見出し画像

精神科夜間救急③~「私、患者さんに刺されました。」(前編)~

長く間が空きましたが、精神科夜間救急の3作品目です。「刺される」なんて凄いタイトルですが、そんなに怖い話しではありません。(もちろん、ほのぼのともしてませんが💦)。ちなみに今回は精神科夜間救急の話しではなく、病棟内での緊急事態な感じの話しになりますが、ご了承ください。

それはまだ、私が卒一看護師(卒業して一年目)の頃の民間精神科病院での体験なのですが(約25年程前)、以前記事にもした「遅れてごめんね」のしばらく後の出来事になります。

夜勤にも大分と慣れて来まして、ちょうど油断しやすい時期だったのかもしれません。

その日の夜勤(深夜勤務で0時~朝まで)は、夜勤バイトの看護師と相勤(二人勤務のペア)で、私がその病院の正職員、彼が外部からのバイトに来ている看護師という関係性でした。

一応私が正職員なので、当日のリーダーという立ち位置にはなりますが、相勤の彼の方が看護師としてキャリアは5年程上だったように思います。お互い若手の看護師でした。

そして、準夜勤スタッフからの申し送りを受け終わり、生存確認や就寝状況を見るために病棟を軽くラウンド(見回り)した後の出来事です。

深夜の病棟イメージ

詰所に戻ると直ぐに、「やんのかコラ!」、「上等じゃ、オウ!」と廊下で怒鳴り声が響きました!簡単に言うとケンカが発生したようです💦男性の閉鎖病棟(ちなみに慢性期病棟)では、当時よくある出来事でした。

おそらく先程の巡回時、喫煙所🚬に不眠症で眠れない常連の方が数人おられたので、そこで何かトラブルがあったのだろうと思い、私は相勤者と詰所を飛び出しました!

ところが意外にもケンカの発生場所は、詰所の前だったようで、扉🚪を開けると直ぐの所で、男二人が胸ぐらを掴み合っています💦

相勤者と私は二人を引き離し事情を聞きますが、二人共が話しの内容に全く要領を得ません?ファンタジーな話しの内容です💧

私は長く現場から離れているので、最近ではどのようになっているのかわかりませんが?昔の精神科病院の慢性期病棟などは、長期の隔離やキツイ内服薬の影響(地方の精神科病院の25年程前などは、現在治療の主力的な立ち位置の液体のリスパダール内用薬が、ようやく試しに使われ始めた程度で、ろくな内服薬がなかった💧)、また特にリハビリ的な治療行為も行わなかったことの弊害(時代背景的に)などから、完全に病気の世界(幻覚・妄想)に沈面されている患者さんや、症状は抑えられても、気力なく入院生活を送られている方が多くおられ、こちらが現実の話をしても、しっかりとした回答が返って来ない場面が度々ありました。

今回もそんな場面だったのでしょう。話が通じない上に、一人はさっさと自室に戻られましたが、もう一人の興奮が収まりません💦

精神症状の悪化と言うより、ケンカの興奮が取れない印象で、二人がかりで何とか抑えてはいますが、唾は吐くは、噛み付こうとする(義歯預かり済みなので危険ではない)わ、なかなか大変です💦

怒る高齢者イメージ

ただ、既にご高齢であったこともあり、やや疲れたのか?少し暴れるのが収まった時がありました。

その時に私は、「※ホリゾン(筋肉注射💉)、指示(Drから)ありましたよね?」と私よりキャリアのある相勤者に聞くと、「それあったな」と了解を得ました。

「暫くここお願いできますか?」と言うと、相勤者は軽く頷きました。私はその場を離れて、詰所横の処置室に飛び込みます。もちろんアンプルから薬液を取り出して施注の準備をする訳ですが、平行して当直医にも内線を架けます。

内線を架けながら、カルテを拡げて(この当時は電子カルテなど影もない時代)、ホリゾンの指示が生きているか確認します。もし指示が既に終了されていれば、看護師は施注することは出来ません。再度の指示(医師のカルテ記載)が必要になります。

電話に当直医が出ると、現状を報告しつつ、隔離が可能な部屋(保護室)が空いているか、部屋割りされたホワイトボードから探します。もちろん隔離の指示の有無も注射💉と同じように確認します。

「はい、指示で※セレ・アキはありますが、ケンカからの興奮でして、今はホリゾンかと思います」。

「そうなの?指示はあるの?ならそうしてくれる?隔離は?あ、隔離も指示があるのね?じゃあ後で行くから、よろしく」。

まあ、ニュアンス的に覚えている会話なので、正確ではありませんが、当時の精神科の夜間当直医との会話は概ねこんな感じです💧(今は多分コンプライアンスが厳しいので、こんなことないですよ💦)

また当時のその病棟には、緊急通報システム(火災報知機のような、全館一斉放送的な仕組みの機械)はまだなく、例えあったとしても、当時の民間精神科病院の夜勤中に、十分望むに足る程の男性のマンパワーは集まらなかったと思います。(それ程当時の民間精神科病院は男性看護師から人気が無かった。多くの優秀な男性看護師は、公立の単科精神科病院<公務員>への就職を望み、そちらを選んだ)。

だから、他病棟への男性マンパワーの応援要請は徒労に終わりやすい(呼んでも男はいない、又は動かせない程少ない)ことも知っていました。

結局、期待できる男性マンパワーは当直医だけなのですが、その当直医がまたなかなか来ません💦まあ、ほとんどの当直医は朝方に来て報告を看護師から聞いて、筋肉注射💉を自分の診察後の直接指示のように(主治医指示と同じだが)カルテに書いて帰る。というのが通例でした。

今では考えられませんが、筋肉注射💉だけに限らず、隔離・拘束でさえも、その当時は夜勤の当直医の診察なしの事後処理が当たり前としてまかり通っていました。

もちろん前受けで主治医から指示はカルテに事前記載こそされていますが、そんな人命や人権に関わるレベルのことを軽く看護師が判断して(簡易の指示があるとは言え)扱っていた時代でした。

そして私は、当直医の到着を待つことなく(待ってると朝になるからね)、膿盆に乗せたホリゾンの筋肉注射💉を未だに怒鳴り続ける患者に打つべく、処置室を後にしたのです。

膿盆の上の注射器💉イメージ

後編に続く


※ホリゾン=鎮静作用の強い筋肉注射💉

※セレ・アキ=幻覚妄想に効果的な薬剤とその副作用止めの薬剤、セレネース・アキネトンの略称。同筋肉注射💉

※♥️を押してから、続けて後編もどうぞ☝️