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「遅れてごめんね」

もうすっかり秋になって来ましたね。季節が少しずれてしまいましたが、今回投稿するのは幽霊👻のお話し。

それは、私が初めて看護師として勤めさせていただいた精神科病院での話しなのですが、看護師として勤め始めて3ヶ月程経った頃でしょうか?私もようやく業務に慣れて、夜勤をすることになり、それこそ人生初の看護師としての夜勤デビューの日でした。

その病院は、三交代制と呼ばれるシステムで、日勤と準夜勤(夕方~深夜)、深夜勤(深夜~朝)に分かれて、交代で病棟業務をしていました。

今回は、その深夜勤での体験です💧

深夜勤者は当然のことなのですが、準夜勤者から「申し送り」を受けます。「誰々が熱を出している」や、「誰々が明日の朝に急な検査が入ったから、誤って朝食を渡さないで」など…

そして、その病院では、準夜勤者は看護助手を含めて三人、深夜勤者は看護師だけで二人体制を取っており、申し送りは計五人が病棟詰所に集まることになります。

私は初めての夜勤のせいで、緊張しているのか?詰所に入ったとたんに、なんだか他の四人のスタッフ全員から、ジロジロと見られているように感じました💦

「あの~、何かやらかしましたかね?」と私?

もちろん日勤で働いている時に、自分が何か失敗して、準夜勤者がフォローに入ったのだろう?と考えた為ですが、そうではない様子💧準夜勤者の先輩がおもむろに聞いて来ます💧

「きつたん君、どう?何か聞こえる?」

私は何のことかも分かりません💦「別に…先輩の声しか聞こえませんが?」

その返答に安堵した様子を見せると、四人のスタッフは互いに顔を見合わせてから、準夜勤者が受け持ち部屋の申し送りを始めました。

何の事だかさっぱりわかりませんが?私自身、初めての深夜勤の申し送りで、実際申し送りが始まると、そんなことを気にしていられません💦受け持つ部屋の情報をまとめるのに大変です💦

申し送りは、20分程度だったでしょうか?私がまだ拾いきれなかった情報をカルテから集めていると、他の四人のスタッフは詰所奥に集まり、ひそひそ声で、「さすがに今日はなかったね」、「アレが効いてるんちがう?」など、何やら秘密の申し送りをしています💧

私は自分のことを言われていると感じ、正直不愉快でしたが、グッと自分を押し殺して、聞こえないフリをしていました。

その後、三人の準夜勤者は「お疲れさま」と言い帰って行きましたが、深夜勤の相勤者である先輩は、先ほどの秘密の申し送りを私にはしてくれません💧さすがに気になった私は、耐えかねて質問してしまいました。

「さっきの何か聞こえる?ってどういう意味ですか?聞いておいて意味を説明しないって、ちょっと失礼ですよね?」

横のデスクに座っていた先輩は、一瞬「ん?」と考える素振りを見せると、「あ~ゴメンゴメン、君の事じゃなくてね…」と、ようやく私の心中を察することができた感じでした。

そして続けて、ある事件のことを話してくれたんです。

それは、私が入職する一年程前のことです。今日の私以外のスタッフ四人と年配の女性看護師とで、準夜勤から深夜勤への申し送りをすることがあったそうです。

ところが、申し送り開始時刻の0時を過ぎても、深夜勤務のその年配の女性看護師は詰所に現れず、携帯電話にも出なかったそうです。

仕方なく、その先輩は師長に連絡を取り、準夜勤者の中から一名、深夜勤務を代行させることで、その日は乗りきったそうです。

もちろん、こんな事は病棟では時々あることで、深夜勤者が自分の出勤日を失念して、自宅で熟睡していた!ということは珍しくありません。

ですがその日、その年配の女性看護師は出勤されていたのです💧いや、正確には、自転車で出勤される途中でトラックとぶつかり、お亡くなりになっていたのです💦

その後、3ヶ月程経った頃に、再び四人のスタッフが準夜勤と深夜勤で揃う日があったそうです。

その日はもちろん、前の夜勤での不慮の事故の話しをされたそうですが、定刻の0時には、申し送りが始まったそうです。

そして始まった直後に、その場にいた四人のスタッフは、大きな声でハッキリと聞いたと言うのです。

「遅れてごめんね」と…

その声は確かに、「あの亡くなった年配の女性看護師だった」そうで、一人の看護師はパニックになり、病棟横の階段やエレベーターまで見に行ったそうです。

また、この現象は、その後もこの四人が揃うと起こったらしく、この四人の中の一名と師長とで近くの神社に参られ、御札を病棟の見えないところに貼られたそうです。

そして、御札を貼って以降で初の四人が揃う夜勤が、偶然、私の初看護師夜勤デビューの日だった、と言うことです💧

その四人にとっては、その声がまだ聞こえるかどうか?は、凄く気になる事だったのでしょう。

そして、この四人以外の一人、すなわち年配の女性看護師の立ち位置に当たるスタッフですが…

実はその方達には四人と違って、申し送り直前に、別の声が聞こえたそうです…

それは耳元で微かに、例の年配の女性看護師の声で、「何であなたがここにいるの?」と囁いたそうです💧

例の年配の女性看護師は、その四人が揃うと、或いはあの世から、自分も出勤していたのかも知れません。