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目標を達成する!ドーパミン放出!!これが痛みの抑制に繋がる ~改めて気づく、目標設定の重要性~

皆さんおはようございます🙇‍♂️本日も臨床BATONへお越しいただき、ありがとうございます。
この時期になると子供とプールに行くのですが、今年はお家プールで楽しんでおります。そして、相変わらず毎年のように真っ黒に焼けて患者さんにも「先生真っ黒だね」とよく言われますね。決して腹はまだ黒くなっていない…はず!(笑)と思い込みながら日々過ごしている62日目担当のジュニアことPT吉岡勇貴です。大阪の急性期~回復期(主に整形)の病院で勤務しております。
さて、今回皆さんが普段から必ず患者さんに行っている目標設定についてです。
今更目標設定⁉って思う方もたくさんおられるでしょうし、目標設定はかなり明確にしていますという方もおられると思いますが、今日のブログは新たな視点(痛みと目標設定の深い関係性)になるかと思いますので最後までお付き合いよろしくお願いします。

・はじめに


結論から言いますと目標設定を行い、それを達成するとドーパミンが放出されることで痛みの抑制に繋がります。
普段の臨床の中で目標設定と痛みを結び付けて考える事はなかったのではないでしょうか?私は全くそこに意識を向けて考える事はなかったのは事実です。
なぜ、私自身が痛みに対して脳機能の事を考えたかというと、臨床の中で実際に痛みが無くならない患者さまが多かったからです。それも末梢組織が治癒しているにも関わらず痛みが無くならない…なぜ?と考えた時に脳が関係しているからだと。これに気が付けたのも脳外臨床研究会の山本会長のセミナーの中で麻痺・筋緊張を治すのに現象にアプローチしても回復しない。脳を変化させるとういうことが私の中で大きなヒントになりました。そこから、私自身脳機能についても考えるという視点を持った事で今回の目標設定と痛みについて結びつきがあるのだと気づきを得る事ができました。
だから、逆にそこの二つが関係している事を知った時にはすごくワクワクしました。そして、改めて目標設定や脳機能の大切さを知る事が出来たように思います。だからこそ、目標設定をする時には達成できる可能性のあるものを多く選んでいく事も痛みとの関係では必要だと考えています。
そして、この目標設定から達成に至ったときに活性化する脳の部位は中脳辺縁部(腹側被蓋野や側坐核)という部分です。
しかし、痛みが継続すると活動しにくくなってきます。それに伴い側坐核の萎縮が起こる事でより痛みの抑制が効かなくなります。その為通常では抑制できるはずの痛みにも反応してしまったり、痛みを感じてしまったりなどの現象が起こります。
このような現象を起こさない為に目標設定が大切になってきます。

・痛みを抑制させる為には脳の活動が必須

中脳辺縁系(dopamine system)の活動が必須

中脳辺縁系とは腹側被蓋野(VTA)から、側坐核(NAc)や腹側淡蒼球(VP)、前頭皮質(PFC)、扁桃体などへ軸索を伸ばしているdopamine回路である。人体に痛み刺激が加わるとVTA neuronに高振幅の活動電位の群発射が起こり、主に側坐核でμ-opioidが産生される。このμ-opioid産生に関与しているのがdopamineである。すなわち、痛み刺激が加わると腹側被蓋野から大量にdopamineが放出される。Dopamineの放出により、側坐核でμ-opioidが産生され、痛みが抑制される。引用文献1)

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本来の脳であれば、痛み刺激が加わるとその痛みを抑制するようなシステムが脳の中に組み込まれています。それが先ほど説明した、腹側被蓋野や側坐核(快楽・達成感・報酬によって活動が起こります。)です。しかし、それがストレス・うつ・情動が原因で抑制が出来ない状態になります。ここでの情動とは不安・恐怖・怒りがメインとなります。痛みが続くと不安になったり、イライラしたりしますよね?またはよく原因がわからない痛みだと恐怖すら感じます。これらの情動が強くなると扁桃体の活動が活発となり、腹側被蓋野や側坐核の活動を低下させてしまうのです。それに伴い痛みが抑制できず、長く続く痛みとなり慢性痛へ変化していきます。ストレス・うつ・情動といった部分を変化させることで慢性痛から脱出できるということです。
つまり、『情動』にアプローチが必要ってことです。ここまで考えて、患者さまを笑顔に出来ていますか?長期目標達成の為の短期目標を考えていますか。
そこで次に目標設定あるあるを1例挙げさせて頂きます。


