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2021年に観て印象深かった映画を振り返る 13 十一月編 その1



 十一月は印象に残った作品が多く三本に絞りきれなかったので、二回の記事に分け感想を述べることにする。どうにか年内までに「十二月編」へ到達できるよう、纏めるペースを少々上げていきたい。



「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」(2021年)


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 ジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は“00エージェント”を退き、ジャマイカで静かに暮らしていた。しかし、CIAの旧友フィリックスが助けを求めてきたことで平穏な生活は突如終わってしまう。誘拐された科学者の救出という任務は、想像を遥かに超えた危険なものとなり、やがて、凶悪な最新技術を備えた謎の黒幕を追うことになる。

公式サイトより引用。一部改変。


 ダニエル・クレイグ氏が主演する007シリーズの最終章。コロナ禍の影響で延期に延期を重ねたため、期待値が膨らんだ状態で鑑賞した。
 ツッコミを入れたい部分も有るものの、本作に関しては“終わり良ければ全て良し”と言いたい。お疲れ様、ジェームズ・ボンド。お疲れ様、MI6の皆。




 “次世代007”を襲名したノーミさんの扱いが少々悪くて気の毒、エンディング後に待ち受けるであろう“パニック待ったなし”の国際情勢...。不満を挙げようとすればいくらでも可能だろう。賛否真っ二つなのも重々承知だ。
 とはいえ、個性豊かなMI6の面々をきっちり立てた“チーム物スパイアクション・総力戦”としての魅力、森のゲリラ戦や敵基地階段の銃撃戦等のスリリングな演出、そして“007における禁じ手”を容赦無く炸裂させた驚愕のラストシーンの魅力は捨てがたい。
 クレイグ版五部作中、脚本家組合のストライキにより製作がゴタついた二作目「慰めの報酬」(2008年)だけ歪な作品となってしまったのは勿体無いが、本作で上手く〆られたので結果オーライということにしよう。




 硬派な「カジノ・ロワイヤル」(2006年)に始まり、最終作までシリアス路線を走り抜いたダニエルボンド。次回作はあえて毛色をガラッと変え、ピアース・ブロスナン版ボンドのような痛快娯楽作品になるのではないか?と勝手に予想している。「ワイルド・スピード」シリーズばりの荒唐無稽さに期待したい。


「悪人伝」(2018年)


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 ある雨の夜、ヤクザの組長チャン・ドンス(マ・ドンソク)が、何者かにナイフで刺され重傷を負う事件が発生する。奇跡的に一命をとりとめた彼は、対立組織の犯行を疑い、手下を使って犯人探しに乗り出す。
 一方、荒くれ者の刑事チョンも事件の捜査を開始。この事件が連続無差別殺人鬼によるものだと確信し、手掛かりを求めてドンスに付きまとう。それぞれ自らの手で犯人を捕らえようとする2人だったが、やがて共闘して犯人を探すことを決意する。

Amazonより引用。一部改変。


 “韓国のシルヴェスター・スタローン”ことマ・ドンソク氏が主演するアウトロー系ノワール映画。何とシルヴェスター・スタローン氏制作によるハリウッドリメイクも決まっているそうで。
 愛嬌とガタイの良さを両立させるマ・ドンソク氏は世間から“マ・ドンソク+ラブリー=マブリー”と称されているそうだが、俺は心の中で彼を勝手に“マ・ドンソク+兄貴=マニキ”と呼んでいる。そのため、本稿でも“マニキ”と呼ばせて頂きたい。




 マニキが人を殴りまくるだけで一定の面白さ・痛快さが保証されている上に、本作はバイオレンス要素・サスペンス要素・アクション要素のバランスが良く飽きさせない作りになっていた。刑事とヤクザ間の共闘があるとはいえ、過剰な馴れ合いをしないのが好ましい。
 また、ジメジメしがちなノワール映画の体を保ちながらも、しっかりカタルシスを得られる着地をするのも良かった。特にクライマックスの法廷シーンにおけるマニキの証言・証拠提出描写はゲーム「逆転裁判」よりも逆転裁判しており面白い。あんな無茶苦茶な証拠の出し方、実際にあるんだろうか…?


 ここまで褒めちぎってしまったが、犯人がいかにも“フィクション的記号”に満ち溢れたサイコパスキャラなのは食傷気味で惜しかった。刑事・ヤクザ達のキャラが皆立っていただけに勿体ない。


「エターナルズ」(2021年)




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 地球に新たな脅威が迫るとき、7000年にわたり人智を超えた力で人類を密かに見守ってきた十人の守護者がついに姿を現す。彼らの名は、エターナルズ。
 地球滅亡まで残された時間はたった7日。タイムリミットが迫る中、彼らは離れ離れになった仲間たちと再び結集し、人類を守ることができるのか?そして、彼らを待ち受ける〈衝撃の事実〉とは…。アベンジャーズに次ぐ、新たなヒーローチームの戦いが始まる!

公式サイトより引用。一部改変。


 MCU最新作の群像劇SFアクション。監督は「ノマドランド」(2021年)でアカデミー監督賞を獲ったクロエ・ジャオ氏。




新規登場ヒーロー達の精神的トラブルを解決しながら仲間集めをしていく構成はMCUの「アベンジャーズ」(2012年)よりもDC映画の「ジャスティスリーグ」(2017年)、特に「スナイダーカット」(2021年)に近しいものを感じた。とあるキャラクターの描写については、「ジャスティスリーグ」等でヘンリー・カヴィル氏が演じたスーパーマンのオマージュを感じ取れる。気のせいだろうか。




“多様性”を積極的に描こうとしていたのは好ましく、約十名の新登場キャラクター達を過不足なく個性豊かに描けている点は見事だったと思われる。
 一方、映画作品としての隙も多く見受けられた。特に回想シーンの雑な挟み方、“仲間集め→戦いを渋る仲間→敵襲来”の流れが繰り返される単調さ、地球存亡を賭けた戦いを描く割に民間人描写が少なすぎる(感染症対策の影響と思われるのでやむを得ないか...?)点は鑑賞のノイズになった。




 余談ながら、本作の黒幕の設定に往年のスクウェアRPG風味(「クロノ・トリガー」「ファイナルファンタジー7」「ゼノギアス」「ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル」等に共通する“地の底に潜む宇宙からの危険な来訪者”的な設定)を感じた。すると、何と脚本家の一人:カズ・フィルポ氏は実際に「FF7」のファンで、脚本執筆時にも日常的に話題に挙げていたという。何の話題かは明言されていないが、黒幕を“JENOVA”になぞらえて話していたのではないか?と俺は想像している。
 また「ゼノブレイド」を彷彿とさせるスケール感の巨人描写も登場したが、もしかしたらこちらの影響も…?


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●「十一月編 その2」に続きます!
なお「エターナルズ」の画像はディズニー公式サイトより、その他の画像はAmazonより引用しました。

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