひとつ前のモデル、いわゆる“型落ち”でちょうど良さそうなのが見つかったので購入した。

両親がパソコンに触るのは人生初。初期設定などはすべてこちらで行い、すぐに使える状態にして渡すことにする。面倒な部分がチラッとでも見えたらその場でやる気をなくしてしまうだろうし、できないという事実に直面して悲しい想いをすることもさせたくない。
文字やアイコンの大きさ、画面の明るさ、スクロール速度などを、両親が使いやすいように調整する。プロバイダ契約をしてメールアドレスをつくる。役立ちそうなインターネットサイトはあらかじめお気に入りに登録した。電源のオン/オフやメールチェックなどの基本的な操作は、簡単な説明書をつくりデスクトップに置いておき、手渡す用にプリントアウトもしておく。ネット回線を引き込む工事を申し込んで、準備段階はひとまず終了した。

ネット回線工事の前日に、私はパソコンを持って実家に帰った。週末の休みに有給休暇を1日足した3日間で、実家IT化への道筋をなんとか付けたい。効率よく、両親になるべく負担をかけず、なによりも楽しく覚えてもらえるよう、おおまかな計画を立てた。

実家IT化 スケジュール案
 1日目:パソコンにさわってみる、基本的な操作を覚える
 2日目:インターネットを使ってみる
 3日目:メール送受信をやってみる

ちなみに、教える相手は母一人に絞った。父が仕事でいない時にも使ってほしいし、そもそも一台のパソコンで二人同時に教えるのは難しいと考えたからだ。母が使えるようになれば、それを見て父も覚えるだろうし、父に教えることで母の復習にもなるだろう。

1日目のテーマは、とにかくパソコンに触って慣れてもらうこと。まずは電源の入れ方、充電の仕方、マウスの使い方をゆっくりやって見せる。初めて出会うハイテク機器に緊張気味の両親だったが、“かっこいいものがやってきた”という状況にちょっとうれしそうでもあった。

つづいて文字入力の仕方を教える。意外にもローマ字入力がやりやすいという。人差し指だけで打つので時間はかかるが、慣れるまでは仕方ない。声に出しながらゆっくり打ち込んでいくのを見守り、自分の名前が打てたと喜ぶ母をおおいに褒める。まだまだ先は長いのだから、気分よく取り組んでもらわなければ。電源の切り方を教えながら、1日目のレッスンを終了する。疲れていないか心配だったが、意外と大丈夫そうで安心する。

近くで見ていた父に、パソコンの置き場所をつくってもらうように頼んだ。翌朝起きてみると、リビングの棚の一番いい位置にパソコンは鎮座しており、上等そうなブランドのスカーフがかけられていた。黒電話のカバーじゃないんだからと苦笑しつつ、大事にしてもらえそうでなによりと思った。

実家IT化のスケジュール
1日目:パソコンにさわってみる、基本的な操作を覚える←終了
2日目:インターネットを使ってみる
3日目:メール送受信をやってみる

まずはなんとか初日が終了。次回は、2日目の様子を書きます。


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