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初めて好きになった思い出の歌──Mr.Children 「Worlds end」


 今回は過去の記事で“いずれ別稿にて語りたい”と述べたエピソードとなる、初めて好きになった思い出の歌、今もなお“人生のベスト3”に入る歌、そしてMr.Children(以下ミスチル)にハマったきっかけとなる歌──「Worlds end」の話をしたい。



1、「Worlds end」との馴れ初め



 「Worlds end」と出会ったのは中学3年の時。
 友人達からカラオケに誘われるようになった俺は、非常に困惑していた。持ち歌が一つもないどころか、好きなアーティストが誰もいなかったからだ。当時はアニメを観る習慣がなかったので、思い入れのあるアニソンさえ皆無。
 彼らの誘いをのらりくらりと断り続けていたが、いつまでも逃げ続けるわけにはいかない。何かしら流行りの曲を覚えねば…と思い近所のTSUTAYAへ向かった俺は、真っ先に“ま”行の棚を目指した。そう、ミスチルのCDを求めて。



 00年代中期の社会的常識の範疇として、バンドに疎い俺でさえミスチルは知っていた。「未来」「and I love you」「箒星」など、テレビを付けていれば自然と耳に入るCMタイアップ曲が多かったからだろう。当時の印象としては、(タイアップの影響か)耳馴染みする曲が多いバンドだな…と感じていた。カラオケで歌うアーティストとして理想的だと思った理由はそこにある。
 「ジャケットが格好良い※」「聴き覚えのある歌が多く収録されている」といった理由で、とりあえず俺は当時の最新アルバム「I ♥ U」(2005年発売)を真っ先に手に取った。後は具体的に覚えていないが、ベスト盤二枚と「シフクノオト」「It's a wonderful world」あたりを同時に借りた気がする。



 “潰れたトマト”のジャケットをこじ開け、プレーヤーにCDをはめ込み、再生ボタンを押す。
 すると、間髪入れずにリード曲「Worlds end」が始まる。
 イントロが流れ出した瞬間──俺は一瞬でこの歌の、そしてミスチルの虜になった。


2、「Worlds end」とはこんな歌





 冒頭で軽快に鳴り響くドラムとキーボード。疾走感を引き立てる壮大なストリングス。低めの歌い出しで一旦トーンダウンしたかと思いきや、サビで再び情動が炸裂する。“ポップシンガー”と“ロックバンド”の間で評価が分かれがちのミスチル、その“ロックバンド”としての面目躍如とも言える一曲だろう。アルバムの一曲目を飾るに相応しい(後にベスト盤「macro」の一曲目も飾ることになる)、まさしくオープニングテーマのような存在感さえある。ドラマや映画などの主題歌でないことが本当に惜しい。
 また曲調のポジティブさに対し、安易にポジティブさを押し付けない歌詞も印象深い。

「分かってる 期限付きなんだろう 大抵は何でも
永遠が聞いて呆れる」

「何にも縛られちゃいない だけど僕ら繋がっている
どんな世界の果てへも この確かな思いを連れて」

うたまっぷ Mr.Children「Worlds end」より部分的に引用


 繰り返し歌詞に現れる“どんな世界の果てへも”とは、希望的観測に溢れた未来を指すのか。それとも全てのものに訪れる期限、すなわち“命の終わり”なのか。様々な予感を孕んだままアウトロのストリングスが展開し、曲は唐突に終わる。


 ──というのは全て後付けの知識。アラサーの俺が抱いている感想だ。
 中3の頃に初めて体感した「Worlds end」は、そんなまどろっこしい言葉で形容するようなものではなかった。とにかく格好良く、そして鮮烈。曇っていた視界が晴れ渡るような曲のイメージは、俺をミスチルファンへと覚醒させるに十分だった。
 当時の俺はこれ以上のボキャブラリーを持たなかった。衝動的に惚れたものに対して、これ以上の言葉が必要だろうか?


3、「Worlds end」が俺に与えた影響


 その後、俺はどっぷりとミスチルの沼に浸かった。カラオケで歌うようになったのは勿論のこと(俺の地声よりキーが高い歌が多かったため、実際には「World end」を含め10曲程度しか原キーで歌いこなせなかった)、彼らが影響を受けたと思われるアーティスト(Pink Floydなど)を遡って聴くようになったり、冒頭の記事のようにインタビューが掲載された古雑誌のコレクションも始めた。



 また『ROCKIN'ON JAPAN』やap bank fesを経由して、他のバンドにも積極的に触れるようになった。例えば高校時代the pillowsにどハマりしたのも、ミスチル好きから派生した影響である。俺とあらゆる音楽との繋がりの起点は「Worlds end」にあったと言っても過言ではない。
 (映画「ピンポン」をきっかけにSUPERCARにハマる…といったような一部の例外もある。)



 これは動物の習性刷り込みに極めて近い経験なのだろう。仮に初めてレンタルしたCDがThe BeatlesのものであればThe Beatlesに。X JAPANのものであればX JAPANに。小林幸子のものであれば小林幸子に心酔したのかもしれない。出会い方次第では、俺は今のようにミスチルファンにならなかった可能性もある。



 そして、この経験をしてからの十数年間。俺は多くの高い歌唱力・技巧に優れた演奏・胸を打つ美しいメロディーに出会ってきた。悲しいかな、様々な音楽に触れるたびに「ミスチルは世界最高のバンドではない」という事実を感じざるを得なくなってしまう。
 しかしそれと同時に、「Worlds end」を超える衝撃を受けた曲に十数年間出会えていないのも事実である。ミスチルが“自分の中で”最高のバンドである考えも、今だに揺らいでいない。



 音楽に対する初期衝動をミスチルに向けて良かった。初めて借りたCDが「I ♥ U」で良かった。その一曲目が「Worlds end」で良かった。
 十数年間、一日も欠かさず聴き続けている「Worlds end」。曲を聴くたび、俺は常々そう感じている。


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 ※「潰れたトマト」の元ネタはYES「TORMATO」らしい。色あせた原稿用紙にも何か元ネタがあるのだろうか?




 またこちらは完全に個人的な意見だが、「Worlds end」PVの世界観はJamiroquai「Virtual Insanity」のPVが元ネタなのではないか?と感じている。俺の思い過ごし...?

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