・臨床でありがちな目標設定

臨床の中でも、順調に回復していく人と回復が遅れる人を比較してみた時に大きく違うなと感じたのがこの目標設定を達成しているかどうかにあると感じています(全ての原因がそうであるとは考えておりません)
このような患者さんいませんか?
・私はもう何も望みはないから…、痛いから何もしたくないといったような発言をされる方
・私は元気になって旅行へ行く・登山をやってみたい
私が経験してきた臨床の中ではたくさんおられました。かなり両極端ではありますが、前者の訴えが多い患者には目標を設定していく事に難渋しますね。
目標とは通過点である。その先に到達する場所や事柄があることで目標が設定されて達成していくことで目的にたどり着くことができる。この目的がないといくら目標を立ててもどこへ向かっているのかわからなくなってしまう。
そこでありがちな目標設定として【独歩自立】や【自宅復帰】という抽象的な目標になってしまうのだと感じています。これがダメだとか悪いということではないです。私自身もよくこの目標設定にしていました。だからこそ、もう少し違ったところに視野を向けていくべきである。

目標

上記のように距離が遠すぎる事で目標達成の想像が出来なく、その時点で無理となってしまうことでより達成する事が困難となります。そして、この長期目標の自宅復帰の先にはどんな目的が存在するのかが上記内容だけでは見えてこない。
そうならない為にももう少し患者さまと共有しやすい内容(特に目的)と期間があると想像しやすく、達成感も得られるように感じています。もう一度目標設定を見直してみましょう!
その度に前者の方に対してはなかなか目標設定が立てられずに【短期目標:独歩自立】【長期目標:自宅復帰】に収まってしまっていました。短期目標までと短期目標と長期目標の間が必要でここを考えてはいるものの患者さまと共有出来ていなかったと考えています。なぜ、この間の明確化が必要で、それをなぜ、共有するのか。なぜならば、達成感を得る為です。ただやるだけでは達成感が少なくなります。そして、この達成感を得るから次も達成しようという意欲が湧いてきます。達成した事もないのに達成感は味わえません。

・痛みを抑制する為の目標設定

例1

目標2

最初の目標設定では目的・目標の共有と細かい目標設定が出来ていない。そこが出来ていないだけで痛みを無くしていく上では、すごく勿体ないことをしていると私は考えています。特に痛みが長く続く患者さまは目標を見失っていたり、達成しているのに達成感を得られていない事が多いです。そして段々リハビリをしている意味も分からなくなってしまい⇒自主トレはしない⇒やる気がないと思われる⇒また、不安になるなどの悪循環となる。
また、急性痛においても慢性痛へ移行させない上で適切かつ具体的に達成可能な目標設定、共有を患者さまとしていかなければいけないと考えています。この患者さまの主訴である『1人で買い物に行きたい』がリハビリを行う目的になります。そうなれば、何分歩くのか、どれくらい距離が必要なのかを患者さまと共有し、それを目的地点とする
上記図のように目標設定していく事で患者さまの生活環境に変化が生まれ達成感を得られます。この小さな達成を繰り返す事で、痛みの抑制に関わる部位の活性化を図っておく必要性があります。また、期間に関しても私自身はADLの獲得は患者さまにもよりますが、少し時間を要するようにあえて設定してお伝えしています。そうする事で予定より早いという面で安心感を与えられると臨床では感じています。それ自体も慢性痛への予防になると考えています。


まとめ

今回は痛みと目標設定についてでした。普段何気に行っている目標設定が痛みに大きく関与している事がわかって頂けたでしょうか?逆に目標設定からその目標を共有し達成していくことで達成感や情動部分(快楽)での変化が生まれることで痛みの抑制(dopamineを放出させる事)に繋がるのです。
仮に短期目標が達成出来ないとどうなるのだろと考えられると思います。そういう事も踏まえた上で目標設定の難易度を最初は下げておいて、達成体験をしておくことが大切です。
今回のような部分に意識を向けるだけでもまた、痛みに対する視点や新たな目標設定を考えていくきっかけになるかと思います。本日は以上となります。最後までお付き合い頂きありがとうございました。


引用文献:
1)脳内機序に基づく慢性痛の治療:紺野愼一、日臨麻会誌、Vol.33 703~708,2013

過去のブログは下記にあります。是非一度目を通してみて下さい。

ただの質問は患者さまの痛みに悪影響を与える
https://note.com/nougeblog/n/n8fb5201da77c?magazine_key=m6c88ebb3d5bc

炎症の痛みに対するアイシングは必要?https://note.com/nougeblog/n/n756c275e2365?magazine_key=m6c88ebb3d5bc


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